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62.歩くラグナロクなんて恥ずかしくて言えない……

 ホットアイス山脈、中間地点の凍てついた氷の都。

 凍った海の先に南極のような雪でできた島がある。そこには氷で造られた建物が並んでいました。天候は常に大雪なのもあって少し幻想的な所です。8エリアの4隅なのもあってプレイヤーはいません。氷の道を歩いて行きます。


「アイテムの補充は大丈夫ですか?」


「全部避けるから問題なし」


 すごい自信満々ですね。実際フユユさんが被弾するのって、油断してるときくらいなんですよね。何か秘策があるのでしょうか。


「どうしてそんなに攻撃を避けられるんですか?」


 敵なんて初見は動揺しそうな気もしますが。


「んー。案外回避不能な攻撃ってないと思うよ。ゲームだから開発者が意図的にそうしてくれてるんだろうけど。だからボスみたいな相手は最初は攻撃せずに回避に徹する感じ。それである程度パターン作って攻撃するみたいな」


 もはやベテラン過ぎます。私なら馬鹿正直に攻撃してますね。


「でもこれはCPUに対しての動き。対人だと予測を裏切った行動が多いから読み合いが必要になるし。だからパターンの決まった相手の攻撃は避けやすいんだ」


「フユユ先生と呼んでいいですか?」


 彼女からいくらでも学べそうです。


「えーやだー。フユユちゃんがいいー」


 冗談で言いましたがアウトらしい。


「そういうの聞いていたらフユユさんは他のゲームでは結構有名だったんですか?」


 仕事ばかりなのでその手の界隈事情には疎いので全く分かりません。


「別に有名でもないよー」


「異名とかあったりするのでは?」


「どうなんだろう。でもPVPイベントがあった時、私と戦う人は結構な割合ですぐにリタイアするんだ。戦う前から諦めるって本当興ざめだよね」


 これは絶対界隈で恐れられてる奴ですね……。


 呑気に雑談していると街を出てその先には氷の神殿が待ち受けています。

 いよいよダンジョンですね。


 氷の柱や氷の階段、氷の通路、全てが青いオブジェクトで包まれたダンジョン。

 天井からは氷柱が落ちてきて割れるとそこからは炎精の青の色違い氷精というモンスターが出て来る。更に白くてモフモフな狼さん、スノウウルフも気付いて走ってきます。


 すかさず魔法を。中級炎魔法『ファイアウォール』

 炎の火柱を立ててスノウウルフの進路を妨害。これならすぐには接近できないはず。


「ミゥそれアウトー。視界が悪くなったら敵の動きが分かりにくくなる」


 そしてベテラン様からの悲しきご指摘。シュン……。


 敵は難なく撃破。


「フユユさん。このダンジョンは私に任せてください」


 PSを磨く為にも少しでも強くならねば。フユユさんがすっごい不安そうな顔をします。いやまぁ、今のは軽いミスですよ。本当。


 とりあえずマフラーを外しましょう。


「あ……」


 そんなガッカリしないで……。

 私の実力だとくっついて戦えないの……。


 正面の大扉が閉まっているので入口付近にある階段から2階へと進みます。

 廊下には氷の部屋がいくつも並んでいて、扉はなく出入り自由。近くの中をそうっと覗きます。敵の気配はありませんが足を踏み入れたら出て来るタイプでしょうね。よーしやりますよ。


 中に入ると囲むようにしてスノウウルフが出現。


「ミゥちゃんのお手並み拝見といきますか」


「いやいやこの数は……」


 するとフユユさんが私を庇うようにして前に立ってくれます。それで敵の注意を引いてくれて狼さんの飛びかかりを避けます。反撃は一切しない。


「敵の数が多くてもやるのは同じ。まずは避けに徹する。どこかでタイミングもズレるからその隙を攻撃すればいつかは終わる」


 いや本当、あなた何者ですか? 実はプロゲーマーとかじゃないですよね。


 ともかくフユユさんを見習って回避に徹します。彼女のようにうまく避けれませんがここで焦って攻撃してはいけない。ちゃんと見極めます。


 スノウウルフが飛びかかり、空中で反転する。今だ。


 初級炎魔法『ファイアボール』


 手を突き出すと同時に、炎の球が一直線に走って命中。

 初級魔法は硬直も少ないのですぐに行動できます。なるほど、後はこれを繰り返せばよいと。


 ダメージを結構受けましたが何とか撃破。


「ミゥやったね」


「できました」


 フユユさんの力を借りずに突破。ハイタッチします。


 それから神殿を探索してギミックを解除して大扉の中へと進みます。そこは大きめな通路になっていて、中には敵が沢山。


 まず一番奥にアイスゴーレムという草原ダンジョンボスのゴーレムロボさんの亜種のようなのがいます。更に周囲には小さな妖精が蝶の羽をパタパタと動かして飛んでいます。アイスフェアリーという氷魔法を使う敵。


 当然スノウウルフもいて天井から氷柱も落ちて来るので氷精も出てきます。やはりこの辺りになってくると奥へは簡単に進めないようです。


「ミゥ、一緒に行こ」


 私の手を引っ張って通路へと先導されちゃいました。

 本当、私の心を読むのが上手なんですから。


 フユユさんと背中を合わせて周囲の敵から倒していきます。1人だと挫けそうな場所でもこの子がそばにいるというだけで心強い。


 フユユさんは身体の小さいアイスフェアリーに難なく魔法を当てます。あのエイムのすごさも鍛えたら身につくのでしょうか。ともかくスノウウルフの攻撃を避けながら撃破。


 アイスゴーレムが青いビームを放ってきますが相手の前に立っていなければ当たらない。


 無事突破!


「どうですか? 私も強くなったでしょう?」


 フユユ先生のアドバイスのおかげで自分の中の実力が数段階上がった気がします。


「うーん。40点くらい?」


 フユユ先生は辛口評価……。


「でも可愛さは100万点!」


 その一言で、全部どうでもよくなりました。


「それならフユユさんは100億点の可愛さです」


「ミゥの声に100兆点追加!」


「フユユさんの性格は無量大数です」


 気付いたら抱きしめ合ってました。


 最近この子に感化されてきたのかもしれない。

 それから5分は抱きしめ合ってたと思う。


「じゃあ行こっか」


 はっ。何か達成感に満たされてましたがまだボスを倒してないんでした。


 先へ進みましょう。

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