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31.嫌じゃない。その一言だけで救われたよ

 はー、地獄のデバッグ作業始まるー。平日になった瞬間の憂鬱感がヤバい……。

 マッドナイトの夜の街でスライム投げ中。この後、竹林道に行ってモンスターに魔法撃たないと。あと壁に向かって魔法も……。めんどい……。


「毎日休日だったらいいのに」


 叶わないと分かっていてもそう思ってしまう。


「それだったらずっとミゥと攻略できるのに……」


「私もずっとフユユさんと攻略していたい……」


「ミゥ……!」


「フユユさん……!」


 朝からハグ……。

 はー、あったかい……。

 憂鬱な日でもこの銀髪美少女のおかげでぎりぎり耐えられる……。


「じゃあお仕事するね……」


「もう少しだけ……」


「本当に少しだけですよ?」


「うん……」


 最近この子に抱き付かれても何も思わなくなってきてる……。

 むしろ嬉しいとすら思ってる自分がいる……。

 疲れてるからかな……。


 あ……フユユさん離れちゃった……。

 自分で少しって言ったじゃん……。

 時間指定すればよかった……。


 アイテム一覧。キャンディ。これは普通の飴ではない。フユユさんがくれた、キャンディである。よし、元気出た。仕事するぞ。


「ミゥさー、次のイベントはもう決まってるのー?」


 露骨にネタバレを所望してくるスタイル。


「私も詳しくは知らないんですよね」


 イベント開発は別の人が行いますから、詳しい情報まで知らない場合が多い。無論デバッグ作業があるので事前に教えてくれることもある。でも今回はまだ知らない。


 ただ、そろそろ討伐系のイベントが来そうとは思ってる。というのもデータで見た限り攻略組がじわじわと増えて、今ではようやく半分くらいが攻略を行うようになっている。


 おそらく配信者などの活動のおかげでどんなマップがあるかなどの情報も拡散されてきたのでしょう。だからキャンディエリアのようなマップに行きたい人が攻略するようになったのかもしれない。


 そういう意味では有名な人が配信してくれるのは広告として本当に助かるんですよね。


「フユユさんものんびりしてたら皆に置いていかれますよ」


 既に置いていかれてるかもしれませんが。


「能ある鷹は爪を隠す……」


 実力があるという自信はあるのか……。


「攻略もしてますし結構レベルも上がったのでは?」


「んー。今で5だねー」


 思ったより上がってない……。

 私とパーティ組んでるから経験値減ってるせいかな。


「私の予想では次のイベントはモンスター討伐系だと思います。少しでもレベルが高い方がいいと思いますよ」


 ドロップ率アップだったり、経験値増加期間があるかもしれない。或いはボス級の敵が出現するか。いずれにせよ、多く倒せる人が有利になるのは自明なので単純にレベル差がものを言うでしょう。


「私はジャックポット狙い。次のイベントはレベルが低い方が有利になる」


 とか言ってますけど絶対に動きたくないだけでしょ。


「その理屈なら結局半数は攻略してないのでフユユさんは中の下くらいなのでは?」


「マジレスはやめて欲しい……」


 ごめんなさい……。


「というかまだ半数も攻略してないんだ」


 ヤバ。ポロッと機密情報喋ってしまった。


「だったら余裕でしょ」


 夏休みの課題を後半にするタイプでしょうね……。


 とりあえずこの辺は終わったので竹林道へ移動しましょう。のそのそとフユユさんもついて来ます。


 このマップは不人気なのかプレイヤーはいません。今の内に魔法ぶっぱしましょう。


 ……。


 となりではフユユさんがジッと見てます。


「あの。今から魔法使いますがネタバレは大丈夫そうですか?」


 新しい魔法を習得した時のワクワク感がなくなるかもしれない。


「大丈夫。もう見てるから」


 スライム相手に見られてたの忘れてた。


 なら、お構いなく……。

 出でよ、メテオー。


 ドカーン。


 竹林に隕石が落ちて派手に炎上してます。攻撃範囲も相当広く周辺のモンスターも全滅。

 ただ強力な魔法は詠唱硬直というのが存在して使った後、一定時間動けなくなってしまいます。こういう派手な奴はその硬直時間も長いです。


 フユユさんは特に感慨もなさそうに眺めてます。


「やっぱり弱そうだねー」


 彼女にしたら弱いらしい。スタミナの消費も重いですが。


「結局この手のは小回り効かないと対人だと使えないんだ」


 修羅の人が言うと重みがあります。このゲームに対人は関係ありませんけど。


「ねぇミゥー」


 急に近付いて来たぞ……。

 これは何かされる……。


「私敵じゃない……」


 はっ。無意識に構えてました。


「やっぱり攻略行こうよー」


 腕を引っ張るなー。


「何度も言いますけど仕事なんですよ。私もできるなら行きたいですけどこればかりは無理なんです」


「分かった。じゃあミゥの会社に隕石落とせばいいんだね」


 目的の為なら犠牲を厭わないのか……。

 あと私も死にます。


「今更ですが友達でこのゲームしてる人はいないんですか?」


「引きこもりにそれは効く……」


「あ、いや。ゲームを転々としてたらしいので親しい人達がこれもしてないのかなーと思いまして」


「イベ走ったり協力はしてたけど個人的に仲良くなるっていうのはなかったかな」


 そうなんでしょうか。今やゲームなんてSNSの側面を持ってるので単にゲームをするだけって人が減ってるのも現状だと思います。実際このゲームもそうでしたし。ゲームによってはギルド活動などで交友もありそうですが。


「なんか仲良くなるって重いんだよね。リアルの話題で盛り上がってるの見ると私には無理だなって思った」


 例えフユユさんでなかったとしても知らない話題で盛り上がってる中に入り込むのは勇気がいると思います。


「私はいいんですか」


 普通にリアルの話もしてる気がします。


「真面目な話、好きとか関係なくてミゥといると本当に落ち着くの。自分でも分からないんだけどすっごい落ち着く……」


 そう言ってくれるのは照れ臭いですが素直に嬉しいですね。


「いわゆる波長が合うって奴かもしれませんね」


「つまり私とミゥは以心伝心ってこと……?」


 その拡大解釈は一旦やめましょう。


「ミゥは私と一緒にいてどう?」


「別に嫌ではありませんよ」


「むー。その言い方はあっさりしすぎ」


 本当に嫌なら今すぐにでも追い返しますし、何ならこんな所でデバッグせずに後半のマップからするという手もあるんですよ。そこまで理解してるでしょうか。

 それを口にするのは少し恥ずかしいですね。

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