8.花より団子よりミゥ
休日。
待ちに待った念願のお休み!
なのにどうしてだろうか。なぜ私はガールズオンラインにログインしているのか。
休みにゲームをすることは滅多にない。するとしても自社のゲームは論外。マップや先の展開を知ってるから楽しみが激減する。
そもそも休みは動画見たりしてダラダラ過ごす方が多い。なのに私はゲーム世界にいる。
適当にぶらぶら。うん、いた。
ベンチに座ってぼーっとしてる銀髪制服少女に近付く。
「ミゥ、おはよー」
呑気に挨拶してくれます。隣に座りました。
「今日はスライム投げないの?」
「オフなので」
あんな苦行を休み返上してまでやりたくもない。
「休みか―。遊びにとか行かないの?」
「行ってもよかったんですけど……」
なんかフユユさんを放置したらどうなるか分からなくて心配になったというか。
「私に会いたかった……?」
「端的に答えるとそうなります」
ちょっとー、抱き付かないでー。
「嬉しすぎて涙出そう」
「はぁ」
こんな疲れ切った女のどこがいいのやら。
街を見渡すと普段より人が多くワイワイと賑わっています。フィールドに出かける人もいれば店に入る人もいる。
「なんか私達って年寄りみたいですね……」
休みの朝からベンチ座ってるだけって。
「ミゥが行くならどこでも付いていくよー」
「と言われましても」
攻略行こうにも人が多いし私が戦えば目立ちます。フユユさんは絶対やる気ないでしょうし。
お店で買い物……別に欲しいアイテムなんてないんですよね。運営だから全部持ってるし。
うん、やることないな……。
「フユユさんはゲーム好きなんですか?」
「結構するよ。昔はこういうのもすっごくやり込んだ」
それは意外というか何というか。やる気ないから私と同じで大してゲームしないって思ってました。
「このゲームは退屈ですか?」
「ううん。なんかね、色々と疲れたんだ」
やはり歳か。いやこの子はまだまだ若いだろうけど。
「ずっと一番でいるって大変だよ。トップを走ってる人は尊敬する」
それはどんな分野でもそうでしょうか。
「今は充電中。きっとその内やる気でる」
「フユユさんが本気になってこのゲームを攻略してくれるのを楽しみにしてます」
「その時はミゥも一緒にしてよー。1人はやだー」
肩を揺するなー。
「わたしゃもう歳なんですよ。ボスの攻撃も避けれませんよ」
「ミゥはチートあるから平気でしょー」
そうなんですけどズルして勝っても楽しくないじゃないですか。
※時間だけが過ぎて行く※
「平和だねー」
「ですねー」
もう完全に年寄りです。ベンチから一切動いてません。
ここまで動かないと他の人にはNPCだと思われてそう。
「団子でも食べにいきますか」
「いいねー」
団子屋に到着。
店の前に座る所あったからそこでもぐもぐ。団子はみたらしです。
甘く感じるけど脳にそう刺激を与えてるらしい。最近の技術はすごい。
目の前の街道に桜の木があってずっと花が散ってる。ゲームだから枯れないので永久機関。
風情があって良き。
「この団子を食べるとステータスが一時的にアップします。攻略したくなりましたか?」
「全然」
でしょうね。
「私はミゥとこうしてるだけで幸せ……」
「そうですか」
恋愛シミュでもやってた方がいいんじゃないですか。
「ねぇねぇ。昨日面白い配信見つけたんだけど一緒に見よ」
「どんな?」
「えっとねー」
あの、密着し過ぎでは? ここからでも画面見えますけど。
ちょっと、子供じゃないんだから膝の上まで乗りかかろうとしないでください。
「なんで離れるの?」
「私は目がいいので」
いくらアバターとはいえなんか恥ずかしい。
フユユさんがにやりと笑う。
「ミゥって大胆なのに弱い系?」
だからぐいぐい来ちゃダメ―。ここ団子屋の前―。公共の場ですー。
太ももに頭を乗せてきたぞ。動けない……。
「でー配信だけどー」
この態勢で見るのか。まずは頭をあげて。
「膝枕を許可した覚えはありませんが」
「じゃあ今許可して」
「ダメって言ったら?」
「一生このまま。ログアウトしない」
なんと無慈悲な。
「私がログアウトしたら?」
「すごく悲しい……」
その顔は効くからやめて。
「仕方ありませんね。銀髪に免じて許しましょう」
「ミゥって銀髪好きなの?」
「いいじゃないですか。銀髪」
「でも、そのアバターは銀じゃないよ?」
「目立つと思って地味にしたんです」
私の場合は無理矢理見た目を変更できますけどね。
「じゃあ銀髪ツインは?」
膝の上で遊ぶな。
「かわいい」
「サイドアップ」
「いい……」
「ツーサイド」
「よき……」
銀髪には何しても合う。これは世の常識。
「ミゥが私に甘い理由が分かったよ」
甘いって自覚してたのか。だったらもう少し自重しなさい。