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3.ポーション渡したら、ちょっと笑った

 今日もお仕事頑張るぞ!


 なんて気力はもうない。本当しんどい。疲れる。デバッグも飽きた。

 作業は単調だしその癖やること多い。何より私1人というのが孤独感すごい。


 とはいえ給料貰ってる以上働かないと。今日は何をしようかな。

 正直攻略してる人が少ないならダンジョンよりも街をデバッグした方がいいかもしれない。

 万が一入れない建物に入って出れなくなったとか、謎の歪みに迷い込んだとか、それこそクレームの嵐でしょう。


 私の隣には昨日テイムしたスライム付き。小さく跳ねてて無駄にモーション凝ってるな。

 よし、やろう。


 でも街の中で魔法は使えないし、どうしたものか。壁に突っ込んでいくか。


 プレイヤーらを見るとちらほらとテイムしたモンスターを連れてる人がいる。犬猫がやはり人気らしく肩に乗せてる人も。あの巨大狼に乗ってる人もいる。うらやましい。


 街の中でもモンスターを連れられるならそこからバグが発生してもおかしくはない。


「よし相棒。行くぞ」


 試しにスライムを近くの壁にぶつけてみる。ぽよよんと弾かれて地面に着地。そう簡単にはいかないか。とりあえず片っ端からスライムをぶつけていこう。どこかでテクスチャがおかしくなってるかもしれない。



 ※数時間経過※



 やはりそう簡単にはいきませんか。それでも諦めずに続けなくてはいけない。これがデバッグの辛い所。


 ただそれ以上に気になることがあります。


「……」


 なんかさっきからジーっと私を見てるプレイヤーがいるんですよね。しかも銀髪ロングという私がやりたかったアバター。おまけに制服。目は青緑だったのでギリセーフ。

 とか考えてる場合じゃない。なんでずっとこっち見てるの?

 確かにスライム壁に投げつけてるのは一種の奇行ですけども。


「お姉さん。もしかして病んでる系?」


 話しかけてきた。


「ええっと。まぁはい」


 はいって言っちゃったよ。病んでるの認めちゃったよ。


 その子が近くに寄ってくる。名前は……フユユ?


「これあげるから元気出して」


 ポーション渡されました。

 そして肩を叩かれる。


「はぁ。ありがとうございます」


 なんか受け取ってしまった。


 そのままどこか行くのかなって思ったけどその子ベンチに座ってまた私を観察してる。怖い。


「あの」


「私は気にしなくていいから。どうせ暇だし」


 いくら暇だからってゲーム世界で人間観察します? それとも私が哀れすぎて内心笑ってるとか?


 とりあえずここから離れましょう。


 ……。


 うん。付いてきてます。ばっちりと。怖いよー。


「あのぅ。私に用ですか?」


「全然。本当何もないから」


 何もないならどうして付いてくるんですか。暇なんですか。

 ……暇って言ってましたね。


 相手するのも面倒なのでとりあえず仕事の続きをしましょう。壁にスライムを投げつける簡単なお仕事。



 ※1時間経過※



 ……フユユって子、私のそばから離れないんですけど。

 しかも喋らずに見てるだけで怖い。


「ミゥってさ」


 名前で呼ばれた。


「失恋でもした?」


 私、本気で心配されてます?


「えっとー。一応仕事なんで」


「スライム投げるのが?」


「まぁ、そうですね。はい」


 さすがに運営の人間とは言えませんね。でも心配してくれてるようですし誤解は解いておきましょう。


「そっか」


「はい」


 さすがに分かってくれましたか。


「ねぇ」


 まだ何か?


「人生楽しい?」


 いやもう、どれだけ気を使われてるんですか。私そんなにクタクタに見えますか。リアルならともかくここならそうは見えないはずですよ。


「楽しくなかったらゲームなんてしませんよ」


 スライムぺちぺち。わーすごく楽しいー。


「そっかー。じゃあ私もしていい?」


 なぜそうなった。


「いえ、大丈夫です。これ結構コツいるんですよ」


 当てる角度とかタイミングとか。いや知らんけど。


「そう……」


 そう言ってフユユさんは私の観察に戻ります。どれだけ暇なんですか。せっかくのVRゲームなんですからもっと有意義に時間を使ってくださいよ。


「私を見るよりレベルでも上げた方が楽しいですよ」


「遊び方なんて自由でいいでしょー。攻略するのも店でお喋りするのも、ここでミゥを観察するのも」


 最後だけ明らかに異端ですよ。私からしたらあなたも相当病んでますよ。


 はっ。


 まさか昨日草原で魔法ぶっぱしてたの見られたのでしょうか。あんな最上級魔法を連発してたら目を付けられてもおかしくないです。そうでなければスライム投げてる人を観察するなんておかしい。


「何が目的ですか」


 やはり力か。


「目的はー、ないかなー。こうやってボーッと眺めてるだけでいい」


 はっ。


 まさかこの子は別会社のスパイなのでは。私が関係者だというのをいち早く見抜いてその仕事を観察されている。そうでなければおかしい。


「あいにく私は何も喋りませんよ」


「なにが?」


 とぼけても無駄です。私にはお見通しです。



 ※時間が過ぎて行く※



 結局フユユさんはずーっと私を観察してました。やはりスパイ。

 ただ私もそろそろログアウトしないといけないのでお別れです。


「もう終わり?」


 もうって一日投げていたのですが。


「疲れたので今日は終わりです」


「早くない? 寧ろこれからでしょ」


 これからって18時を回ってますが。


「私は夜更かしをしない主義なので」


 残業がない限りは。


「じゃあまた明日」


 またって、この子もしや明日も見に来るつもりですか?

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