表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

137/145

137.トライアンドエラーだね

 さて、またしてもウォーターエリアへと戻って来ました。やはり深海という特性だけあって他のマップよりも難しい。おそらく純粋なPSが求められるのは竜の渓谷や魔界でしょうが、ディープシーは難易度のベクトルが違う。策が必要でしょう。


「どうしたものかな」


 フユユさんが考え込むようにしてメニュー画面を触っています。


「ミネやナツキさんに協力を頼みますか?」


 PSの高いあの2人ならば攻略もかなり楽になるでしょう。


「それも考えたんだけどミネさんもナツキも一応はライバルだから先を越されたくないんだよね」


 一番を目指すという目標はまだ諦めていないようです。確かにあの2人ならばすでに隠しマップもそれなりにクリア済みになってるかもしれません。


「よし決めた。ちょっと試したいことあるから1人で行ってくる」


「それなら私も行きますよ?」


「本当少し知りたいだけだから。それに……いくらゲームだって分かってても、ミゥが食べられる所は見たくないから……」


 この子にとってはゲームもリアルもきっと変わらないのでしょう。関係性がどんなに変わってもやっぱりフユユさんだ。その気持ちが私の心を軽くさせる。


「分かりました。私はここで待っています」


「すぐ戻って来る」


「お気を付けて」


 フユユさんがレインボーブリッジの方へ泳いでいきます。


 さて、私もただ待っているだけなのは癪ですね。ここで泳ぎの練習でもしていましょう。

 そもそもディープシーの難易度を高くしている要因は海マップが序盤のウォーターエリアしかなかった点です。そのせいで殆どのプレイヤーは水中の操作感を忘れてモササウルスの即死にやられてしまう。


 そういえば昔フユユさんが変な動きしてたような。あれってどうやるんだろう。なんかこう、逆さまになって少しずつ泳ぐ感じで……。うーん、無理。


 私にはあの子のプレイスタイルは模倣できないし、やはり自分のやり方を極める方がいいですね。


 ここは敢えてメタ的観点で逆算しよう。どんなに難しくても必ず正攻法があるはずです。そうでなければゲームとして成り立たないし、そんなのが世に出れば炎上して糾弾されるだけ。


 モササウルスや深海の主も一見理不尽に見えて、必ず正解の糸口がある。こういうときこそ、初心に帰るべきかもしれませんね。モンスターの弱点、魔法は……。



 ※時間経過※



「ただいま~」


 フユユさんがリスポン地点に転送されて戻って来ました。思ったより遅かったので結構善戦したのでしょうか。


「色々と分かったことがあるよ。やっぱり水中適応のモンスターは必要」


「ふむふむ」


「問題はボスの即死攻撃なんだよねー。回避できないこともないけど、安定しないっていうか」


 確かにあんな巨大な魚の口から逃げるのは難しいでしょう。


「バケバケを連れるのは?」


「バケバケだと即死回避は一度切りだからボスを削り切る前に負けるかも。それに普段の火力要因としても少し心もとない」


 それは一理あります。


「だったら回避できるようにすればいい、と」


「ミゥ。考えがあるの?」


 テイムモンスターを入れ替えてタンポポの花を咲かせた植物モンスターを呼び出します。空中植物庭園にいたタンポポシードというモンスター。


「あっ、その手があったかー」


 このモンスターは綿毛を飛ばして相手の動きを遅くさせられます。ボスにどこまで効くかは分かりませんが試す価値はあるかもしれない。


「でもそれなら都合いいかも。実は宝石獣連れていく予定だったから鈍足デバフは助かるんだ」


「宝石獣ですか? ですがそれだとモササウルスが……」


「ふっふー。そこは任せなさーい」


 何か考えがあるようなのでここは尊重しましょう。


 テイムモンスターの編成。私がリオプレウロドンとタンポポシード。フユユさんはバタフライドルフィンと宝石獣。初期とほぼ同じ編成。さぁ出発。


 暗い深海。何度来ても不気味に感じます。海の中を進んでいると早速大型魚類のモササウルスが徘徊してます。


「ミゥ、インビジブルで姿消して。こいつらは相手しない」


 無視してボス狙い、という感じでしょうか。とはいえ、インビジブルの効果も絶対的なものではありません。あくまで視認されにくくなるというだけであって、足音や魔法の動作、水中ならば泳いでる音を消せない。


 でもフユユさんに考えがあるなら私は従うのみ。スキルを発動させて姿を隠します。そしてそのままフユユさんの後を追いました。


 しかしやはりモササウルスはこっちに気付いて後ろから追ってきます。別の個体も同様に迫ってきてます。


 それでもフユユさんが振り返る様子はない。おまけに光魔法『スターライト』まで使って存在感をアピールしています。一体どういう意図が?


 数分もするとモササウルスの群れに追いかけまわされて振り返ればホラゲと間違えそうなくらい恐ろしい絵面に。そして、前方から巨大な影が見えました。


 深海の主がやってくる……!


 すぐにタンポポシードを掴んで綿毛を飛ばさせる。動きが少し遅くなった……!


 でもボスの動きを遅くしても後ろから迫ってるモササウルスが……。


「ミゥ、私にスピードアップのバフを使って。それで今の内にボスから離れて」


 黙って支援魔法『スピーダー』を使ってフユユさんのバタフライドルフィンの速度アップ。

 すると急旋回してモササウルスの群れへと突っ込みます。ともかく私はボスから離れて一時離脱。


 遠くから眺めているとフユユさんはモササウルスを惹き付けてそのまま深海の主へと……。

 なるほど、そういうことですか。


 フユユさんがボスの口元ぎりぎりまで接近してそして一気に上昇します。深海の主の動きが再び戻る。主によって雑魚敵だったモササウルスは全て捕食されてしまいます。フユユさんはバフのおかげで何とか離脱。


「ふー。うまくいった」


「あとはボスのみですか」


「うまくいくといいけど」


「あなたがいる。私がいる。なら、何も問題ないでしょう?」


 するとフユユさんが微笑む。同時に深海の主の海中を轟かせる悲鳴に近い咆哮をあげた。

 ここからが本番です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ