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22.ミゥってやっぱり優しいね

 華麗なるメイドは死んだ。或いは己の仕事を思い出したのか主のそばから離れなくなってしまったのだ……。


「ミゥ、やっぱり帰ろ」


 この子はいつも突拍子がない。


「なんか攻略に飽きちゃった。街に戻ってスイーツでも食べようよ」


 などと供述しながら私の腕を引っ張る始末。これは重症ですね……。


「せっかく課金アイテム使ったのにいいんですか?」


「うん……キモいメイドさんなんて存在価値ないから……」


 完全に私の失言のせいです。目も病んじゃってるし本当どうしよう。


「もう少し進んだら街が見えますよ。そこまでどうでしょう」


「私は世界を救える英雄じゃなかった……」


 完全にやる気がお亡くなり。


「それに……私ばっかり楽しんでる気がして……ミゥは本当に楽しい?」


 もしかしてそれが一番の理由でしょうか。さっきも大丈夫と言いましたがやはり後ろで見てるだけなのでフユユさんなりに思う所があるのかもしれない。やっぱり良い子。

 仕方ありません。ここは大人らしく手を打ちましょう。


 画面を開いてフレンドメニューをタッチ。そしてパーティ申請を送る。


「え……?」


「マジックアロー縛りなんでしょう? 微力ながら協力します」


 さすがに本来の力だと不味いのでレベルを下げておきましょう。これなら私が関係者だと誰も気付かないはずです。


「嫌なら街に帰りますが」


「やる……!」


 やっぱり銀髪メイドの笑顔は良き……。


 紆余曲折ありましたが攻略再開です。


「でもソロ縛りとも言ってましたね」


「今からダブルに変更する」


 もはや何でもあり。世の中言ったもの勝ちです。


 お化けの敵が出現。フユユさんが前に出ました。もしかして敵の注意引き付けてくれてます? 前に私がボスの攻撃も避けれないと言ったのを覚えてくれていたのでしょうか。だとしたら何ともお優しい。とりあえずマジックアローを使う。


 2人で殴ればさすがに早く倒せますね。その分経験値も減ってしまいますけれど。特に私に経験値が入っても旨味は一切ありません。でもフユユさんにとってはそんなのどうでもいいんでしょうね。ぴょんぴょん跳ねて何とも嬉しそうな顔をしてます。


 2人で攻略したので竹林道を難なく突破。その先に待つのがマッドナイトの街です。どこかに某魔法学校がありそうな西洋チックな風景。窓から光るオレンジ色の光が何とも幻想的。やはり夜の街って雰囲気があっていいですね。


 さすがに最初の街より規模は小さいですがここで身支度をできます。プレイヤーさんもぽつぽつと見かけます。


「どこかへ寄って行きますか?」


「んー。ポーション買っていこうかな……」


 この先にダンジョンもあるので回復アイテムは欲しいですね。小袋みたいなイラストが描かれた看板のあるお店へと入ります。


『ヒッヒッヒ。いらっしゃい』


 こんな街だからか店主のNPCも胡散臭い老婆になってます。売ってる物は特段変わりませんが。


 フユユさんは画面を開いてポチポチと買い物を済ませてます。


「そういえばここって宿もありましたよね」


『そうだよ。休みたいなら2階を自由に使いな』


 街に入るとHPとSPは勝手に全回復する。宿の意味はなさそうに見えますが使うと最大HPと最大SPを一時的に増やせる。おまけにスタミナの回復速度も早くなる。ダンジョン攻略するなら是非とも活用したい。


「課金アイテム使ってますし宿使っていきますか?」


「えっと……夜の宿で……2人きりって……やっぱりそういう……?」


 すごく元気そうなので問題なさそうですね。一足先に外に出て待っていましょう。


「待ってー」


 真面目に相手するとこっちが馬鹿になります。


 街を歩きながら地図を開く。目指す先はマッドナイトのダンジョン。それは街の一番奥にある館がそうなっている。館の深部にボスがいる。今は街の中なので敵もいないので安全です。


「ミゥにこれあげる」


 それはお洒落な容器に入ったクリームコーヒーでした。


「私は自分で持ってますよ?」


「私があげるのに意味あるの」


 前にポーションくれましたしこの子の価値観は分かりませんね。

 せっかくなので頂きます。


 ……クリームとコーヒーはやっぱり合う。


「ところで私があげたマフラーは装備しないのですか?」


 あのマフラーには魔力を増やす効果があったのでマジックアローの威力を増やせると思います。


「自分の力で手に入れた装備以外は使わない。あれはミゥとお喋りする時しかつけない」


 この子は本当にどこまでも……。

 こんなの私じゃなくても贔屓したくなると思います。


「あれ、じゃあ今は身につけていいのかな? つける……」


 フユユさんがピンクのマフラーを装備……。

 メイド服と意外にも合う。ありがたや……。


「ここまでしてくれたなら私も何かお返ししたいですね」


「いーよ。私はミゥが遊んでくれるだけで嬉しいから」


 その言い方はズルいです。もう。


「何かして欲しいことはありますか。変なお願い以外で」


「じゃ、じゃあ宿に……。変な意味じゃなくて、本当に休むだけで……全然変な気持ちはなくて……」


 そんな顔を真っ赤にして言われても説得力ないんですけど……。

 なんかこっちまで変な気分になってきました……。

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