71.ミゥならモンスターも見捨てないと思ったから
クリスタル迷宮・鏡の迷路の最奥に出る。周囲は高くそびえる青白いクリスタルの壁で囲まれ、その一角から巨大な白蛇が姿を現す。赤い瞳がこちらを射抜き、長大な体が尾を円形に広げてプレイヤーを包み込みます。ボス戦ですね。
宝石獣が額のビームで大蛇の注意を引きます。フユユさんは瞬時にマジックアローを撃ち込み、大蛇の視線はそちらに集中。大蛇は大きく口を開き頭上から襲いかかるも、フユユさんは間一髪で回避。顔が地面を抉るほどの勢いで突き刺さる。
「今の即死かなー」
丸吞みはエグそうですねー。大蛇はまだ顔が埋まったまま。隙の多い攻撃なようで。今の内に魔法を使いましょうか。
光中級魔法『ディヴァインレイ』
光のレーザーで大蛇の顔面を直撃。大蛇は顔を上げて再び口を開けます。が、今度は紫色の霧を噴射しています。いかにも毒っぽい攻撃ですね。しかも広範囲。
私とフユユさんはともかく、宝石獣さんと九尾さんは命中しそう。なら、ここは。
天候魔法『恵みの雨』
洞窟内に雨を降らせて味方全体に一定時間のリジェネを付与。しばらくHPが回復するでしょうから毒と相殺できるはず。
それから大蛇は尻尾を振り回したりと暴れていましたが、やはり天才女子生徒の前では成す術もないようです。大蛇のHPはゼロになって、呻きをあげて顔を天高く伸ばしてから地面へと倒れます。その振動が大きく床に亀裂が入ります。そして地割れとなって陥没!
フロアの下は最初のダンジョンの所に繋がっていて大蛇はクリスタルの橋や柱を破壊するように落ちていきます。無論私達も落下中。ともかく足場に乗っていないと。
「ミゥ、この子達お願い……!」
フユユさんが機敏な動きで足場を飛び移って宝石獣さんと九尾さんを投げ渡してきました。
嫌っているように見えて本当は大切。素直じゃないんですから。2匹ともキャッチしてしっかりと両手で支えます。問題は私が落下死しないか、ですけど。
足場は崩れて行くので空中で別の足場に乗り移っていかないとダメです。一歩踏み外したらやはり即死。この辺になってくると難易度もシビアですね。プテラノドンがいたら余裕なんでしょうけど。
どんどん下へ落ちていきます。見えない床も崩れて、クリスタルの柱へと。
そしていよいよ初期位置の場所へと戻ってきます。その頃には大蛇は脱皮をして中からドス黒い色へと変貌し8つの首を持つ大蛇になりました。第二形態、八岐大蛇……!
八岐大蛇の頭が一斉に吠えて第二ラウンドへ突入。
8つの頭からはそれぞれ異なる属性の魔法弾を放ってきます。こいつの弱点は何だったかな……。多分光かな。
光魔法『スターライト』
無数の星が集まって輝きを放つ。思ったより減らない……。
というより、8つの頭がそれぞれ別のHPになってますね。1つずつ潰す感じかな。
「ミゥせんせー。スピードアップのバフ頂戴~」
支援魔法『スピーダー』を使います。
フユユさんは八岐大蛇へ突っ込んで攻撃を避ける。あんな至近距離でも避けるなんてやっぱりすごいです。そして敵の背後へと回り込んで後ろから攻撃してます。すると首のいくつかがフユユさんの方を向きました。なるほど、注意逸らし……!
やはりこの子は有能です。おかげでこちらに向いてる頭の数も減って攻撃も格段に避けやすくなりました。あとは宝石獣さんと九尾さんと一緒に攻撃を続けるだけ。
※八岐大蛇の首が1つ落ちた時点で勝敗は確定した※
最後の首のHPをゼロにすると八岐大蛇さんは悲痛な叫びと共に消滅していきます。
フユユさんと仲良くハイタッチ。今回も無事勝利しました。
「お前らもやるじゃん」
テイムモンスターも無事生還。宝石獣さんと九尾さんは特に感慨なさそうに待機モーションで遊んでいます。
「一番はミゥだけどね。色々ありがと。ほらお前らも礼言うんだ。ミゥがリジェネしてくれなかったら死んでたんだけど?」
フユユさんが説明するも全く聞いてません。宝石獣さんも何となく照れてるのではと思ってしまいます。
「フユユさんもお疲れ様です」
「ミゥ先生のおかげで大勝利なのだ」
「フユユさんの機転の貢献度の方が上ですよ」
「ミゥせんせ……」
「フユユさん……」
やっぱり抱きしめちゃう。この子の可愛さは国宝級だと思います。
そのまま目を閉じ合って唇を重ねました……。