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78/145

78.ゲームでこんなに熱くなるなんて……

 ※ジュラシックワールド・休憩エリア・部落の村※



 湖面エリアを抜けてジュラシックの安置ポイント、部落へとやって来ました。少し原始的な所で藁や木で造られた居住区が並びます。所々にトーテムポールがあるのは、それっぽく狙ってるだけでしょうか。ともあれ恐竜地獄を抜けた人にとってはまさに癒しでしょう。


 フユユさんの後ろにはテイムしたネッシーさんがヒレっぽいのをパタパタさせて頑張って付いてきてます。一応は水上の生物なので地上だと足が遅くなる。津波も水辺じゃないと使えません。見た目はかわいいですけどね。


 フユユさんはネッシーをボックスへと保管して道具屋へと足を運びました。NPCは頭に羽のような髪飾りをつけて、藁のような恰好。いかにもそれっぽいけど、女性しかいないゲームでその格好はどうなのか。


「ついに回復アイテムですか?」


 今までは街に来てもスルーしていましたがこのマップではフユユさんでも手に負えないでしょうか。


「お姉ちゃんが当ててみてよ」


 妹フユユさんがニヤニヤ笑みを見せます。ふむ。


「スバリ。火力アップのバフ系アイテムですね」


 使用すると一時的にダメージがアップするアイテムも存在する。他にも敵に気付かれにくくなったり一部の属性攻撃に耐性アップしたりなどなど。フユユさんは玄人なので回復よりもそういうのを好むでしょう。


「答え合わせ。はい」


 そう言ってフユユさんがかわいい容器にストローが刺さった白色の飲み物を2つ取り出しました。片方を差し出してきます。


「ジュラシック限定、ココナッツジュースだって。お姉ちゃんと一緒に飲むんだー」


 ああもう。そういう所……本当好き……。


 清涼飲料のようなさっぱりした感じで飲みごたえがあります。何よりフユユさんがくれたという事実だけで甘さ100倍です。


 さて部落を後にして、先に行くとそこは先程までのジャングルと打って変わって荒地となっています。長く続く荒野に大きな山が目立ちます。まだここはダンジョンではなかったと思います。


「そういえばプテラノドンはどこにいるんだろう。あっ、いた!」


 フユユさんが空を見上げて指をさします。上空にはプテラノドンが徘徊していて飛び回っています。ただかなり高い所でこちらには気付いていません。おそらく山の方に行かないとダメでしょうね。


「ふっふー。ここからスナイプだ」


 フユユさんがマジックアローを空へと構えます。なるほど、攻撃させて気付かせる作戦ですが。素晴らしいエイム力のおかげで魔法は命中しますが敵は気付いていません。やはり遠すぎる。このままHPを減らしてもスキルの『テイム』は届かないでしょうね。


 フユユさんが項垂れてしまいました。


「いいや。私にはお姉ちゃんがいるもんっ!」


 そうやってすぐに絡みつかないの。だったらお返しに手を絡ませますから。


「うっ。お姉ちゃんの変態、馬鹿!」


 逃げようとしますが無駄です。お姉ちゃんは無敵なんです。

 手を強く握ってあげます。フユユさんの顔は真っ赤。


「はぁ。お姉ちゃんは本当に私がいないとダメなんだね」


 台詞のわりに顔がニヤけてますよ。大丈夫ですか。


 荒地エリアを進むと早速敵が出てきます。大きな二本の角が特徴でサイのような恐竜、トリケラトプスです。図体も少し大きくインパクトも強め。本来であれば草食なので大人しいですが、このゲームだとプレイヤーを見つけると突進してきます。しかも早い。怖い。


 直進攻撃なので回避。


 恐竜なのでやはり惑星魔法に弱い。『シューティングスター』で空からお星さまを落とします。HPが減った。


 フユユさんも続いて魔法を撃って即座にテイム発動。仲間になったようです。


「いいの捕まえたー。お姉ちゃん、一緒に乗ろ?」


「いつまで経っても子供ですね」


 仲良くトリケラトプスの背中に乗りました。隣り合わせは無理だったので前後に並ぶ形に。

 なぜか私が前で、フユユさんが後ろ。そして背中から抱き付いてます。


「お姉ちゃん好きー」


 もうメスガキの記憶を失ったようです。ていうか私が前だと何もできない。いや、待て。振り返ったらいいではないか。よし、これなら抱き合える。私って天才では?


「お姉ちゃん、それだと前見えないよ?」


「私が見たいのはフユユさんだけです」


「うっわー。お姉ちゃんって本当にシスコンだね」


「悪いですか」


「ううん。寧ろ嬉しい」


 だったら問題ありませんね。ハグし合ってたのも束の間、急にトリケラトプスさんが爆走し出します。何事かと振り返ったら、荒地エリアに潜む魔境、ヴェロキラプトルゾーンです。何十と潜む敵の群れへと突っ込んでます。これは不味いー。


 でもフユユさんお構いなしで抱き付いたまま。だったら私も知らないです。


 そのまま敵の群れを突っ切って走っていましたが、背後からモンスターが大量に追ってます。しかも前方は壁。トリケラトプスさん、壁に衝突。


「この程度、問題ないでしょう?」


「足を引っ張らないでね?」


 私達姉妹は無敵! あっ、トリケラトプスさん、敵に突っ込まないで。私まだ降りてません。あれー。


 だったらこのまま隕石を落とす。惑星魔法『メテオ』


 頭上に巨大な隕石出現。ですがそんなの関係ないのかヴェロキラプトルさん大量に飛びかかってきます。トリケラトプスさん、最速リタイア。私も死んじゃうー。


 と思ったらHP回復してます。


「お姉ちゃん。がんばれがんばれ」


 どうやらヒールしてくれたようです。こんなの、シスコンになります。おかげで無事メテオが落下にして大爆発。敵の一掃に成功しました。


「お姉ちゃん、見て。あそこに洞窟あるよ!」


 私が言う前に先先行かないの。今敵倒したばかりですけどー。


 仕方ないので『ハイランナー』を使って追いかけます。そしたらフユユさんも加速。おーい、逃げるなー。


 洞窟の中には敵がいなくて、奥へと進むと魔法陣がありました。


「ボス部屋一番乗りは渡さないー」


 フユユさんが先に姿を消してしまいます。あれ、ここって確か……。

 まぁいいや。私も続きます。


 その先はやはり洞窟内でしたが、先程と違って白い湯気が立ち込めています。目の前に大きな岩で覆われた温泉地へとやって参りました。地面は石のタイルでややシュールですが、ゲームなのでご愛嬌。何よりここに来ると衣装が強制的に変更されてバスタオル仕様になります。さすがに中に下着は履いてますが。


 隣を見たらバスタオル姿の銀髪少女が立ち呆けて放心してます。顔の前で手を振ってます。


「あのー。大丈夫ですか?」


 別に即死トラップでもないです。寧ろ能力バフの隠しエリアです。


 フユユさんの顔が見る見るうちに赤くなっていきます。のぼせてしまったのでしょうか。別に熱いという感覚はありませんが。ちょっぴり温かいという刺激がある程度です。


「こんなの聞いてない……恥ず……」


 もしかして恰好についての言及? 確かに急で驚くかもしれません。


「前にビキニにもなってたじゃないですか」


「見せる目的と同じにしないでっ!」


 フユユさん遂に顔を両手で隠して蹲ってしまいます。この子にも羞恥心はあったんだ。ちょっと意外な一面を見れて嬉しい。


「ジロジロみたりしませんし、他に誰もいないですからゆっくりしましょう」


 体を見ないように手を引いてあげます。いつもより手が熱いような……。意識してない。何も見てない。何も考えてない。


「ミゥ……顔真っ赤だよ……?」


「ここはちょっと……熱いですね」


 そんなに赤かったの? いやでも温泉だし、当然というか。


 仲良く湯舟に浸かりました。リアルのような気持ちよさはないものの、水の揺れの刺激や、微妙な温かさでそれっぽく再現してくれてます。それにコポコポとお湯が足される音が何とも心地よい。


 妙に気まずい空気になって会話はありません。何か話題を振ろうか……。


「フユユさんはお風呂好きですか?」


 言ってから気付いたけどこれ失言だった。この子引きこもりでゲーム好きだし、お風呂嫌いかも。わーん、私の馬鹿―。


 案の定、フユユさん沈黙して俯いてる。やっちゃった……。別の話題を……。


「ゲームしたいからお風呂なんてパパッと済ませてたけど、案外悪くないかも。今度ゆっくり浸かってみようかな」


 なんて優しく言ってくれます。聖人だ……。


「だったらリアルで会ったら一緒に温泉でも行きます?」


「それはちょっと……。ミゥ以外の人に裸見せたくないし……」


 あぁ……その発言は……。私の頭はもうのぼせてしまいそうです……。


「だからお風呂だったらいいよ」


 待ってください。つまりフユユさんと裸で密着して湯舟……。やばい……何を想像してるんだ。私、煩悩の塊かもしれません。


「ミゥ、どうしたの? ずっと顔真っ赤だよ?」


 この反応、この子には一切悪意がないの分かって余計自分が愚かに見える。心頭滅却、心頭滅却……。


「何考えてるかお見通しだけど。これで私の気持分かってくれた?」


 痛いすぎるほどに分かりました……。

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