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67.ゲームの壁は乗り越えられる

 目的地に到着したので機関車から降りました……。

 まだ頭がボーッとする……。

 フユユさんも同じなのか足取りが若干ふらついてます。


 到着したのは機械の街のスラムの街です。寂れた所で建物もボロボロで半壊していて、応急処置のように鉄屑を壁代わりにしている。


 建物と建物を繋ぐ太くて曲がりくねったパイプは、錆びついてところどころに穴が開いている。時折、風に乗って軋む金属音が響き、まるで街全体が古い機械のように息をしているかのよう。


 錆びて止まった巨大な歯車が壁に取り付けられ、折れた歯が無数に散らばっている。近くのゴミ捨て場には鉄屑が山のように積まれ、時折カラカラと小さな金属片が落ちる音が響いた。


 そんなスラムに生息するのはドブネズミ……ではなくロボットのワニ。メカクロコダイルというモンスター。どういうチョイスでこいつになったかは不明。


 無論、フユユさんの敵ではなく撃破。


 そんな感じでスラム街を歩いて行きます。


「ミゥー、ここってダンジョンどこにあるの?」


「教えませんが」


「地図見た感じ、真っすぐ歩いても最初の通りに戻りそうなんだよね」


 フユユさんはマップを確認しながら進んでいます。街そのものがダンジョンというのは結構厄介で方向音痴な人は迷子になるかもしれません。まぁその為の信頼度システムでもありますが。


「……こうなったらポーション飲んで問い詰めるしか……」


「やめてください……。これ以上されたら死んでしまいます……」


 真実を吐く前に脳が蕩ける。完全犯罪が成立してしまう……。


「じゃあ教えて……♪」


 手を後ろで組んで上目遣いしないの……!

 いやでもかわいい……。かわいいな……。

 教えたくなっちゃう……。


「フユユさんは本当にかわいいな……」


「あぅ……急に素はやめて……」


 だってかわいいんだもん……。


 とまぁ惚気てる間に街へと戻って来てしまいます。

 フユユさんも困った顔をしてます。


「やっぱり信頼度上げないとダメな感じ?」


「どうでしょうか」


「うーん。そうだ。いい事思い付いた」


 そう言って彼女は小走りになって周囲をキョロキョロします。


「あ。いたいた」


 視線の先にはプレイヤー。まさか……。


「あの子の後をつけたら分かるはず」


 なんと卑怯な。しかもあの茶髪でコートを着たプレイヤーさんプテラノドン連れてるから結構レベル高いと思うし、多分ここのボスを周回してる可能性。


「これが名探偵フユユなのだ」


 フユユさんはドヤ顔をして後に続きました。そして大広場みたいな所にやって来て、奥には巨大な鉄格子の門があります。現在は閉まっています。


 するとそのプレイヤーさんはプテラノドンの足に掴まって鉄格子の上へ軽やかに着地すると、体勢を崩すことなく、素早く鉄格子を飛び越えて向こう側へ滑り降りていった。名前は遠くて見えなかったけどこのゲームにしては手慣れた人に思える。フユユさんは崩れた。


「あんなのインチキだ……!」


 どの口が言うのか。


「でもこの鉄格子の向こうへ行けばいいっていうのは分かった」


 まぁそうですね。

 フユユさんは思案してます。


「案外上れたりしないのかな」


 鉄格子なので一応手で掴んで上れます。ただ門の上が城壁のようになってるのでそこから上るのは不可能でしょう。それにスタミナの問題もあります。


 フユユさんが試すものの、鉄格子の上まで行けるもののそこからは……。


 はい?


 なんかうまくピョンと飛んで出っ張りみたいな所を掴んだのですが。

 おまけにその出っ張りに立って静止。スタミナ回復……。


 続けて他の出っ張りを掴んでクライムの如く上がっていく……。

 登頂……。


 フユユさんがダブルピースしてます。

 このゲームは穴だらけですね……。


 ともかく私も続きましょう。スキル『ハイジャンプ』でフユユさんが乗った出っ張りに……。

 滑って落ちた……。何度も試す。


 むずっ! あの子こんなに難しいのに一発で乗ったの!?


 面倒くさくなったのでデバッグモードでプテラノドンを呼んで上りました。


「ミゥ、どんまい」


 あなたがPS高すぎるんです。そうに違いない。


 ともかく謎の城壁に上りました。本来であれば街のどこかにいるNPCが門を開けてくれる仕様です。どのNPCかはアカウントによって変わる。だからズルはできないはずだったのですがゲームなんて不完全なものです。


 城壁から下りる所がなかったので飛び降りるしかありません。フユユさんは器用に出っ張りを足場にして地面に着地。私も飛びました。無論失敗。デバッグモードで無敵。


 門を越えた先には大きな時計塔が建っています。歯車や骨組みされた鉄が露出した何ともスチームチックな塔。中に入ると螺旋階段が上へと続いています。道中には鉄屑で造られたロボットやギアスパイダーなどのモンスターが待ち受けます。


 当然突破。


 頂上に到着。歯車の時計が奥に見えて、床は円形のシンプルな場所。

 こんな場所だから当然……。


 地面が影で覆われる。そして空から姿を見せるのは空飛ぶ起動要塞、超巨大戦艦、或いは破壊兵器。今にも宇宙で戦争が始まりそうなメカニカルな戦艦が登場したわけです。めちゃくちゃでかい。


「あれがボス……?」


「ですね」


 フユユさんが魔法で攻撃しようとするも天高すぎて当たりません。そして相手は主砲やビームを放ってきます。塔に爆撃して煙が舞い上がる。おまけに塔も揺れてグラグラ。


「なるほど……ギミック系のボスかな?」


 察するの早くない? まぁ攻撃が当たらなかったら分かりますか。

 フユユさんが周囲を見渡します。それで指を差しました。


「戻れる……!」


 うん。あなた開発者ですかね。


 フユユさんは最初から答えを知っていたかのように引き返して階段を下りていきます。その間も攻撃されて塔が半壊して天井から歯車などが落ちてきます。当たれば当然ダメージ。


 それで入口付近まで行くと、まぁ地下へ続く道があるわけですよ。はい。



 ※フユユは地下に隠された装置を起動。時計塔は砲台に変形しボス撃破※



「ここのボス最弱じゃない?」


 最弱認定された戦艦様。


「だからあのプレイヤーさんも周回してたのかー」


『ハイランナー』などのスキルがあれば速攻撃破も容易かもしれない。きっと制作班が戦艦を造りたかっただけだと思います。はい。


「これで残すは3つー。このまま行くぞー」


「あの。私は夜更かししないのでそろそろ……」


「そっかー。じゃあさ、少しだけお喋りしない?」


「それくらいならいいですよ」


 そのお喋りが時間を忘れてずっとしていたのは内緒です。

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