63.絶対大丈夫だよ
神殿の最奥、無駄に広い空間へと来ました。中へ入ると後ろの通路に壁が出来て戻れなくなります。そして天高い天井から何かが飛んで来て下りてきます。超巨大な孔雀です。青い体に大きな翼は氷のような造形で美しい。
ダンジョンボスのゴッドバード。
孔雀さんが翼を広げるとその翼から氷の槍が発射されます。その数はあまりに多く、またプレイヤーを狙っていない所謂ランダム弾も存在するので闇雲に走っていても被弾してしまう。ここは炎魔法『ファイアウォール』
火柱を立てて相殺します。
「ナイス判断、ミゥ」
さっきは視界が悪くなって邪魔と言われましたが、ボスが大きいおかげでこれくらいなら動きを把握できますからね。
氷の敵なので当然炎が弱点。炎の魔法を連打!
フユユさんと攻撃するも思ったより減らない。やはりこの辺のボスとなるとHPもかなり高いですね。孔雀さんが鳴き喚くと天井から氷柱がいくつも落下。氷精も出て来て邪魔だ。
「雑魚は私が倒す。あっちはミゥがお願い」
本気ですか。まぁでもボスの動きを見ながら複数の敵を見るのは無理なので頑張る。
孔雀さんが再び翼を広げて氷の槍を飛ばしてきます。ここはスキル『ハイランナー』で加速します。ボスに接近。前方向の攻撃なので足元付近は安置のようですね。
ここなら!
上級炎魔法『溶岩の海』
地面に手を当て周囲にマグマを発生させます。プレイヤーの周辺にしか効果はありませんが継続して炎ダメージを与えられる上に体の大きなボスには効果大なはず!
「ミゥ、バフお願い!」
「分かりました」
フユユさんに支援魔法『ブレイブハート』をかけます。そしてそのまま『ファイアーボール』を顔面に何度も打ち込んでいます。
よし、いい感じに削れてますね。
その調子でボスの体力を削っていましたが、相手のHPが半分くらいになると異変が発生。
ボスの孔雀の目が赤くなり、翼を天高くに広げます。咆哮ともいえる叫びと共に体の色や翼が赤く燃え上がっていきます。その見た目はさながら鳳凰。
「第二形態かー。わくわくするね」
どうやら一筋縄いきませんね。さらに鳳凰は飛び上がって翼を広げて氷の神殿を溶かしていきます。室内に猛吹雪ともいえる雪が降り注いできます。
天候吹雪。寒さによってスタミナの回復速度が減少。難易度がさらに上昇します。
おまけに鳳凰は飛んだ状態で空から火の雨を降らしてきます。
まさにホットアイスに相応しいボスですね。
「炎なら水が弱点……!」
ですね。
ただ相手は常に飛んでいるので地上から狙える水魔法は限られています。フユユさんは初級水魔法『バブルガン』で攻撃するも魔法の遅さもあって天井に向かう頃には敵の位置がズレてしまいます。
諦めて『マジックアロー』で狙うのが賢明でしょうか。
すると鳳凰は急降下して翼の炎で床を燃やし尽くしてしまいます。床は炎上状態になってプレイヤーにもダメージを与えてきます。鳳凰はそのまままた天井の方へと飛んでしまいました。
「今の……」
「フユユさん?」
「ねぇミゥ。ハイジャンプでタイミング合わせてあいつの背中に乗れないかな?」
なるほど……。いやでもタイミング難しくないですか。敵の動きはすごく早いし、私の動体視力では……。それを察してかフユユさんが私の手を握ってきます。
「タイミングは私が教える。だからミゥは目を瞑って……?」
それなら声を聞いたタイミングで発動するだけ。ここは彼女を信じましょう。
目を閉じます。
フユユさんの手の感触だけが伝わる。何か音も聞こえるけど全部無視。ダメージを受けてもお構いなし。フユユさんが私を信じてくれるなら、私も信じます。
孔雀が叫んだ気がした。けれどフユユさんは何も言わない。
焦るな。落ち着け。
「今……!」
スキル『ハイジャンプ』発動!
高く飛んでフユユさんの手を引いて仲良く敵の背中へと飛び移れました。
「こうなったら後は楽ですね」
水魔法を連打すれば何とかなりそう。おそらく正攻法ではないでしょうが、フユユさんだから出来た芸当とも思います。
「倒す時は下に移動してからの時だよ。でないと落下死しちゃう」
あー、失念してました。私だけだったら油断して脳死で攻撃してそう。
※SKIP※
ゴッドバードを倒して私達の勝ち~。フユユさんとハイタッチします。
「ミゥ、いい動きだったよ」
「それを言うならフユユさんのおかげですよ。背中に乗れてなかったらどうなっていたか」
「でもタイミングちゃんと合わせて使ってくれたのミゥだよ?」
「フユユさんの声は聞き逃さないだけです……」
「ミゥって本当女誑し……」
だって本当のことですから……。
「一旦休憩でログアウトにしましょうか」
「栄養補給行って参ります」
「また卵かけご飯じゃないでしょうね?」
「だって美味しいんだもん。楽だし」
気持ちはすごく分かります。
「分かった。また料理して完成したの送るね」
不安しかないですけど頑張っているなら見守るべきでしょうか。




