54.ミゥの弱点属性は妹説
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広場に来ると『女』Tシャツの銀髪少女が手を振ってくれます。
いつもいつも早いのよ。
近くに行きます。
「攻略の続きでしたね」
「その前に1つ気になったんだけど、これって髪型変えられる?」
フユユさんが長い髪を触って言います。
「もちろんです。アイテムが必要になりますけどね」
身体的特徴は後で変更できませんが髪型や長さ、髪色などはアイテムを購入することで簡単に変えられます。
「そうなんだ。じゃあ少し変えたい。せっかくの攻略なんだから楽しまないとね」
このゲームを心から楽しんでくれるようになって私も嬉しいです。
というわけで仕立て屋さんにやって参りました。髪型の変更なので別だろうという感じもありますが手間暇を省く為に同じにしたのでしょう。
入店してフユユさんがデータ画面を弄っています。
「ミゥはどういう髪型が好きー?」
前にも同じような展開があったような気がします。
「髪型なので好きにすればいいと思いますけど。あ、でも銀髪だけは変えないで欲しいです」
「それはもちろん。ミゥ好きだもんね」
好きって言葉に一瞬だけドキッてしまいます。前までは簡単に流せた言葉も今では過剰に意識してしまう……。
フユユさんが色々髪型を変えて遊んでいるので私もせっかくなので変えてみましょうか。
長さはこのままで髪を内跳ねにして黒のキャスケットを被ってみます。少しは大人っぽく見えるでしょうか。服は『愛』ですけどね。
「え~、それかわいい~」
フユユさんから好評を頂けました。
そういう彼女は髪をツーサイドアップにしています。素材の味を残した見事な風味……。
「眼福です……」
「じゃあ今度はこれで攻略しよっか」
購入を済ませて店を出ます。
「次はどこへ?」
ワンダーとモンスターパークが終わったので北の機械の街か南の水の都でしょうか。
「ジュラシックワールドへ行こうと思う」
まさかの斜め上。モンスターパークを攻略したので北西にあるジュラシックへは行けますが……。
「あそこ、適正レベルが結構高かったと思いますよ?」
名前の通り存在してるのは狂暴な恐竜モンスター。HPや攻撃力が高く、慣れない内はロストを繰り返すでしょう。
「私を誰だと思っている。天才ゲーマーフユユさんなのだ」
自分で言いますか。とはいえ実際彼女の腕ならどうにかできそうですが……。
寧ろ私が足を引っ張りそう。
「私は自信がないので少しレベルを上げますね……」
恐竜に囲まれてボコられる未来しか見えないので高めにしておこう……。
「ピエロ片手でぶん殴ったんだから最強モードですればいいのに」
「それでやったらフユユさんが楽しくないでしょう?」
「私はミゥがいてくれたら何でも楽しい……」
それはパワーワードなので発言は控えてください。
とりあえず適正レベルより高めに設定完了。早速出発です。
※モンスターパーク※
パークを経由して北の方は広大な樹海となっています。あそこが次のジュラシックの入り口でしょう。気を引き締めないと。
歩いていたのですが隣にフユユさんの姿がありません。振り返りますと彼女は足を止めて何かを見てます。その先は観覧車……。
「ねぇ、ミゥ。最後に1回あれ乗ろ」
他の乗り物には興味を示さないのにこれだけすごくハマってますね。
気持ちは分かります。
「1回なんて言わず、乗りたかったらいくらでも付き合いますよ?」
「いいんだ? じゃあ今日一日ずっと乗るよ?」
それはそれで色々と試されそう。主に私のハートが。
フユユさんは小走りになってゴンドラへと乗ってしまいます。
「ミゥ早く早く!」
急かすように手招きしてきます。本当子供なんですから。
ゴンドラに乗り込んで座ります。今回は向かい合って座る形。
「そういえば支払い中によくもあんな事してくれましたね。おかげであのコンビニ利用できなくなったじゃないですか」
「あの程度で使えなくなるなんてメンタル弱くない? 私だったら何食わぬ顔して利用するけどなー」
引きこもりの人に言われたくない。
「悪い子には罰が必要です」
「何させる気? まさかここでプレイする感じ?」
この子はなぜ毎度そういう方向へ持って行きたがるのか。
「これから私のことはお姉ちゃんと呼んでもらいます」
「えーそんなのでいいの?」
ぱっと思い付いたのがこれくらいしかない。重いのにすると可哀想ですし。
黙って頷きます。
「いーよ。お姉ちゃん」
はぁぁぁぁぁ、キュン死するかも……。
現実に妹いますけど、あの子はもっとこうなんか違うんですよね。
「お姉ちゃんってさ、もしかしてシスコン趣味ある?」
さすがにそこまでではありません。そもそもあの子と最後に会ったのはいつだったか……。
「精々次の攻略で足を引っ張らないでよね。メンタルよわよわお姉ちゃん」
よし、これなら次の攻略も頑張れそうです。いけるぞ、私。