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120.私の夢は……

 翌日



 今日も当たり前のようにログイン。SNSではまだ私の話題がチラホラ出てたので安心するのは当分先のよう。嘆いても仕方ないので仕事をしましょう。


 街の広場を見渡します。が、いつものベンチにあの子が座ってません。珍しいこともありますね。今日はバイトが休みなので特に問題はありません。


 ……。


 ……気になる。


 す、少しだけログイン状況の確認をしよう。じょ、上司としての責務です。はい。


 ……IDで検索するもログインはしていないようです。寝坊でしょうか。それなら仕方ありません。先に仕事をしていましょう。一応、彼女のメール宛てにデバッグの場所を書いて送信っと。これでよし。



 ※時間経過※



 ホットアイス山脈のダンジョン、氷の城のデバッグを続けていますが一向にあの子が来る気配はありません。あの子がゲームにログインしないなんてあり得るのでしょうか。もしかしてリアルで何かあった……?


 それとも今日はバイトで休みだから私に気を遣ってログインしていないとか……。

 昨日私が理性崩壊しそうになって接近したから、フユユさんが物理的距離を置いた可能性があります。うぅ、私が馬鹿したせいでフユユさんに余計な気を遣わせてしまった。あの子だって我慢してるのは同じなはずなのに私の馬鹿ぁ……。


 メール画面を開いても何も連絡がなく溜息が出そうになります。かといってログアウトしてラインで聞くのも躊躇う……。


 ……。


 ……。


 落ち着け、私。何をイライラしてる。フユユさんに少し会えないくらい今までもあったじゃないですか。で、でも最近イチャイチャもできてないし、我慢が限界を迎えつつあるというか。ああ、私はダメな大人です。


 この怒りをスライムに乗せて壁にぶつける。ぺちーん。


 全然収まらない……。こうなったらやけくそです。スライムを連打して憂さ晴らしします。



 



 仕事が終わって自宅へと帰って来ました。結局、フユユさんがゲームにログインしてくることはなかった。スマホを見てもラインに連絡はなし。さすがにここまで何もないのはあり得ない。心配なので通話しましょう。


 ……。


 ……。


 無駄にコールが長い。なぜか嫌な予感がよぎる。リアルで何かあった……?

 親と揉めて家出したとか……。散歩に行って事故で入院したとか……。


 悪い予感ばかりが頭の中でぐるぐる巡る。コールが長引くほど冷や汗ばかり流れる。


 するとコールが止んだ。


「フユユさん!」


 声が大きくなってしまった。


「み、ミゥ……?」


 よかった、あの子の声だ。一先ず無事そうで安心しました。


「フユユさん、大丈夫ですか? 生きてますか? 何かありましたか?」


 早口で問いだしてしまっている。この子の状況を一刻も早く知りたい。最悪は今からでも助けに行く覚悟はある。


「あ……うん。だい、じょぶ。ごめんね、心配、かけた……」


 明らかにいつもと様子がおかしい。これは迷ってる時間はなさそうです。


「フユユさん、今いる場所を教えてください。今からそちらへ向かいます」


「あっ……本当大丈夫だから。ごめん、勘違いさせて。ちょっと気持ちに整理つかなくて」


「何かあったんですか?」


 この様子だと悪い事があったのは確かでしょう。やはり行くべきかもしれません。すぐに出て行く準備を……。


「えっとね、ミゥ、聞いて、欲しいん、だけど」


「無理して言わなくていいですよ。辛いなら後日でもいつでも聞きます」


「ち、違うの。えっと、実は……試験に受かってたの」


「はい?」


 家から出て行こうと扉に手を伸ばしたのが止まってしまいます。


「高認の試験合格してた」


「え。やったじゃないですか。おめでとうございます」


「う、うん。ありがと」


 でも合格したにしては喜んでいないような気もします。やはり別の何かがあったのでしょうか。


「言いたくなければ構わないのですが、そのことで何かあったのでしょうか?」


「本当にそれだけ……。なんかね、合否知って、実感なくて、これって現実なのかなって、思って。なんか受け入れられなくて、それで1日ポカンとしてて……」


 ありゃ、りゃ? 全部私の思い過ごし?


「現実ですよ。だってフユユさんあんなに勉強頑張ってたじゃないですか。だからその結果が付いてきただけですよ」


「そうかな……」


「そうです! あなたを間近で見ていた私が太鼓判を押しましょう。フユユさんは頑張った。だから、おめでとうございます!」


「うっ、うっ……。そか、そっかぁ! ミゥ……!」


 フユユさんは現実に引き戻されたみたいに急に泣きはじめました。きっと今まで努力が報われた経験がなかったのでしょうね。だから初めての喜びで戸惑っていたのかもしれない。


 フユユさんはただ泣いていた。何も言わず黙っていましょう。それでも祝福はしたい。


 それから5分ほどしてフユユさんは落ち着いてきたようで、声が穏やかになっていました。


「ごめん……ちょっと取り乱したかも……」


「いいえ。嬉し泣きならそれは良い事です」


「ありがと……でも、そっか。受かったんだ……」


「そうですね」


「でも、これでようやくスタートラインだよね……。まだ大学受験もある」


「フユユさんならきっと大丈夫ですよ。この結果に自信をもってください」


「うん……」


「ちなみに志望大学は考えてますか?」


「そのことでミゥに聞きたいんだ」


「なんでもどうぞ」


「______」


 その言葉に私は一瞬言葉を失くしました。

作中の時間の流れから高認の合否が1週間くらいで発表されてる感じになってますが実際は1ヵ月ほどかかるそうです

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