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86.出会う度に晒されるの?

 朝のフユユさんの甘いやり取りを終えて出社してガールズオンラインにログインっと。わざわざ会社でログインしないといけないのは地味に面倒だけど規則だから仕方ない。


 広場では銀髪制服少女が待機してました。


「ミゥおはよー」


「おはようございます。今日もお仕事の時間ですよ」


「今日も初心者介護?」


 先日のフユユさんのマッドナイトダンジョンツアー企画、かなり好評だったみたいでSNSでも小さな話題となっていました。今後ゲリライベントとして発生させるのも面白いと思って企画案を提出しました。フユユさんには内緒です。


「今回は一緒にデバッグしましょうか」


「やった~」


 というわけで出発。来たのは水の都の序盤エリアのレインボーブリッジ。一本道で鳥系モンスターや空飛ぶマンタが出現するエリア。


 早速デバッグ開始。スライム投げはフユユさんに任せて私は魔法を撃ちましょう。


 バチバチドーン


 相変わらず変化はありません。悲しい。


「そういえば私ってジュラシック攻略したでしょ? でも地図見てもマップ広くなってなかったんだよね。攻略エリアってもうないの?」


「ネタバレになりますよ?」


「その反応はあるって感じか。となるとここからは自力で見つけろって言いたいのね」


 その一言で察するとはもはや手慣れすぎてます。


「実は1つだけ目星があるんだよね」


「そうですか?」


 フユユさんが橋の前を指さします。やはりこの子は勘がいい。


「ここって巨大な魚が橋を破壊するでしょ? 追いかけた先に隠しエリアあるんじゃない?」


 私からは何も言えません。そしてここからはこのゲームの真髄とも言えます。ジュラシックより更に難しくなるでしょう。


「今は攻略ではなく仕事に集中してくださいね?」


「私はミゥのそばから離れないよ?」


 サラッとそういうの言わないでください。不意打ちすぎます……。


 さて、少し進むと橋が大きな深海魚さんが破壊してしまいます。海に巨大な魚影を映して去っていきました。その影をフユユさんはジッと見つめてます。


「ミゥ。確認だけ行かせて! ついでにデバッグしてくるから!」


「5分だけですよ」


「ありがと、ミゥ好き」


 私は上司失格ですね。とはいえこの橋から飛び下りるのは今の彼女に不可能な気もします。かなり高く落下ダメージは免れず普通なら即死。フユユさんはメニュー画面を開いて小さな指輪を取り出しました。


「じゃじゃーん。チェシャ猫さんがくれた指輪をここで発動」


 そういえばワンダーでチェシャ猫さんにテイム連打して受け取っていましたね。落下ダメージを抑える猫の指輪。賢い。


「ミゥ、見て見てー」


 フユユさんは指輪を薬指に……。何も言うまい。


 それで橋から飛び降りて海へと飛び込みました。ギリギリ耐えたようで泳いで行ってます。魚影を追わずに周辺を泳いでいる辺り、デバッグの仕事も忘れてないようで感心感心。


 その間に私も仕事を続けよう。





 フユユさんが戻ってくるのは数分とかかりませんでした。レインボーブリッジの橋の入り口から歩いて来ます。


「ミゥ、あそこヤバいね」


 入口から来たというのはフユユさんが死んだという意味ですね。実際、ここは隠しエリアの中でも超がつくほど高難易度だったと思います。


「あれは色々と対策していかないと詰むと思う。でもマップには情報が表示されてる。ディープシーだって」


 名前の通り深海。海の中の操作の難しさはウォーターエリアで多くの人が経験してます。ここは更に難しい。


「私の目に狂いはなかったね。このゲームも中々歯ごたえあるじゃん」


 そう言ってくれるなら嬉しいです。それで作業を続けていると橋の横をプレイヤーが通ります。連れてるのはネッシーとリオプレウロドンを連れています。強者感溢れるので顔を見ると黒髪ウルフのナツキというプレイヤーでした。


「お前はっ!?」


 ナツキさんが驚いた様子で声をあげています。以前にPVPで顔を合わせて以来でしたが、まだ私を覚えていましたか。


「ナツキじゃん。おひさ」


 フユユさんも呑気に挨拶してます。前は結構重苦しかったですが、この子も気持ちに整理がついたのでしょうか。そうだったら、少しだけ嬉しいです。


「フユユまで! おまえら、まさかディープシーを攻略してるのか!」


 やはりナツキさんもトップ勢ということでここを知ってましたか。連れてるモンスターも海に適応できそうなのばかりですね。


「私達は今は攻略してませんよ」


「今は!? もう攻略済ってこと!?」


 この子は少し落ち着きを覚えた方がいいかもしれない。


「それと、おまえ! おまえのせいで私の攻略配信ズタボロなのどうしてくれるのっ!」


 なぜか指さされます。意味が分かりませんので首を傾げるしかない。


「おまえに負けてからコメントは普通の攻略は退屈って言う人増えて、むしろお前達を見たいって奴ばっかで……。責任取れー!」


 ナツキさんはナツキさんで大変な状況になってたようです。


「それはご愁傷様です」


「おい、ミゥ。私ともう一度勝負しろ! あれから私もこのゲームについて勉強した。今度は負けない!」


 などと睨まれます。困りました。仕事中なんですが。するとフユユさんが鬼の形相でナツキさんを睨んでます。黒いオーラが見えるような、見えないような。何が起こった?


「ナツキ。私の彼女を呼び捨てないでくれる? ミゥの名前を呼んでいいのは私だけ」


 どうやら怒りのポイントはそこでしたか。でもちょっと嬉しいかも……。


「やっ、やっぱりお前らはそういう関係かよっ! くっ、羨ましくなんか……。ちょっ、コメント伸びすぎ! もういいっ、知らん!」


 ナツキさんは捨て台詞を吐いて海へと飛び込んでしまいました。結局なんだったのでしょうか。嵐が去ったのは確かなので仕事を続けます。


 それからフユユさんが私のそばに来て頭を下げてきます。なぜ?


「あっ、ミゥ、ごめん。今のちょっと重かった……?」


 そんな風に言われたら私の脳内思考が停止してしまいます……。

 それに自覚できるなんて成長しましたね……。


「むしろ嬉しかったです。あれくらい全然重くありません。軽いほどです」


「最近のミゥ、寛容になりすぎ……でもありがと……」


 仕事モードだったのにもう頭はこの子のことばかり考えてる。気付いたらそっと抱きしめてました。

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