15.
休日。
最近四六時中ガールズオンラインの世界にいる気がする。そのせいかたまに夢の中でもこの風景を見る時がある。私はデスゲームに囚われているのかもしれない。
そして私と同じくデスゲームに囚われた哀れな少女がいる。全てを諦めたような顔でベンチに佇んでる。
私達は手をあげて挨拶を終えた。
死線を乗り越えた仲間だからこれで意思疎通できるんだ……。
「今日も会いに来てくれたの?」
「そういう気分だっただけです」
「別に無理しなくていいよ? ミゥも休みくらいゆっくりしたいでしょ?」
絶望の中でも希望を見出す少女の言葉に私は涙したのだ……。
「大丈夫です。無理はしてません。どうせすることもないので」
友達は県外で働いてる人が多いから中々会えないし、中には結婚して会う機会が減ってる人もいる。うん、考えてて悲しくなってきました。ここに来て正解だったかも。
「ミゥってさ、素直じゃないよね」
「大人になると上手に騙す力が必要になるんですよ」
「じゃあ私は子供だから甘えちゃおー」
すぐ抱き付くの禁止ー。
「あの宝石のおかげで結構お金溜まったんだー。暇なら買い物に付き合ってくれない?」
まずは離れて欲しい。
「今日はやけにアクティブですね。中身別人じゃないですよね?」
「私はいつでもアクティブなんにゃー」
口調もおかしい。怪しい。
「それで買い物ってどこへ行くんですか?」
「そろそろ新しい服買おうかなーって」
あんなに堕落してたのに見た目を気にし出しただと?
やはり偽物なのか?
「攻略の為にスキルでも買いに行くのかと思ってましたが」
「それはキツい……」
ああ……これは本物でした。
街をぶらぶら。
そしたらショーケースに服が飾られてる店を発見。早速入店します。
『いらっしゃいませ♪』
相変わらずのAI音声のNPCちゃんが出迎えてくれます。店内にも色々と服が飾られていて、種類も豊富。武器の要素がない分、ボスの素材などは服やアクセサリーなどの衣装や装飾に変換できるようになっている。だからアプデの度に衣装がじわじわと増えてたりします。
「何か欲しい服でもあったんですか?」
「んー。ミゥは何がいいと思う?」
いきなり私に聞くのか。
「銀髪と言えばメイド服でしょう」
試着設定でメイド服を着て……あぁ、神が降臨された。アーメン……。
「祈り……?」
「これは敬意です。銀髪メイドへの」
「メイド服好きなの?」
「それは違います。銀髪の、メイド服が好きなんです」
「ミゥも徹底してるねー」
そこを履き違えたら全てが狂ってしまいますので。
「じゃあさ。こういうのはどう?」
フユユさんは何やらアクセサリーで頭に猫耳を……。
女神よ……。汝の信者はここに……。
「跪くのか……」
「それが女神への礼賛です」
「猫耳メイドが好きなんだ?」
「銀髪の、猫耳メイドです」
「あーうん……」
はっ。私としたことが理性をどこかへ置き去りにしてしまったようです。
「じゃあこれ買お」
「え、欲しいのあったのでは?」
「私が欲しいのはミゥの笑顔だから……」
本物の女神でしたか……。
そんなわけで銀髪猫耳メイドが爆誕しました。
「似合ってる?」
店を後をにしてフユユさんがヒラヒラと見せびらかしてきます。
正直直視できません。日陰者には眩しすぎる。
「ええ、とても」
「そんなに喜んでくれたなら奮発したかいあったかも」
「本当によかったんですか?」
お金なんていつ必要になるかも分からないのに、こうもあっさり使うと本当に攻略には興味がなくなったのでしょうか。
「お金なんて攻略し出したらいくらでも効率のいい稼ぎを見つけられるよ。でもミゥの笑顔は今しか見れないでしょ?」
なんて健気……!
「私は今とても幸せです……! せっかくメイドなのでお嬢様って呼んでくれませんか?」
メイドがそばにいるなら誰しもが憧れる……!
するとフユユさんは手を差し出してきます。はてな?
「それは?」
「オプション料」
まさかのサブスク制度。
「さすがに現金なんて言えないからそうだなー。あの有料の課金アイテム欲しいなー」
経験値増量アイテムのことですか? ほぼ現金じゃないですかー。
まさかここまで計算して仕組んでいたのですか?
女神は邪神になってしまったのだ……。
「それはできませんよ」
「いいの? 今だけだよ? にゃおー」
あざとい仕草で私を誘惑する……! こやつ自分の強みを分かっている……!
理性を保ちなさい、私! ここで屈しては相手の思うつぼ!
いやいや! ここで諦めたら一生してくれないかもしれない……!
この子の性格だと無気力全開だから今だけだろうし……!
どうする……。
どうする……!
「さすがに支払えません。諦めてください」
「むー。仕方ないかー」
勝った……! 私は悪魔に勝ったんだ……!