表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

29/36

29.食べてるミゥの顔、笑ってくれた

 キャンディエリアには攻略してるプレイヤーが目立つ。攻略というより遊んでいるが正確でしょうか。どこもかしこもお菓子で出来ているので歩いているだけで楽しいマップです。


 ピンク色の空模様。これは降って来そうですね。


「アメだ……!」


 雨ではなく飴が降ってきます。ご丁寧に包装された状態。コツコツと頭にも落ちてきますがゲームなので痛くはありません。この飴もアイテム扱いで拾えます。このマップのお菓子は殆ど拾えてHPを回復できます。なので回復アイテムが欲しかったり、料理目的の収集だったりとそういう人も集まるのでしょう。


 ぽとぽとと落ちてくる飴。地面はすぐにキャンディで一杯になります。現地で回復アイテムが入手できるので他のマップに比べても攻略難易度も低め。


「ミゥー、アメー」


 そんな子供みたいに沢山持ってこなくても。


「あげるー」


 私の手に一杯飴を乗せてきます。

 私は病院帰りのお子様ですか。


 アイテムボックスに収納。


「え……食べないの……?」


 別に食べる必要もないですし。


「私のアメちゃん……」


「HPも減ってませんから」


「分かった……! そのままだから食べないんだ。私が食べさせてあげる」


 人の話を聞こう。

 勝手に包装剥がしてる……。


「はい。あーん」


「しません」


 他のプレイヤーも多いのに恥ずかしい……。


「もしかして口移しがよかったり……?」


 それはもっとやめて……。色々と思い出しちゃう……。


「じゃあそれだけ頂きますから」


 手を差し出しました。


 そしたら口へ指で押し込んで来ましたよ……。

 やめてって言ったのに……。


 メロンソーダ味だ。美味しい……。


 攻略再開。


 他にプレイヤーもいるおかげか敵が出ても倒してくれる人が多いです。あっちでは杏仁豆腐犬をテイムして喜んでる人もいますね。


 おかげでのびのびとした攻略です。私としてはこれくらいゆっくりの方が好きです。


「このゲームって全体的に簡単な方?」


「どうでしょうか。マップにもよると思います」


 全年齢対象なので難易度的にはゆるいかもしれません。

 フユユさんの実力なら少し物足りないのでしょうか。ここがまだ序盤というのもあるでしょうけれど。


「空から即死する巨大飴玉は降ってこないの? グミの中にスライムが擬態してて襲われたら即死しないの? お菓子の中に毒が混じったアイテムはないの?」


 だから思考が修羅なのよ。


「そんなに難しいゲームが好きなのにこのゲームを選んだのですか」


 事前情報の告知でも全体的にポップな感じでゆるい世界観の紹介だったと思います。ゲーム好きの彼女が下調べもせずに選んだとは考えにくいですが。


「んー。やっぱり女の人しかログインできないのに興味あったからかな」


 このゲームの一番の特徴でもありますからね。


「それにあの時はもう気力を失ってたから無意識にこういうゲームを望んでたのかも……」


 だったら私達の出会いもある意味必然でしたか。いや、私の方は完全に上のミスですけど。


 とまぁ散歩感覚でマップを歩いていると先の方にチョコレートの滝を発見します。周囲の崖もパウンドケーキみたいにふんわりした作りになってます。


「ミゥ、見て見て! チョコ!」


 子供のようにはしゃいで走っていきました。

 これでは保護者ですね。


 近くに行くとチョコの池みたいのが出来上がってます。

 フユユさんはしゃがんで指を漬けてペロリと舐めてます。


「甘い……」


 チョコなので甘いのは当然でしょう。


「ミゥも舐める?」


 聞いておきながらもう指突っ込んでるじゃないですか。

 そしてこっちに向けないの。


「そんな意地汚い真似はしません」


「大丈夫。さっき舐めたから」


 まるで話が嚙み合わない。


「ミゥだってお疲れだし甘いの必要でしょ?」


 それはそうですけど。現実で甘いの摂取してたら体がふくよかになるのでこっちで食べた方が合理的ではありますが……。


「アイテムでスプーンあったのでそれで食べます」


「このチョコはどうすればいいの……?」


 あなたが勝手にしたんでしょう。


「私さっき食べたー。これはミゥの分ー」


 聞き分け悪いですね……。

 でもさすがにそのままは恥ずかしすぎる……。


 そうだ。この壁のパウンドケーキを千切って……。


「ここに塗ってください。それでなら食べます」


 ……フユユさん、そんなねっとり塗らなくても。


「はい」


「どうも」


 うん、ケーキにチョコは合いますね。


 そしてフユユさんは壁のパウンドケーキを千切りまくってます。

 何してるのこの子。


「何やってるんですか」


「それでなら食べるって言ったから……」


 常識的に考えて1つって分かりませんか?


 この子に常識を求めるだけ無駄でしたね……。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ