19.ボスなんてどうでもいい。ミゥはどこ?
ボス部屋に到着。遺跡のような造形で無駄にだだっ広い空間です。そして私は1人。
同じボス部屋へ入るには当然パーティを組んでないと入れません。そうでない場合は別個体の別空間でボスと戦います。横取り、みたいな対策でしょうか。
ですからフユユさんは別の所でボスと戦ってるでしょう。
おっと。考えてると空からゴーレムが降って来ました。いや、内部なのに降って来るっていささかおかしいですけどまぁいいですか。
最初のダンジョンボス、ゴーレムロボさん。すごく固そうな見た目ですが胸の当たりに如何にも弱点ですと言わんばかりの赤いコアがあります。実際弱点です。
私の目的はボスとの戦いではなくデバッグ。とりあえずフィールドを散策。閉鎖的な空間とはいえ壁がすり抜けても困るのでスライムを投げましょう。
後ろからゴーレムロボがミサイル撃ってきました。
爆散。スライムが。
離れてるせいかずっとミサイル撃ってきます。
「ちょっと静かにしててください」
デバッグモードでボスの行動停止。はい、棒立ちになりました。
デバッグ再開。
外壁をぐるっと調べましたが特に問題はなさそう。
次はどうしようか。ゴーレムさんのミサイルを魔法で撃ち落としてみようか。
さぁ起きなさい。
ウィィィンって音が鳴って再び動き出します。
魔法を片っ端から試す。あとはテイムしたモンスターも戦わせて……。
コアやその他にダメージ与えて……。
ゴーレムを壁に誘導して押し込んだりして……。
挙動がおかしくならないか確認して……。
やることが、多い……。
※数時間経過※
疲れた……。他に何がある……。
ゴーレムさんはやられては天井から落ちてを繰り返してる。いい加減飽きて来た……。
とりあえず分かったのは隠密系のスキルを使うと時々棒立ち状態になること。
水系の魔法を撃ち続けているとたまに挙動がおかしくなること。
スキルの方は仕様かもしれないけど。
疲れたしこれだけ報告して出ようかな……。
倒すのも面倒くさいからデバッグの力でデリート。卑怯とは言うな。私は疲れてる。
ゴーレムロボを倒すと床に魔法陣が出てボス部屋を出られるようになる。本来なら連続して戦うのは不可能だけど私はズルした。
魔法陣に乗ってワープするとダンジョン前へと移動。そして草原の上でくたばってる銀髪少女を発見する。
「負けましたか」
「勝った」
勝った人間とは思えないくたびれた声です。
「ミゥ酷い。一緒じゃないならそう教えて欲しかった」
行くとは言ったが同じボスとは言ってない。これが悪い大人というものです。
「この程度1人で倒せないと話になりませんよ」
などと挑発してみる。
「あれなら素手でも勝てる」
廃人……。物理的な意味でも……。
「ダンジョンのデバッグは終わりです。私は一足先に街へ戻ります」
ダンジョン1つ終わった程度氷山の一角なのです。終わりは果てしない……。
「ミゥ、抱っこ」
そこまで堕ちたのですか。
「ずっと待ってたのに帰ってこない。放置された。酷い……」
いやまぁ騙したのは悪いと思いましたけど。
「仕方ないですね。お姫様抱っこを所望で?」
死んだお姫様を抱え上げます。
「嬉しい……もうここに住む……」
寝ようとしないの。
「そんなに暇だったのならボスを倒していればよかったと思います」
ダンジョンボスを倒していいのは一度だけという規定はありません。何度でも挑めます。経験値も美味しいので彼女の腕ならかなりレベルを上げれたでしょう。
「ミゥを待つという大仕事があったのだ……」
それは大変だ……。
「ねぇミゥ」
「はい」
「パーティ組も」
遅すぎる提案……。今から帰る所なんですけど。
ていうかその態勢で画面開かないー。前が見えにくいー。
『フユユからパーティ申請が届きました』
許可、拒否って表示されてるけど両手塞がってるのにどうしろと。
「ボス倒したからマップ広くなったでしょ? 一緒に攻略しよ」
自分の足で歩けない人が何を言ってるのか。
「まだ仕事が残っています」
「さっきみたいにデバッグしてるだけでいいから」
ならばなぜパーティ申請を送ってくるのか。魂胆が見え見えです。
「他の人とパーティを組んでください。私には時間がありません」
「ミゥって、もしかして、その……寝取らせとか好きなタイプ……?」
そしてこの謎解釈。この子の頭の中は広大な花畑に違いない。
「で、でも、私ミゥ以外の人とはできない……! あっ、できないって言うのは、その……」
もう知らん。自分で歩け。
ボトーン。
「ぐへー」
女の子がそんな情けない声を出さないの。
「ミゥに構ってもらえるだけで幸せ……」
この仕打ちを受けても満面の笑み……。
無敵か……。