30.一番知りたいのミゥの攻略法
お菓子の街。
名前の通りここの街も全部お菓子。タルトや果物を模した可愛いらしい建造物が並ぶ。因みに全ての街でマイホームを購入できますが、やはり見栄えの良さからお菓子の街で家を買う人が多いようです。
トッポのような煙突、板チョコの屋根、抹茶やアイスを屋根にデコって、カラーシュガーも忘れずに。ゼリーの窓に、クッキーの扉、囲いはミルフィーユ。トピアリーの代わりに大きなイチゴを置いて完成。
因みに街の物はお菓子とはいえ食するのは不可能。一応重要オブジェクト扱いらしい。悲しい。
「前から気になっててミゥに聞きたかったんだけどいい?」
「変な質問でなければいいですよ」
「普通の質問。このゲームってサブイベント的なのはある?」
本当に普通だった。
「いわゆるNPCを介して的なのはありませんね」
「そうなんだー」
他プレイヤーもいるので同期的な問題で実装は難しかったそうです。
「その代わり街で受注できるクエストはありますね」
いわゆるお使い。特定の敵を倒せだの、アイテムを集めるだの、そういう感じの奴。
報酬は大体お金で、難しめの奴はアイテムもくれたりする。
「クエスト全部達成したら何かもらえる?」
「そこまでのネタバレは教えできません」
そもそも全達成するまでやり込むプレイヤーがこの世界にいるかも怪しい。
「その様子ですとクエストを受けるつもりですか?」
フユユさんならやり込み好きなのでしそうです。
「仕事はしないんよ……」
なぜ聞いた……。
「ミゥ。ちょっと画面開いて」
急に何でしょう。そして私のメニュー画面を必死に叩いてます。
本人ではないのでもちろん反応しません。
しかもアクセスしようとしてるのは運営権限のデータベースだし。
「ネタバレはよくありません」
「ここに攻略サイトがあるというのに……!」
連打し過ぎです。
「フユユさんも攻略見るタイプなんですね」
「ネタバレ系はさすがに見ないよー。ただレアアイテムとかそういう取返しのつかない要素だけはチェックするかなー」
それでクエスト達成報酬を知りたかったのですか。残念ですが教えません。
「そうだ……! ミゥの手を無理矢理使えば……!」
ちょっと人の腕を掴まないの。
やめなさいー。
抵抗したらフユユさんも抵抗する。
なんか取っ組み合いみたいになった……。
「ミゥ……そんな強く握られたら……」
顔を赤くして言わないで……。
「じゃ、じゃあフユユさんが手を緩めてくれていいんですよ……?」
ここで油断したら絶対アクセスされてしまう。
「やだ……こうしてる……」
そんなに手を絡めないで……頭がおかしくなる……。
このままだと埒が明かないので無理矢理抱き寄せて画面を閉じます。
「あ……そんなにぎゅってされたら……」
「攻略やめますよ?」
「行くか……」
やっと私から離れてくれました。
フユユさんは寄り道する様子もなく街を後にします。
街を出た先はキャンディエリアのダンジョン、アイスマウンテンです。
氷の山ではなく、お菓子のアイスの山です。地面はバニラアイスが一面広がっていて、キラキラ光る砂糖、植物のようなグミ、チョコレートの木といったやはりお菓子要素満載のダンジョン。山なので頂上にボスがいます。
早速敵が出現。雪バニラ。バニラアイスでできた雪だるま。ポッキーみたいな手が刺さっててチョコクリームで点目がついてる。ぴょんぴょん跳ねながら接近してる。攻撃方法は氷の魔法。
こんな見た目ですから弱点は分かりきってますが……。
チラ。
フユユさんが歩きながら雪バニラに接近してます。そして拳で殴ってます。
氷柱みたいのを頭上に落とされてますが歩いて避けてます。殴ってます。倒した。
「雑魚が。出直してこい……」
雪だるまさんを煽ってる……怖い……。
この山は単調に登って行くだけですが途中で面倒なギミックが発生します。
吹雪です。正確にはポップコーンの嵐。大量に降り注ぐせいで視界が悪くなります。
そしておそらくこのタイミングであれが来る。来た。
アップルベアという白い熊。右手にはなぜかリンゴを持っている。
そいつがフユユさんに突進した。視界のせいもあって気付けず……対応してますね。さすが。
けれど敵はそれだけじゃない。さきほどの雪バニラもいるらしく氷魔法を放ってます。
しかも尋常なくフユユさんを狙ってます。さっきの煽りが効いたのでしょうか。
ともかく私も援護しましょう。ファイアボールで援護。このマップの敵は大体炎が弱点。
熊さんに命中。でもリンゴ食べられた。多分回復したと思う。
丁度ポップコーンの嵐が収まったのでフユユさんが暴走して全滅させました。
やっぱりこの子強い……。
「一応このバニラやポップコーンも食べれますよ?」
視界が悪くなって敵の数も多いけれど、いつでも回復できるのが唯一の癒し。
まぁ彼女はダメージ受けてなさそうですが……。
すると片手で地面のバニラをすくいます。こっちに差し出してきます。うん……。
「食べたいとは言ってませんが……」
「え……違うの……?」
この子の脳内回路はどうなっているのか。
その後も攻略がサクサク進みます。やはりフユユさんにかかればこの程度は問題ないようで。
それで頂上前に魔法陣があります。目の前は大きな絶壁となっているのでこれ以上登るのは不可能です。
この調子ならボスも楽勝でしょう。
「フユユさん?」
魔法陣に乗らずずっと上を見てます。壁なので登ることは可能ですがスタミナを消費するので必ず途中で落ちてしまいます。
フユユさんはそのまま壁の周りを沿って歩いていきます。
魔法陣から完全に逸れましたが……。
「あった」
何が?
それでマジックアローの矢を上に向けます。
その先には……。
マジか……。
「当たってる……?」
ダンジョンボスの怪鳥さんがぼうっと待ってるのですが頭だけ見えるのでそれを狙われたようです。
データチェック……。
「当たってますね……」
なんという高射程……。
フユユさんは攻撃を続けます。
ボスは死んだのだ……。