69.ごめん。まだ許せそうにない
午後、ガールズオンラインにログインしてフユユさんと合流。
「次はクリスタル迷宮に行こうかな」
残るは3つなのでどこも高難易度ですがまぁ何とかなるでしょう。
服装はこの男装服でいいかな。
「今回もそれ?」
頷いてみる。ちょっと気に入りました。
するとフユユさんはメイド服を着替えてベージュ色のカーディガンの制服姿になりました。
黒のスカートととても似合っています。さっきまで学校に行ってたのでその気分でしょうか。
「こうやって並ぶと教師と生徒って感じですね」
いけない関係感。いや、実際の年齢を考えたらリアルでもそうなんですけど。
「行こ。せーんせ?」
腕にしがみついてこの子は本当に悪い子です。そしてそれを嫌と言えない自分も。
※モンスターパーク※
遊園地マップに来ました。クリスタル迷宮へ行くにはここから南へ進む必要があります。北のジュラシックへ入る樹海とは反対側にアトラクションのコースターが設置されていて、フユユさんと仲良くそれに乗ります。コースターが動き出し、荒地を抜けて大きな洞窟内へ。最初は真っ暗でしたが、水色の光が次第に周囲を照らす。
無数のクリスタルが林立し、ところどころは倒れて床に転がっています。
壁面も天井も淡い青白い光を反射して、静かに脈打つようにきらめいている。
奥行きは浅いのに、見上げれば際限なく続く青の柱。天井に向かう迷路とでも言うべき風景。
迷宮という名だけど、道に迷う心配はなく、ただひたすら上へ登るだけのエリア。
深呼吸して、攻略開始。
早速モンスター出現。
予想外の敵にフユユさんが小さく目を見開いてます。
「君は……! 元気だったか……!」
クリスタルの床をぴょんぴょんと跳ねるは額に宝石のあるウサギモンスター、宝石獣です。初回のイベントでゲットできた奴ですね。
宝石獣さんはフユユさんに容赦なくビームを放ちます。
「お前……! 私を忘れたの……?!」
忘れるも何も別個体ですし、そもそもゲームなのでそんな感情はありません。
「だったら思い出させてあげる」
フユユさんは宝石獣さんと激闘を繰り広げて見事テイムしたようです。
それによって宝石獣さんも攻撃しなくなってフユユさんの後ろを歩くようになります。
「相棒。もう私の顔を忘れちゃダメだよ」
などと供述してますが逃がしたのはこの子の判断です。
攻略に戻り、フユユさんは斜め三十五度くらいに傾いたクリスタルの柱を器用に登って行くので後ろに続きました。柱の先端までたどり着くと、目の前には向かいの壁に突き刺さった別のクリスタルの柱があり、それがまるで氷の橋のように道をつくっています。
そこを慎重に渡ろうとした瞬間、上方から鋭い光が飛んできました。視線を上げると、別の柱に立っていた宝石獣がこちらに気付いてビームを放ったようです。しかも、橋の上にはクリスタルタートルという名前の通り甲羅がすべて透明な結晶でできた巨大亀が、道をふさぐようにのっそりと鎮座していました。
「テンプレみたいな妨害。問題なし……!」
らしいです。足場も狭いですが宝石獣の攻撃は額の宝石が光るのと呼び動作も分かりやすく直線的なのが案外避けやすい。私も協力しましょう。
突破!
そんな感じでクリスタルの柱を伝って上へと進んでいきます。道中敵の妨害はあれど特に問題はなさそうです。
中腹辺りまで来たでしょうか。地上からはかなり離れて落ちれば即死は免れない。そして柱の先端まで来てまた向かい側へと進む必要があります。ですが、ここからが難題。今までは氷の橋がありましたがそれが見当たりません。
フユユさんは周囲を確認しつつ、それで思案しています。すると目の前にマジックアローを放ちました。魔法の矢は何もない所に刺さって消滅。
「見えない床だ」
お見事。微妙にキラキラ光ってるのでそれが目印でしょうか。フユユさんはそうっと一歩踏み出します。すると空中に立ってるようです。
「落ちたら即死かー。気を付けないと」
ここで死んだら最初からですからね。この辺りのマップは難易度も上がっています。
見た所、見えない床にはクリスタルタートルが鎮座してるだけで他に敵は見当たらない。
するとフユユさんの宝石獣が急にぴょんぴょん跳ねて天井に向かってビーム。
その先には壁に張り付いていた超巨大な蝶々、水の都のダンジョンボスでもあったクリスタルバタフライでした。攻撃されたことでゆったりと羽を広げて飛んできます。さらに宝石獣は天井にもビームを放って別のクリスタルバタフライも攻撃……。本来であれば無害な敵なのですが……。
「おい、クソウサギやめろっ!」
フユユさん素が出たのか口が悪くなってますよ。
怒られた宝石獣は何を血迷ったのか前へ走っていく……。あ、落下した。当然消滅……。
「クソウサギー!!!」
逃がされた報復? これは同一個体だった説が出てきます。偶然だとは思いますが。
問題はクリスタルバタフライが一斉に動き出して攻撃してくるようになったこと。
戦うしかありませんね……。
※頑張って撃破※
「はぁ、はぁ。あのウサギ絶対許さない……」
基本テイムモンスターは敵を見つけたら攻撃するようになってるので致し方ないというか。
「まぁまぁ。何とか突破できたので良しとしましょう」
「ミゥがいてくれてよかった……。私だけだったらこのマップ周回して宝石獣狩りまくってる所だった……」
この様子だとフユユさんが宝石獣を連れることは二度となさそう……。