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33.どのゲームでもプレイヤーって危険だと思う

 今日もデバッグだ。


 マッドナイトが終わったのでお次はキャンディエリアへと移動。今回は先にマップからデバッグします。ここはやはり人気らしくプレイヤーさんがちらほらと。これは注目浴びないように注意しないと。


 ……ただ、それ以上に気になることがあるのですが。


 大きなゼリーに座って前かがみで手を組んでる悪の組織の幹部がいます。銀色の髪からして四天王の1人でしょうか。物凄い形相で私を睨んでます。その威圧感のせいかプレイヤーさんも逃げるように去ってます。私としてはありがたいのですが……。


「そんなに心配しなくても何も起きませんよ」


「それは私が決める」


 随分ご乱心のようです。この様子ですと今日は黒スライム倒しに行かないでしょうね……。


 プレイヤーがいなくなったので今の内にデバッグします。適当に魔法撃ったり、ソーダの川に飛び込んだり、グミロードを何度も往復します。いつもの奇行です。


「お姉さんこんにちは~」

「今日はスライム投げてないんだ~」

「頑張って~」


 などと声をかけられます。リリースしてからそれなりに日も経ってるせいか私の奇行に見慣れたプレイヤーもいるのでしょうか。軽く会釈しておきましょう。


 チラ。


 フユユさんが頬を膨らませてこっち見てます。そんな感じで怒るんだ。

 ちょっとかわいいかも……。


「そんなに機嫌悪くしないでくださいよ。挨拶くらい普通でしょう」


「別に何も言ってない」


 頬は膨らんだままだから怒ってる……。


「フユユさんだってこれからプレイヤーと関わるかもしれないでしょう? 私が会わないで欲しいと言われたら辛いはずです」


「ミゥの為なら全てのプレイヤーが敵でもいい」


 そんな映画みたいなこと言われても。


「そうされたら私が嫌いになるって言ったら?」


「死ぬしかなくなる……」


 バッドエンド……。


「ごめん。私がどうかしてる。でもミゥが他の人と仲良くしてたら心が苦しい……」


 ジェラシーなんでしょうか。思ってくれてるのは分かっていますけれど。


「安心してください。フユユさん以外とはあんなことしません」


「あんなことって……?」


 皆まで言わせるのか。


「それにずっと私を見ているなら私がそういう人じゃないって知ってるはずですよ。それとも私は信用できませんか?」


 愚直に仕事漬けで生きてはいません。


「その聞き方はズルいー」


 悪い子にはこうでもしないとダメなんです。


 フユユさんは納得してくれたみたいでいつものようにダラダラと眺めるようになりました。


「たすけてー」


 どこからともなく叫び声がします。振り返ると大量の杏仁豆腐犬に追われてるプレイヤーさんがいました。絵面はかわいいのにあれは立ち止まったら即死する奴。


 そのプレイヤーさんは私の方を見てきます。一応周辺確認。うん、誰もいないから私に言ってるのでしょうか。でも私は運営ですから誰かを直接手助けする気はありません。これも勉強だと思ってこのプレイヤーさんにはお亡くなりになってもらうしかないですね。


 私が作業に戻るのでその子は涙目で走っていきます。南無三。

 すると何やら光の矢が飛びました。これは?


「わっ、えっ? すごい全滅してる!」


 瞬く間に杏仁豆腐犬が消滅していました。どうやらフユユさんが倒したそうです。


「あっ、あの! ありがとうございました!」


 プレイヤーさんがお辞儀してますがフユユさんは手をヒラヒラさせるだけです。大したことはしていないと言いたげ。そのプレイヤーさんは手を振って先へと進んで行きました。


「意外ですね」


 困ってるプレイヤーがいたら蹴落とすチャンスとか言ってましたし、やる気もないので絶対無視すると思っていました。


「初心者にお手伝いは結構してたんだよ?」


「それまた意外ですね」


 やり込み勢でしょうから初心者と関わるメリットがなさそうですが。


「初心者狩りする輩をボコる快感が忘れられないんだ……」


 少しでも良い子と思った私が馬鹿でした。いや良い事してるんでしょうけど。


「ミゥも悪い人。あんなに困ってるなら助けるべき」


 そしてお説教されます。


「運営ですから助けるわけにはいかないんですよ。個人を贔屓したらアウトでしょう?」


「えーでも私には協力してるじゃん」


 さっきまであんなにジェラシーだったのに態度変わり過ぎでは?


「オフは1プレイヤーとして遊んでるだけです」


「平日も助けてくれたよ?」


 あなたが半ば無理矢理連れまわしたんでしょう。


「てことはミゥにとって私は特別……。はぁぁ、いい……」


 ほっぺに手を当てて夢現になってます。その妄想力で作家にでもなってください。


 先に進むと黒スライムと遭遇。結構な頻度で出現しますね。


「フユユさん、黒スライムですよ」


「そうだね」


 完全に無関心である。


「経験値ですよ、経験値。美味しいですよ」


 あまりにやる気ないので黒スライムをフユユさんの近くにまで持って行きます。


「さぁ倒してください」


「何の罪もないモンスターを殺す。本当のモンスターは我々人間なのかもしれないね……」


 またフユユさんの哲学が始まってしまった。というかさっき杏仁豆腐犬虐殺しておいてよく言いますよ。


 面倒なので黒スライムをフユユさんの足元に放置して仕事に戻ります。


 倒す気配は全くありません。ぷにぷにして遊んでます。この子の情緒が本当に分からない。


「そんなに私のレベル上げたいならミゥの力であげてよ」


 そしてこの言い草です。


「個人に協力しないと言ったつもりですが?」


「なるほど……。じゃあ全プレイヤーのレベルを100上げようか」


 インフレまったなし……。

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