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114.むしろ怒って欲しい

 休日



 今日もガールズオンラインにログインしてモノクロの安置エリアへと来ています。白と黒のコントラストが映える背景に、白い床、黒いベンチとちょっと大人な雰囲気があります。今回もフユユさんと隠しマップ攻略なのでおそらくあそこでしょう。


「ミゥってさ、怒らないよね」


 仲良く歩いていたら何やら言ってきます。今日は髪型をワンサイドアップにしてカーディガンとミニスカートという可愛い格好をしています。かく言う私も髪型をナチュラル外はねにし、黒のタートルネックにロングスカートにしてみました。こうして並ぶとデートっぽくもあります。


「急になんですか」


「だってさー。試験落ちても慰めてくれるって言うし、大抵のこと受け入れてくれるじゃん」


「試験の結果に関してはそこまで心配してませんけどね」


「ほらー。そうやって聖女ムーブばっかりするからさ、ミゥに怒りの感情があるのか疑問なんだよね」


 そう言われましても元々感情表現が得意ではありませんし、昔から怒ることも殆どありませんでした。


「これは恋人として由々しき問題だと思います」


 なぜ丁寧口調。


「どうしてですか?」


「本音を隠して一緒にいたらいつか不満が爆発して大変になるってどこかで見た。だから今の内にミゥの怒りを受け止める」


 間違ってはいないけれど、そんなこと言われても困ります。


「フユユさんに不満なんてありませんよ。本当です」


「どうかな? たとえば私が試験に落ちてグレてニートになったら? やけになって警察のお世話になったら?」


「その時はどうすればいいのか一緒に考えて支えます」


「本当ミゥって無敵で聖人すぎ」


 そしてなぜか私が怒られます。


「よし決めた。今日はミゥの怒りを引き出す」


 またわけのわからない遊びを……。


「じゃあ行くよ。ミゥはキノコの山とタケノコの里どっちが好き?」


 完全に争う気満々じゃないですか。


「どちらも好きですよ。職場などで食べる時は手が汚れにくいキノコを食べますけど、家でいる時はコーヒー飲みながらタケノコのサクサク感を楽しみたい派です」


「うわ。それどっちも敵に回す奴じゃん」


 そんなこと言われてもどっちも美味しいからどっちも食べたいのは普通だと思います。


「そう言うフユユさんはどっち派なんですか」


「トッポしか食べないけど?」


 あなたの発言の方がよほど爆弾じゃないですか。


「これじゃあ火種にならないかー。よし、じゃあこれだ」


 フユユさんが私に接近して髪を触っています。外にはねた所を手で抑えて真っすぐにしようとしています。無論、ゲームなので勝手に戻ってしまいますが。


「今度はなんですか」


「髪触られるのって嫌じゃん。ミゥも触ったら怒ると思って」


 現実ならともかくVRで触られた所で嫌悪感なんて全くないです。


「相手が嫌がるという認識がある時点でフユユさんがリアルでするとは思えませんね」


「くっ、孔明か……」


 自分で墓穴掘っただけでしょう。


「ねー、どうやったら怒るの? 昔はミネさんと喧嘩したんでしょ?」


 私の腕を振り回さないー。


「そりゃあ喧嘩しましたよ。私が攻略できずに詰まって何日も試行錯誤していた所をミネが勝手にクリアしてあった時は本気で怒りましたね。ミネはよかれと思ってやったそうですがあの時は子供だったのもあったのでかなりショックを受けました」


「そういうのだよ。それで姉妹のガチ喧嘩?」


「いえ。それから一週間は口を聞きませんでした。ミネがセーブデータを消してそのボス前まで攻略してようやく仲直りしました」


「うわー。これ怒らせたら一番面倒くさいタイプだー」


 今となれば大人気なかったとは思っています。でもあの時は本当に勝つ為に思案していたので喪失感がすごかったんです。


「もういいでしょう。早く攻略に行きますよ」


「はーい。じゃあテイムモンスターから決めよう」


 メニュー画面を開いて考える。次のマップは移動できるモンスターが欲しいのでこの子かな。


 呼び出したのは白くてもふもふな巨大狼さんのフェンリル。キリッとした青い目と大きな尻尾が特徴。


「フェンリルかー。じゃあ私もそれにしよ」


 フユユさんもフェンリルを呼び出します。もふもふが増加。


「私はこいつも呼ぼう」


 フユユさんは額に宝石のあるウサギ、宝石獣を呼び出します。地味に気に入ってません?


 私はバランスを考えて回復かバフの使えるモンスターがいいでしょうか。悩みますね。


「そいえばミゥはあれ連れていかないの?」


「あれとは?」


「スライム愛好家なのに攻略に連れないんだなーって思って」


 あれは仕事で投げてるだけであって、愛好家も何もありませんが。それにスライムなんて最弱すぎて隠しマップに連れた所で役にも立たないと思います。


「さすがにスライムは……」


「たまには連れて行ってあげなよー。ムーちゃん泣いてるよ」


 なんですか、そのあだ名は。ちょっとかわいいけど。


「これで負けても知りませんよ」


「中間地点までなら大丈夫でしょ。余裕余裕」


 若干フラグに聞こえますがまぁいいですか。フユユさんがいれば問題ないでしょう。スライムを呼び出します。ぽよよんと丸い軟体生物が降ってきます。


「さて行こっか」


 フェンリルに乗ります。ロングスカートなので跨れないので座る感じに乗りましょう。スライムは私が抱きかかえます。フユユさんも宝石獣を脇に抱えてます。扱いが若干気になりますがいいですか。


 そしてモノクロのダンジョンへ。


 霧がかかって何も見えませんがフユユさんがマジックアローを明後日の方角に連発。すると霧が晴れる……。こわ……。ミストマイコニドの位置覚えてる……。


 ブックを使って黒の庭へ。そして庭のあちこちに大穴があり、そこからブラックアントが出てきます。無限湧きする厄介な敵。


 フユユさんはそれらを無視して1つだけ変な場所にある他より小さめの穴に飛び込みました。私も続きます。今度はどんな攻略になるでしょうか。

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