表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

75/131

75.好きも敵も無限湧きしてる

 白黒の街。名前の通り白と黒の色だけでできた街。立体感はありますが、リアル感はない。グラフィックを敢えて荒くしてポリゴン感のある見栄えになっています。そのせいか街には必要最低限の建物しか用意されておらず、一瞬手抜きではと錯覚してしまいます。そういう演出なのだと思いたい。きっと納期は関係ない。


「フユユさん、アイテムの補充は必要ですか」


 フユユさんが首を振ります。なるほど、そういう手に出ますか。


「ちゃんと口で言わないと伝わりません」


「いらない……好き……」


 最高すぎる……。もうこの世界から出たくない……。


「ではダンジョンへ行きましょうか」


「うん……好き……」


「私も好きですよ……」


 思わず抱きしめちゃう……。もう無理、幸せ……。

 フユユさんが離れません。私もこうしていたい……



 ※10分くらいしてからダンジョンへ※



 モノクロダンジョン。白の霧。一面が霧に覆われて著しく視界が悪いマップ。フユユさんがブックを使って黒の世界へと変えます。すると今度は一面真っ黒の中庭のような場所へと場面が変わります。ただ、霧の影響か視界が悪すぎてほぼ何も見えません。


 フユユさんが白の世界に戻しました。


「霧をどうにかしないとダメな感じかぁ」


「好きは?」


「……しゅき」


 攻略開始。白の霧で出現したのは箒の敵、先端に虹色の絵具が付着したカラフルブルームというモンスター。真っ白な世界に色を塗る変わった敵。フユユさんは魔法で削ってテイムしました。箒さんが仲間に。


 そしてフユユさんが箒に跨ってます。何をしてるのか。


「あの。箒に跨っても飛べませんよ?」


 箒さんもお困りの様子。フユユさんが絶望の表情に変わってしまいます。まぁ気持ちは分かります。


 霧の中をさまよっていると先の方に歩く巨大キノコを発見。ミスト・マイコニド。頭から胞子を飛ばして霧を生み出してます。ともかく火炙りにして処刑。霧が晴れました。


 ただ霧が晴れても白の世界では何も見えません。フユユさんがブックで黒の世界へと移行。

 するとさっきまで暗くて見えにくかった視界も晴れて黒の中庭を本格的に攻略できるようになります。


 森の中のような黒い木々や花壇があって、さらに所々に落下してしまう大穴も用意されてます。霧が晴れていないと闇雲に進んで死んでしまう構成ですね。そして、その穴からは巨大な蟻、ブラックアントが出現。しかも大量に。まさに数の暴力。


 箒さん赤い絵の具で宙に文字を描きます。するとプレイヤーにバフが入りました。赤は攻撃アップ。


「この箒、絶対最強の一角だ」


 バフは偉大ですからね。


「ところで、あれは?」


「ミゥ……好き……」


 あえて私に言ってくれるの、私も好き……。


 そんな感じでブラックアントも楽々撃破……。ですがこいつの厄介なのは無限に湧いてくる所。おまけにキノコが撒いた霧も一定時間が経過すると再び復活してしまいます。

 おかげで視界がまた暗く。


 けれどフユユさんは白へと戻しません。むしろ蟻さんを倒し続けてます。


「ミゥも手伝って。大好きだから」


 経験値稼ぎですか……。大好きなんて言われたら……断れない。



 ※半時間経過※



 ずっとブラックアントを倒してます。いつになったら攻略再開するのでしょうか。正直飽きてきたのですが。


「そろそろ攻略に戻りませんか?」


「ミゥ好き……ミゥ好き……」


 ああ……私はなんて罪深いことをしてしまったのでしょうか。神よ、許し下さい。

 だって好きって言われたら嬉しいんだもん……。


「フユユさん。罰ゲームは終わりです。普通に戻ってください」


「普通だよ。だってずっとミゥが好きだもん」


 それは反則でしょう……。私が退場してしまいます。


 敵が無限湧きするせいで箒さんも倒され退場。これは本当に不味い状況です。視界も悪いしどうすれば……。


 仕方ありません。フユユさんの手を掴んで無理矢理ブックを開きます。白へと戻しました。

 一先ずは安心ですが……。


「もう攻略したくない……ミゥゥ……」


 そんなに抱き付かないで……。本当に私はなんて過ちをしてしまったのでしょうか。


 仕方ないので彼女の手を引っ張って攻略に戻ります。キノコさんを見つけたので焼き払う。

 フユユさんの手を掴んで黒に戻す……。


「ミゥ……大好き……」


 早くこの子をデバッグしないと……。でもしたくない……。


「フユユさん。キスしたら感情が白に戻ってくれますか?」


 フユユさんが小さく頷きます。だったら……。

 抱き寄せ合った瞬間、近くの穴からブラックアントが大量出現。


 怒りがシンクロしたのかフユユさんと仲良く怒涛の魔法連打。しかしこいつらは無限湧き。

 くっ、せっかく良い雰囲気だったのに……!


「もう怒った。最速でクリアする」


 フユユさんのバグが治った!


「ミゥ、すーき」


 ほっぺにフユユさんのあまあまが……。私の感情がバグりそう……。

 お返しに私も……。フユユさん照れ照れですーき。


 ブラックアント出現。本当邪魔。

 瞬殺!


 さて。フユユさんが本気モードになったので敵は成す術なく道を開けます。

 そして黒の中庭の最奥地へとたどり着いて魔法陣発見。


 真っ白な空間へと移動すると白く輝く球体が出現。ダンジョンボスの光と闇に轟く者。



 ※勝利のファンファーレ※



「愛の勝利!」


 ボスを倒してハイタッチ。


「これで残すはジュラシックワールドだけだね」


 この子ならどんなマップも攻略できるでしょう。だからあなたの隣で行く末を見届けます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ