表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

28/129

28.やっぱりいつも通りのミゥが好き

 休日。


 何も予定がなかったとはいえ、無意識にここにログインしている。これが社畜か……。

 いや、前まではそう思っていたのだがここ最近どうも違う気も……。


「ミゥ。今日も遊びに来たの?」


「えぇ、まぁ……」


 この銀髪少女を見ると変な気持ちになってしまう。

 私の理性もその程度だったのかもしれない……。


「大丈夫? 疲れた顔してるよ?」


 首を傾げながら私の顔を覗いてきます。アバターなのに私の心情を見抜かれてるよう……。


 会話が思いつかない。話題が出て来ない。

 何を喋ればいいか分からない。


 私、ダメかもしれない……。


「ねぇミゥ」


「は、い?」


 辛うじて声を出せた。


「本当に私気にしてないから。忘れろって言われてもちょっと難しいけど、あの日のことは掘り返さないから。だからいつも通りでいいよ?」


 まさかここまで気を遣わせていたとは……。私の方が大人なのに今はこの子の方が余程大人に見えます。


「ありがとうございます。でもフユユさんの好意に甘えるわけにもいかないので今日も攻略のお手伝いをします。というかどうせ休日はすることもないので一緒に遊びますよ」


「本当……?」


「はい」


 嬉しそうに抱き付かれます。今それされると結構お辛いのでやめて欲しいです……。


 それに広場でこんなのしてると注目が……。


「攻略に……行きましょう」


「うん……」


 それで草原フィールドから東に進んだ先にあるキャンディエリアへとやって来ました。


 名前の通りここはお菓子を題材にしたマップになっていまして、道端に生えたチョコレートのキノコやタケノコ。クッキーで出来た建物。グミのような道。ソーダ色の川。そして空から降ってくるキャンディ。まるで絵本の世界のようなマップです。


「フユユさん、課金アイテム使いますか? 先日のお詫びもあるので譲りますよ」


 彼女としては少しでもレベルをあげたいでしょう。けれど首を振りました。


「ミゥ。お詫びも謝罪もなし。この際だから言うけど私からしたらあれはご褒美だよ?」


 面と向かって言われると恥ずかしい……。


「だから気にしなくていいよ。あんまり引きずられると私も調子でないし……」


 これでは立場が逆転ですね。私もいい加減目を覚まそう。こんなに気を遣わせては逆に申し訳ない。


「じゃあいつも通りで」


「それでこそミゥ。やっぱりそっちの方が好き」


 簡単に好きって言えるあなたが羨ましいですよ。


 そんな感じで攻略開始。グミの道を歩いていきます。クッションみたいで吸引力があってちょっと歩きにくい。


「今回もマジックアローで縛るんですか?」


「どうしようかな。ミゥはどんな風に遊びたい?」


「私はフユユさんが楽しんでくれたらそれにならいます」


「えー。私もミゥが喜んでくれる遊び方がいいー」


 これをいたちごっこと言う。


「じゃあ好きにプレイしましょう」


「おけー」


 とりあえず私のキャラはレベル調整しておきます。好きにプレイすると言ったものの、あまりバチバチの戦闘はしたくないんですよね。でも後方で見守るムーブしてるとまた気を遣わせるだろうし。よし、決めた。


 そうこうしているうちに敵が登場。出て来たのはチョコレートドラゴン。名前の通りチョコで出来た竜です。ただチョコが溶けてて結構おどろおどろしい見た目です。ドラゴンゾンビっぽくも見える。しかもこれレアエネミーだったような。運がいいですね。


 とりあえず私は自身のプレイスタイルがあるので様子見。

 フユユさんを見ます。彼女も動きません。


 ???


「あの。なんで動かないんですか」


「ミゥだって動いてない。好きにプレイしていいって話だったよね?」


「私は好きに遊ぶ予定ですが」


「私も」


 フユユさんが動いてくれないと何もできないので困ります。

 チョコレートドラゴンがゆっくりと迫っています。


「ねー、ミゥ行ってー。私はお姫様プレイするの。回復しかしないの」


「ちょっと待ってください。私も回復支援に徹する予定だったのですけど」


 ……。


 微妙に気まずい空気。何このすれ違い。というかこの短い間で同じ考えに至りますか。


「フユユさん、戦ってください」


「無理ー。私はお姫様になるー」


 またまたいたちごっこ……。


 そして呑気にしてる間にチョコレートドラゴンが口からホワイトチョコクリームを吐き出します。色のせいかゲロにしか見えない……。


 フユユさんと仲良く命中。そして仲良くヒールし合う。

 どうするのこれ。


「よし、ミゥ。あれをテイムしよう。それであれを介護しよう」


「異論ありません」


 なんやかんやあってテイム。フユユさんの相棒となりました。


 仲間になってくれたので彼女の近くをのそのそと歩いてます。モーション遅い……。

 でも一応はレアエネミーなので強いはず。


 すると前方に杏仁豆腐みたいな犬系のモンスターが出現します。犬なのですばしっこい。


「がんばれー、チョコドラー」


 チョコドラさんはゆっくりと口を開けてゲロッてますが全然狙いが定まってません。動きが遅すぎる。そして杏仁豆腐犬にボコられてます。


「ねぇミゥ。こいつ弱くない?」


 こいつ呼ばわりに格下げされてる。

 ちょっとデータでチェックしてみましょう。


「えーっと。チョコレートドラゴンはHPが高く近くにいるとプレイヤーのHPを回復し続ける能力を持ってるそうです。攻撃はするものの、動作は遅め。魔法は使わない、そうです」


 完全に私達のプレイスタイルと嚙み合っていない。これならワーウルフでもいた方が盛り上がったでしょう。なんならこの杏仁豆腐犬の方が優秀かもしれない。


「こりゃダメだ。こいつも逃がそ」


「一応レアエネミーですが」


「私とミゥの間にモンスターはいらない」


 そう言って逃がしてます。あーもったいないー。


 その後、結局普通に攻略することになりました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ