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50.好きが幸せに変わった

 今日からなんとGWです。私にとっては天国みたいな1週間です。そしてそれはガールズオンラインでも反映されたらしく、人がとても多い!


 前のイベント初日でも思いましたが想像以上にプレイヤーが増えてるそうです。

 これはいよいよ私の過労も限界突破しそうですね。でも今はそんなの忘れます。

 今日来たのはもちろん、あの子に会うため。


 人混みを避けながらいつものベンチへと行きます。そしたらベンチで座ってるその子と目が合う……。向こうが照れるからこっちも恥ずかしく……。

 とりあえず手をあげて挨拶……。


 隣に座りました。


「えっと。おはようございます……」


「おはよ……」


 ただ挨拶しただけなのに心が空へと飛んでいきそう……。

 昨日の今日だから仕方ないかもしれない……。


「人、多いね……」


「今日からGWですよ」


「そうなんだ。なんか月日の感覚がないんだよね……」


 それも無理はないと思います。


「ってことはミゥもお休み……?」


「はい。ですから暫くはフユユさんと一緒にいられます」


 仕事で毎日一緒に居られるのになんだこの言い方は……。


 フユユさんは嬉しそうに私の胸に……躊躇ってる……?

 昨日のあれがあったから意識してるのかな……。


 だったら私から行ってあげよう……。


 ハグしてぎゅーして……。


「ミゥ……」


「フユユさん……」


 やばい。もう既に脳が溶けてしまいそう。この子と1日一緒に居たら私はスライムになってるかもしれない。


「そだ……呼び捨てしない方がいい……? ミゥさん……?」


 そういう関係にはなったけれど。


「むしろ、私が呼び捨てた方が……。フユユ……?」


 こういうのってどっちが正しいの? 私、今まで恋人なんていなかったから分からない。


「ミゥさん……」


「フユユ……」


 ああもう、ダメだ。本当にどうしようもなくなってる。

 これだけで1日過ごせる自信がある。私の心は胸一杯……。


「こ、攻略に行きます……か?」


「いき、ます……」


 なんか調子が出ない。いやいつもより調子がいいんだけど……。

 このドキドキがどうしようもない……。


「手、繋ぎます?」


「繋ぐ……」


 手と手が重なって、やわらかい感触が伝わる……。

 ここがゲームの世界でよかった……。

 きっと現実だったら手汗でびっしょりだったから。



 ※マッドナイト、夜の街※



 色々話し合った結果、次の攻略先はモンスターパークに決まりました。

 夜の街の大通りとは別に林道へと続く所がある。暗い夜道のような林を進むと小さなトンネルがあります。ちょっと暗くて、歩きにくいかもしれない。

 でも私の手には小さな温もりがあるからきっと平気です。


 トンネルはそう長く続きません。その向こうに待っているのは……。


 光が差し込んで視界の先が明るくなるとカラフルな風船が空へと飛んで行きました。


 その先はまさに遊園地とも呼べる光景で、メリーゴーランド、観覧車、クルクル回るブランコ、一番奥にはサーカス団のような赤いテント。パーク内にはおもちゃのような車が走っていたり、着ぐるみ姿のモンスターもいます。絶叫系のアトラクションはありませんが雰囲気としては十分。


「名前で察してたけど本当に遊園地だったなんて」


 ゲーム世界だからこそ何でもあり。最高のゲーム体験をお届けします。


 ……なんて思ってた時期もありましたけど、長く開発に携わっていると段々と何も感じなくなってくる。


 けれど今はこの景色も色褪せずに見えるのは何故だろうか。


 思い返せば遊園地に来るなんて初めてです。学生時代は友達と馬鹿騒ぎしたものの、こういう所へ遊びに来ることはなかった。大学に進学して高校時代の友達らと疎遠になって、大学にも友達はいたけれど周りはバイトしてる人ばかりだった。社会人になってからは更に遊ぶ時間も減って、もうこんな所へ来る機会もないだろうって思ってたな……。


 私は今、初めてゲームもいいなって思ってる。退屈を埋めるだけだったものが、ただ隣に誰かいるだけでこうも景色が変わるなんて。


「ミゥ……?」


「初デートは遊園地って洒落てると思いません?」


「考えないようにしてたのに……」


 でもここを選んだのはフユユさんですよね?


 せっかくですから服も着替えましょう。初デートなので普段着ていないので。

 よし、ここは『愛』のTシャツで。下はチノパン。これで決まり。


 シュバっとお着換え完了。


「……初デートでその服を着て行けるのはミゥだけだろうね。それ見た男は皆帰ると思うよ」


「このセンスが分からない野郎なんて興味もありませんね」


「言えてるー」


 でしょう?


 フユユさんもお着換えが終わって、そしたら何と『女』Tシャツが!

 さすがに彼女はインナーとして着こなしてるようですがこれは素晴らしい。センスの塊です。ミニスカとよく合ってます。


 何も言わずフユユさんを抱きしめました。ここに同士がいたんだ……。


「この良さが分かるのは私だけだもんね」


「フユユさんなら分かってくれると思ってましたよ」


 もしかしたら気遣ってくれてるだけかもしれませんが、それを含めたとしてもやっぱりこの子しか私の理解者はいません。


 さて、パーク内を歩きます。そしたら恐竜のような着ぐるみ姿のモンスターがこっちへダッシュしてきます。絵面だけ見ると子供にトラウマ与えそうなんですが。


 ともかく敵なので倒さないと。


 フユユさんが前へ行こうとする……。

 ああ、ダメ……。

 手を離さないで……。


 強く握った。

 フユユさんが驚きながら振り返る。


「一緒が……いいので……」


「う、うん……」


 魔法は片手で使えるので仲良く魔法を使って着ぐるみさんを撃破。


 前まではゲームなんて全然楽しくもなかったのに、今はこの一時の瞬間すらも愛おしい。

 フユユさんもこんな風に見えているのでしょうか。


 なんか抱きしめたくなった……。

 ハグ……。


「なんか今日のミゥ積極的だね……」


 自分の気持ちに正直になったから今までの分が解放されたのかも……。


 私にとって長い長い1週間が始まろうとしてる。

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