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16.

 月曜日。


「お嬢様ー。おはよー」


 私は悪魔に負けた。月曜という憂鬱感マックスの状況下で目の前に銀髪猫耳メイドがいては誘惑に抗えなかったのだ……。

 さすがに運営に悪いからあとで課金しておこう……。


「ありがとう。頑張るね」


「行ってらっしゃいませ、お嬢様」


 うん……。

 いい……。


「ねぇ、フユユさん」


「なーに?」


 首傾げてる。かわいい。好き。


「ミゥ様って呼んで」


「ミゥ様……?」


 照れながら言わないで……!

 素敵すぎる……!

 この子、プロだ……!


 課金して正解だった。やっぱり世の中お金なんだ。


「尊い……」


「ミゥ様……ハグして……?」


「しちゃう……」


 幸せ……。仕事なんて忘れてずっとこうしていようかな。

 生きててよかった……。


「ありがとう。もう行くね」


「え……?」


 抗うんだ。誘惑に勝て。仕事と彼女、どっちが大事なの?


 そんなの……彼女……。


 ダメだ、本当に負ける。仕事しよ……。


 スライムぽよよーん。手に力が入らない。


「ミゥ様、がんばって」


 やる気出た。私、できる。


 がんばろう。



 ※数時間経過※



 月曜は頑張れないけどメイドフユユさんのおかげで今日は調子いい。やはり目の保養というのは大事です。


「ミゥ様~」


 ほら、応援してくれる。なんて健気。


 ……。


 今更だけどメイドに応援されてるってなんかおかしいような。普通メイドが頑張るのでは? 細かいことはいっか……。


「ミゥ様。聞いて欲しいの」


「なんですか」


「一緒に攻略しよ……?」


 そう来ましたか。


 普段なら絶対断れるのに、この最強の属性を手に入れた彼女の地位は天よりも高くなってしまったのだ。これは、辛い……!


 理性を保ちなさい……!


「だ、だめです」


「お願い。私、1人だと怖くて行けない……」


 そんな弱々しい声で言わないで……。


 けれど今までどんな困難も乗り越えてきた。あの残業地獄を越えた私なら!


 チラッ。


 無理……!


 可愛すぎる……!

 私はこのまま負けるの……?

 いや、だから課金したんだけど。


「ねぇ、ミゥ」


 ありゃ?


「なんですか?」


「もしかして普段の私嫌いだったりする?」


 素面に戻って真剣な目で言われました。すごく怖い……。


「あ、や。これは、あれです。私の趣味であって、決してフユユさんがどうというのではなく、はい」


 何を言ってるんだ私……。


「いつもならすぐ断るのに今日は躊躇ってる。やっぱりいつもの私ってウザい?」


 そして悪い方向に進む。自分の理性の弱さをこれほどまでに呪いたくなるとは。


「フユユさん。誤解です」


「別にいいけど。私ちょっと悲しいかも……」


 わーん。そんな顔しないでー。


「分かりました。猫耳もメイド服もいいです。着替えてください」


「いいの? 好きなんでしょ、これ?」


「好き……ですが、フユユさんが悲しむのはもっと辛いです。心が痛むんです」


「ごめん。そんなつもりで言ったんじゃなくて」


「分かってます。私も大人なのに理性が甘かったです」


 頭を撫でてあげます。少しだけ笑ってくれました。


「着替え、ないんですか?」


「アイテム貰ってるから今日くらいはこれでいるよ」


 なんてお優しい。やっぱり女神です。


「口調はいつも通りでいいですよ。名前も呼び捨ててください。やっぱりその方が落ち着きます」


「そっか」


「はい」


 これで一件落着、でしょうか。


「でも、ミゥがして欲しいって言うならするよ?」


 うっ。悪魔の契約……。


「アイテムもらうけど」


 課金必須……。


「いいえ、大丈夫です」


「本当? 毎日してあげるよ?」


「とか言って本当はアイテム欲しいだけなのでは?」


「それもあるけど、やっぱりミゥが喜んでくれたら私も嬉しいのも本音だから」


 そういうの本当ズルいと思います。また悪魔に負けるじゃないですか。


「ありがとうございます。けれど毎日はダメです」


「どうして?」


「こういうのはたまにするからいいんですよ。普段のフユユさんを知ってるからこそギャップもあるからいいんです。毎日してたら価値は暴落です」


 メイド服を着慣れてない感じがいいんです。


「ミゥってさ、メイド喫茶とか通ってる?」


「人生で行ったのは一度だけです」


「本当?」


「はい。理由は銀髪がいなかったので」


「ここ日本……」


 染めるしかない……。

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