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40.そんなの……ズルいよ……

 翌日。


 ※サイバーエリア※


 メール確認、チェック。やはりウォーターエリアのダンジョンエネミーはミスだったらしい。次のアプデでシャークさんに置き換わり。あと、これは……。


「フユユさん」


「んー?」


 フユユさんが寝っ転がってメニュー画面を開いてる。しかも横のブロックで倒れてるせいで私から見たら壁に張り付いてるようにしか見えない。


「以前デバッグの協力をしてくれたでしょう? それで課長に相談した所、フユユさんがよければバイトとして働いても構わないと仰ってくれたんですよね」


「毎日は無理なんだ……」


「一応週1からでも構わないそうですよ」


 今回に限っては人手が圧倒的に不足してるのが現状。


「フルタイムは無理……」


「数時間からでも問題ありませんよ」


 週1の1時間とかでもない限りは。


「あの時はミゥが本当に辛そうだったからなー」


「一応人事への連絡先を送っておきますね。もしも受けるなら書類等の提出が必要ですから」


「えー。ミゥに送るからー」


 それは二度手間過ぎるし私の仕事が増えるだけです。


「それに履歴書の書き方も分からないし」


「その辺は私が教えてあげますよ」


 学生ならバイトをしてないと書いた経験もないでしょう。


「んー。考えとく」


 あとはフユユさん次第なので私がどうこう言えませんね。


「やっぱりミゥってお人好しだよね」


「そうですか?」


「私が引きこもりだから気にかけてくれてるんでしょ?」


「それもありますが人手が足りてないのも事実なので。私を見てくれたら分かると思いますが」


 何せまだ最初の街と2エリアが終わっただけです。先は果てしない。


「当たり前ですが受けてくれたらちゃんとお金で支払ってくれますよ」


「マジかー。欲しいゲーム色々あったんだよね」


 学生だとお金は本当に足りないでしょうね。


「でも今はこのゲームやめる気ないし……」


「どうするかフユユさんの自由です」


「因みになんだけどもし私が受けたらチート授与されるの?」


 ワクワクと目を輝かせてます。


「聞いた話ですと私の指示に従う感じになるのでそのアバターでデバッグすることになりそうですね」


「えー。くれないのー?」


 こればかりは関係者でないので難しいです。


「フユユさんなら別になくても問題ないのでは?」


 寧ろこういうのは嫌いなイメージがありましたが。


「だっていくらでもステ弄ったりできるんでしょ? HP1にしたりとか、スタミナ最低値にしたりとか、マップに敵を大量配置して攻略とか、夢が広がるよね」


 どれだけ自分を追い込みたいんですか。


「仕事内容は基本的に今私がしてるみたいに壁にスライム投げ続ける感じになりそうですね」


「でも私、自分でも分かってるけど気分の浮き沈み激しいから難しいと思うんだよね」


 毎回あんな仕事振りができるなら私の立つ瀬がなくなるので寧ろ安心します。


「今すぐ答えを出す必要もありませんし、無理して受ける必要もありません。気が向いたらいつでも教えてください」


「ん。分かった」


 あんまり言ったら無理して頼んでるみたいですからね。

 言うべきことは終わったので仕事を続けましょう。


「ミゥってさ、本当お人好しだよね」


「急にどうしましたか?」


 いつになく真面目な口調ですね。


「無理に学校行けって言わないし……眠れない時は一緒に寝てくれるし……今もこうやって……」


「フユユさん……」


 目元を腕で隠して、もしかして泣いているのでしょうか。


「もっと早くにミゥに会いたかった……そしたら私、こんな風に……」


「大丈夫ですよ。フユユさんくらいの年齢ならいくらでも何とかなります。それにフユユさんがゲーム好きになってくれたおかげで会えたんですよ? もし真面目に生きてたら私達は出会えなかったと思います」


 フユユさんがいなかったら私は死んだ目をしてデバッグし続けていたんでしょうね。多分この子がいなかったら私はこんな仕事をとっくに投げ出していたでしょう。


 助けられていたのは私の方なんです。


「ミゥって……本当ズルい……私の感情こんなにして……こんなの本気になるなって方が無理……」


 フユユさんの気持ちにどう応えていいかはまだ分からない。けれど今は一緒にいたいって思っているのは本当です。だからその涙は大切にしまってください。私はどこにも行きませんから……。

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