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140.いつもの私達

 平日



 今日もデバッグ作業。異動が決定したとはいえ、今週はまだこちらでの仕事。引継ぎのデータなどもまとめ終わってるし、あとはいつも通り作業するだけ。


 ガールズオンラインにログインすると広場でいつものベンチで銀髪少女と出会う。


「おはよ」


「おはようございます」


 軽い挨拶を済ませて一緒に街を歩き出す。


「まだログインしてるんですか?」


 デバッグのバイトも終わって、攻略も終わって、もう無理してログインする必要もありません。大学受験の為に勉強してると思ってましたが。


「ログインしないとミゥに会えない」


 それを聞いてクスリと笑ってしまう。まるで一番最初に会った頃みたい。あの時とはもう、全然意味が違うでしょうけど。


 フユユさんと一緒に草原フィールドへと来ます。一番最初のエリアでとてつもなく広大な場所。新規のプレイヤーさんも未だに流入していて熱心にスライムを倒しています。


 リリース初期なんて誰も攻略していなかったのに感慨深い。


「ここでデバッグ?」


「そうですね」


 フユユさんにある程度任せていたものの、全域は終わっていない。そこまで細かいチェックは必要ないでしょうが念のためですね。スライムを呼び出して適当に草原を歩きながら地面にスライムを投げつけます。懐かしいぺちぺち作業。


 黙々と作業を続けて、少し後ろではフユユさんがジッと見ています。この感覚も久しい。

 最初は変な子に絡まれたなって思っただけだったけど、まさかこんな関係に発展するなんてあの頃は思いもしなかった。


「このゲームのプレイヤー平均レベル、少しはあがった?」


「そこそこには上がってたと思います」


「今度も平均をあげるのに貢献してしまったかー」


 レベル2だったプレイヤーが何か言ってます。


 スライム投げは続くよ、どこまでもー。


「やっぱりそれ見てるの癒しかなー」


 スライムを投げてるのを見るだけなんて本当何が楽しいのか今でも分かりません。


「今なら配信したら有名配信者になれるよ。スライム投げマスターだね」


「一夜限りの配信になりますね」


 異動が確定してるのに遅すぎる。


「私の心には今までミゥが投げたアーカイブが全部残ってるから問題なし」


 それはさすがに……いや、この子ならあり得そう。



 ※時間経過※



 やはりスライムを投げ続けるだけというのは精神を凄まじく持っていかれます。いかにフユユさんが一緒にしてくれていたのが救いになっていたか実感しました。もう二度とこんなデバッグはしない……。


「お姉さんお疲れだねー」


 フユユさんが近づいてポーションを渡してきました。


「ありがとうございます」


 休憩ついでに一杯頂きます。このほんのり甘い味が癖になる。


「ミゥに聞きたいんだけど」


「なんでしょう?」


「次ってどんなゲーム作る予定?」


 いつものネタバレ所望スタイル。しかもゲーム内のアプデ以上に禁忌の領域ですよ。


「それを言ったら私が社会的に終わります」


「えー。どうせ何度も終わりかけてるじゃん」


 確かにそうですけど……! これは私のプライドの問題なんですっ!


「情報が解禁されるまでお待ちください」


「今度もこんな風なゲームがいいなぁ。ミゥと一緒に冒険できる奴がいい」


 それに関しては私も同意ですけど。


「わざわざ私の会社のゲームじゃなくてもいいでしょう? 面白いゲームなら他に沢山ありますし、それをしたらいいと思います」


「ふっふ。ミゥ、言ったね? じゃあお互い時間に余裕ができたら徹夜ゲーム三昧コースよろしく」


 あ。油断して失言しました。しかも完全に私が死ぬやーつ。


「今のフユユさんに徹夜ができるか見ものですね」


「いいね。先に寝落ちした方がログアウトして相手を好きにできる権利を得られる、と」


 何そのルール。ちょっと本気で頑張りたくなる。


 するとフユユさんが草原に寝転がってしまいます。


「飽きたー! ミゥ構ってー」


 草原の上をごろごろ転がる始末。急に何やってるの、この子。


「かわいい恋人がいるのに仕事に夢中になるなんて酷くない?」


 唐突なダル絡みフユユさんになってしまいました。


「だったら勉強でもしていたらいいのでは?」


「勉強ー、飽きたー」


 急に学生らしくならないでください。


「私の相手しなくていいの? 勝手にどこかへ行ってあのプレイヤーとイチャイチャしよっかなー」


 少し離れた所でモンスターをテイムしてるプレイヤーをチラチラ見てます。


「どうぞ」


「へー、いいんだ? ミゥの見える所でイチャつくよ?」


「おそらく私よりフユユさんのメンタルがやられると思いますよ」


「ふぅ。やっぱりやめるか……」


 出来もしない提案はしない。それに尽きます。というかこのやり取りなんか懐かしいですね。


「ミゥが悪いんだー。私を無視してスライムとばっかりイチャつくからー」


「だったらフユユさんを投げましょうか?」


「え、いいの……?」


 そんな恍惚な眼差しされると困惑します。投げられてもいいんだ……。いや、変態だからご褒美でしたか……。


「リアルで会った時は本当にお願いしますよ」


 一緒に食事に行った時にこんな変態な会話されては私が爆発する。


「それに関してはミゥの方が酷いの多いと思うよ。寝ぼけキスの話する?」


 忘れてくれたと思ったのにまだ覚えてるの本当怖いよー。これは墓場まで持っていかれると思います……。

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