61.ミゥが一番強くて格好いいんだけどね
結局手を繋いで攻略。やはりこれが一番安心できます。
噴火が発生。足元に大きな影が……。これヤバい?
フユユさんが私の手を引いてくれてギリギリ回避。炎精が出てきますが水魔法で対処。
なんか私、足手まといですね……。
「すみません……」
「どうして謝るの?」
「私が余計なこと言うから攻略も時間がかかってますよね……」
するとフユユさんが手を強く握ってきます。
「私がしたいからこうしてるの。ミゥは何も悪い事してない」
またこの優しさに甘えたくなってしまう……。
ダメだ、このまま甘えてたらこの先絶対に介護してもらうだけになる。それか私は常にデバッグモードでプレイして付いて行くだけか。
彼女としてそんな恥ずかしい真似はできない……!
「フユユさん。私も頑張ってPS磨いてみます。私はあなたの隣に立っていたい……!」
ただの開発者でゲームの腕前なんて小学生以下で、そんな私が彼女に追いつくなんて何年も早いかもしれない。でももう、背中だけを見ているのは辛いんです。
「ミゥ……。分かった、私もミゥに協力する」
「フユユさん……!」
「ミゥ……!」
思わず手を合わせて抱きしめ合ってしまいます。呑気にしてるとまた隕石が降ってきます。もう邪魔なんですよ。デバッグモード、拳で粉砕。
はっ。反射的に使ってしまった……。
「ミゥー。嬉しいけどそれじゃあダメだよ?」
「分かってはいるのですが」
「でもさ、そんなすぐに上達なんて難しいし、今のまま後方支援してくれるだけでも全然助かるよ?」
多分、そうなんでしょうけど……。
「私はあなたと同じ景色を見たい。同じように戦えるようになりたい。ずっとそばにいたいんです」
「……ミゥ……好き……」
「私も……好きです……」
手を触れたくなる……。
肩を抱き寄せたくなる……。
はっ、またイチャつこうとしている。これでは全然成長できない。
仕方ありません。こうなっては自分に鞭を撃ちましょう。
「フユユさん。ここからは私が先行します。ですからフユユさんが補佐をお願いします」
「大丈夫?」
「問題ありません。最悪デバッグモードで逃げます」
「それ一生成長できない奴だと思うけど」
ともかく、なるようになれ。火山を登って、火口場へと来ました。奥ではマグマがボコボコとしていて今も定期的に隕石を飛ばしてきます。外周を回って降りられるので先へ進みます。
狭い道を進んだ先に小さな何かが転がってきます。アルマジロのようなモンスター、マジロン。転がって突進してくるので魔法を使います。
水魔法『アクアブレイド』
水飛沫が斬撃のように真っすぐ攻撃する魔法。マジロンに命中……ですが思ったより削れてません。回転中は防御アップしてたっけ?
ちょっと待って、目の前でゴロゴロしないで。うわーHP減るー。とりあえずマジックアロー。全然減らないー。
するとフユユさんが手を引いてくれて奥の方へと引っ張ってくれました。マジロンは勢いのまま後方へと転がっていきます。そっか、直線的に転がってくるだけなら避けてから攻撃しないと。
「ヒットアンドアウェイだよ、ミゥ」
基本中の基本。忘れてました。
マジロンも方向転換する為に一旦顔を見せてくれます。よし、今なら!
中級水魔法『ギガドロップ』
雫を落として飛散! 大ダメージ!
すると何やらマジロンがその場に倒れました。なんじゃ?
ドカーン!
こいつ、爆発したぞ! かわいい見た目して自爆なんてするの!?
いや、知ってたけど眉唾だったというか。
「テイムしてもいい?」
「もちろんです」
マジロンがまた下の方からやってきますが、フユユさんは軽くジャンプして避けて反転してマジックアローで削ってます。どこかの誰かと違って完璧な動きです。
『テイムに成功しました』
「マジロンゲット!」
仲間になってくれたことでフユユさんの後ろをテクテクと歩いています。かわいい。
そんな感じで火口近くまで来るとマグマがボコボコ噴火しています。けれどマグマの上には何やら青いクリスタルがクルクルと回っていました。
如何にも壊してくださいという様子です。フユユさんがマジックアローで攻撃するも固いのか思ったよりHPが減らない。彼女は思案します。
「よし決めた。マジロン、自爆だ」
テイムして数分後にこれは鬼畜すぎる。けれどマジロンは主の命令を忠実に守ってか、ピョーンとクリスタルに飛びつきました。そして体を発光させます。
ドカーン
マジロン、目がバッテンになって戦闘不能。南無。
「フユユさんはテイマーとしての自覚を持って欲しいです」
「えー。ダンジョンのモンスターに強力な魔法撃ってる人に言われたくない」
それはデバッグだから仕方ないのよ。
言い合ってる内にクリスタルは砕けます。すると先程まで噴火していたマグマは一瞬にして凍り付いた。それだけでなく周囲も凍って、空から雪も降ってきます。火口から出ると孤島は大雪に囲まれて一面銀世界へと変わっています。おまけに海も凍って歩けるようになっています。
ホットからアイスへと変わりましたね。凍った海の向こうに街が見えます。
フユユさんの手を取りました。
「さぁ行きましょうか」
何も言わず、それでもどこか嬉しそうな足取りで歩いてきてくれます
「ねぇミゥ」
「なんですか」
「前にさ、ミゥ言ってくれたでしょ。頂点なんて気にしてないから自分のペースでいいって」
言ったような?
「だからね、別に焦らなくてもいいよ。それに私はずっとミゥと同じ景色見てる。今も隣に立ってるよ……?」
いつからこんなに気遣いもできるようになったのでしょうか。
いや。この子は最初から気配りも上手だった。何も知らないのに私にポーションを渡しに来るような子だったんだから。
「フユユさんのそういう所、本当好きですよ」
「むふふー。そだ。こんなに雪が降ってるしこれを使おう」
フユユさんがピンクのマフラーを出しました。いつか私があげた奴ですね。
それでなぜか私の首に巻いてきます。
「これでよし」
なにが良しなのか。満足そうな顔してて可愛いですけども。
「フユユさん、もう少しこちらに」
「……?」
抱き寄せてマフラーの半分を彼女に巻きます。
「これでいいでしょう」
こういう時ってどっちが装備扱いなんでしょうか。どうでもいいですけどね。
「これいいかも」
「敵が出たらお願いします」
「任せなさーい」
このマフラーがきっと私達をずっと繋いでいてくれる。