65.世界を敵に回すって一度やってみたかった
ログインしてフユユさんと再会。
攻略の続きと参りましょうか。
「次はどちらに?」
「機械の街かな」
ジュラシックへリベンジするかと思いましたが案外順当に攻略するようです。やはりレベル差を感じたのでしょうか。或いは時間がかかるから私に気遣ってくれてる可能性もありますが。
まずはお着換え。たまにはイメージを変えてみます。
何故か男用のスーツベストの衣装があったのでそれを着てみる。下はスラックスみたいな奴。見た目的には男装女子みたいになってるはず。頭にグラサンかけたら様になるかな?
「どうですか?」
するとフユユさんが凄まじい早さでメイド服に着替えて跪いた。
「お帰りなさいませ、ご主人様」
メイドごっこでしょうか。
「正直に告白します。とても良いです……!」
そんなに気に入ってくれたなら嬉しいですね。
フユユさんの前に屈んで顎をクイッてしてやります。
「行こうか、フユユ」
ちょっと悪ふざけしてみる。するとフユユさん顔真っ赤。
どうやらまた1つ弱点を見つけてしまったようだ。よし、今日はこのコスで乗り切ってみましょう。
「あのー。ちょっといいですか」
出発しようと思ったら地雷系っぽい女子に声をかけられます。
「すごく見た目いいなって思ったんですけど写真撮っていいですか?」
まさかの。もしかして男装って人気あるんでしょうか。女性しかいないし新鮮味はあるかもしれません。
「いいですよ。ただ彼女も一緒でも構いませんか?」
フユユさんの手を取って隣に連れます。フユユさんはまだ顔を赤くしたまま。
「もちろんです! えっと、不躾ですけどもしかしてお2人はお付き合いしてたり……?」
「ええっと……まぁ……」
そういう雰囲気に見えたのでしょうか。
「やっぱり……! 前に広場でもキスしてたからそうなのかなぁって。わぁ、ありがとうございます……!」
そういえば時々やらかしてましたね……。地雷女子は写真を撮りまくっています。
それで満足すると何度もお辞儀して手を振って去りました。フユユさんは終始黙ったままでしたが。
「行きましょうか」
「ミゥは……平気……?」
「何がです?」
「周りに恋人だって……思われて……」
確かに同性で付き合ってるのは普通じゃないかもしれません。でも……。
「私が好きだって思えるのはフユユさんだけですよ」
「うぅ……ミゥの馬鹿ぁ……」
今日はいつになくしおらしいですね。でもかわいいかもしれない。
※機械の街※
サイバーエリアの繁華街にあるワープパッドに乗ると瞬時に移動して来れました。
目の前にスチームパンクとも呼べる巨大な蒸気都市が存在しています。空へと飛んでゆく黒い煙、道路に散らばった鉄のガラクタ、未完成で無駄に大きな建物、街中を走る蒸気機関車。
「おー。ここが機械の街かー」
フユユさんが興味津々で周囲を見渡してます。こういう景観もまたVRだからこそですね。
少しするとメニュー画面が強制で開きました。そこには赤文字で『!』が表示されています。
「なになに……機械の街では信頼度システムがあります。街の人に協力して信頼度をあげて攻略を楽にしましょう。信頼度システムはクエストや……ん、分かった。もういい」
フユユさんはすぐに画面を閉じました。機械の街では多くのNPCが存在します。
そしてこの街そのものがダンジョンでもある。だから他の街と違って魔法も使える。
中々に手の込んだマップだと思います。
早速街を歩くと人型のアンドロイドのような黒い機械を発見します。さらに周辺にはドローンも飛んでいて目のようなでプレイヤーを監視しています。
それらは私達に気付きますが特に何もしてきません。道路の向こうでは別のプレイヤーがギアスパイダーという歯車でできた蜘蛛と戦っています。
フユユさんは周囲を見回した後、ドロイドに『マジックアロー』を放ちます。
「ちょっと。何してるんですか」
私の質問を無視して攻撃を続けます。次第にドロイドの目が黄色に点滅します。
同時にフユユさんのメニュー画面が勝手に開いて赤文字の警告メッセージ。
「このまま続けると信頼度が下がります、ね。うん、なるほど」
なるほど、じゃないですよ。早くやめてくださいよ。
私の杞憂とは裏腹に一向にやめてくれません。そして遂にドロイドの目が赤くなりました。
そしてサイレンのような音が響いて周囲のドローンの目も赤くなります。
するとどうでしょう。街のあちこちから警備用のドロイドやドローンがやってきます。
「信頼度を上げられるなら下げるのも可能。やっぱりゲームはこうじゃないと」
わざとですか。ていうかフユユさんとパーティ組んでるからこれ私も狙われる奴なんですけど。あードロイドがブラスター撃ってきますー。
「開幕早々指名手配されるメイドって」
「ご安心ください。主には指一本触れさせません」
だったら敵対行動なんてやめろー。完全に駄メイドじゃないですかー。
とはいえ攻略するのでやるしかない。ブラスターは直線的なので軽く動いていたら当たりません。魔法で反撃して倒します。更に警告メッセージ……。
敵が更に増える。何この負の連鎖。まだ軽く歩いただけなのに街中に無数の敵が出現したのですが。というかキリがないです。
「ご主人様、逃げましょう!」
「ミスの多い部下を持つと苦労します」
というわけでダッシュして逃亡。当然敵は追ってきます。気分はお姫様を連れ出して逃げ出した王子様の気分。追われるようになった理由は考えないものとする。
逃げてると他のプレイヤーさんがちらほらとすれ違います。
「がんばってー」
「敵行ったよー」
「ありがとー」
などと声援を送ってくれます。信頼度が低いせいで通常のモンスターもこちらに優先的に向かってるようです。なんともお優しいシステム。全ての負担がこちらに来てるだけですが。
さて、逃げてるのも束の間。時計塔の見える交差点まで来ましたが前方からも後方からも敵に囲まれてしまいます。気て早々の絶体絶命。
フユユさんが私の手を握ってきます。
「ミゥと一緒なら何も怖くない……!」
映画のワンシーンみたいに格好つけてますけど全部あなたのせいなんですよ?
ドロイド達が一斉にブラスターを構えます。
「はぁ。あまり私を怒らせないでください。フユユ、私の背中へ」
「え……?」
全員あの世送りにします。
デバッグモード解禁。
惑星魔法最上級『ビッグバン』
全てを無に還せ。滅びろ!
天高くに白い光が集まり、次第に粒子エネルギーが集約。
そして……。
街全ては白い爆発に包まれたのであった。