47.働くって案外楽しいかもしれない。ミゥがいれば、だけど
後日
「フユユさん、もう知っていると思いますが採用が決まりましたよ」
「メール届いた~」
特に問題なく彼女もデバッグ班の仲間入りとなりました。
「早速仕事?」
首を傾げて聞いてきます。
「その前にいくつか説明をしておきます。フユユさんも仕事仲間となったわけですが、そうなると私はフユユさんの上司という立場になります。なので言葉遣い等は気を付けて頂けると幸いです」
「気を付けまする」
何かおかしい気もしますが……。学校に行ってないなら敬語も詳しく知らないかもしれないですね……。まぁその辺は徐々に覚えてくれたらいいです。
「あと、当然ですが他のプレイヤーに私達が関係者であるというのを話したり、またゲーム内の情報を漏洩するのも禁止です」
「ミゥはいいの……?」
それを言われると非常にお辛いのでやめてください……。
「……仕事内容ですがフユユさんには草原フィールドのデバッグをお任せしようと思います」
何気に全く手を付けていなかったんですよね。序盤というのもあって凄く広いし労力も並大抵ではありません。最後に回す予定でしたがフユユさんが来てくれたので任せようと思います。
「イエッサー」
なぜ敬礼?
「バグがあればメールに記載して後程まとめて送ってください。これは前にしたような感じで大丈夫です。あとはそれ以外に気付いたことがあれば些細なことでも教えてくれると助かります」
「今日はミゥが嬉しそうとか?」
「それは書かなくていいです」
ていうか私が嬉しそうだって気づいてたの?
顔に出したつもりはありませんでしたけど……。
「私は別の場所をデバッグしますので分からないことがあれば遠慮なく連絡してください」
「じゃあミゥが好きな食べ物を聞いてもいい?」
「仕事で、分からない所があれば聞いてください」
「はーい」
絶対分かってて言ってるでしょう。
※時間経過※
フユユさんと別れて仕事をしてますが全く連絡は来ません。いや、私が後でまとめて報告して欲しいとお願いしたのですから当然なんですが、彼女の性格から余計なメールを送って来ると思っていましたが……。前に変なメール送って来ましたし。
何もないと逆に不安になる……。
少しだけ様子を見に行きましょう。別にフユユさんの声が聞きたいわけではなく、上司として心配になっただけです。
草原フィールドに到着。
フユユさんは……。
いました。街の外周の壁にスライムを投げてくれています。どうやら真面目に仕事してくれているみたいですね。
しかもわざわざジャンプして高い所に投げて上の方まで調べてくれています。
なんて健気……。かわいい……。
ダメダメ。惚気に来たんじゃない。特に問題はなさそうだし戻ろうかな……。
ん……?
なんか数人の女性プレイヤーがフユユさんに近付いて行きます。それでその中の不良っぽい人がフユユさんのスライムを掴みました。
嫌な予感が。行ってみましょう。
「何してるの?」
「大丈夫?」
「悩みあるなら聞くよ?」
と思ったのですがどうやら心配されて話しかけられたようです。
フユユさんは焦りながら困った様子。ちょっとかわいいから見守ろう……。
「私、前に街で同じことしてるプレイヤーさん見たよ」
「あー。あのなんか病んでそうな」
「もしかしてスライム投げるの流行ってたり?」
なんか私の風評被害が。ともかくフユユさんも困ってるようなので顔を出しましょう。
「すみません。彼女は今、大事な作業を行ってる最中ですからそっとしてあげてくれませんか?」
「そうだったんだー。邪魔してごめんね?」
「頑張ってねー」
フユユさんは頷いてスライムを返してもらっています。そのプレイヤーさん達は手を振ってどこかへ行きました。マナーの悪いプレイヤーでなくて良かったです。
「ミゥどうしてここに……?」
「少し心配で来たんです。でも問題なさそうですね」
「ううん。来てくれてよかった。あの人達が来てどう答えていいか分からなくて頭真っ白になって……」
急に絡んでこられると困りますよね。
「ミゥが来てくれなかったら仕事できてなかったかも……」
「もし今みたいな状況になったら連絡してくれて構いませんから。部下の面倒を見るのも上司の仕事です」
「私の面倒見てくれるの……!」
目をキラキラさせない。
「仕事に関して、です」
そしたらガックリ項垂れてしまいました。
「でもミゥが私に絡まれて困る気持ち分かったかも……。あの、ごめんね……?」
こういうのは同じ立場にならないと分からないものですからね。
「別に謝らなくていいですよ。フユユさんがああやって絡んでくれたからこうして一緒に仕事できてるんですから。寧ろお礼を言いたいくらいです」
「ミゥってさ」
「はい」
「前世は神様だったりする……?」
知りません。この程度で神になれるなら日本は今頃神々の黄昏が発生してますよ。
「ともかく仕事も順調そうなので私は戻りますね」
「ま、待って。1つだけお願いがある」
「なんでしょう?」
「一緒に休憩しよ……?」
そんなの……断れるわけないじゃないですか。