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111.なにか触れたような……?

 平日



 休みの日は本当に過ぎるのが早い。とはいえ平日になったならば仕事をしないと。

 広場へログインすると、周囲を見回します。するとフユユさんはベンチに座って少しウトウトしていましたが、私に気付いたら立ち上がって駆けつけてきます。


 が、どこか足取りがふらついてるように見えます。


「そんなに走らなくても逃げませんよ」


「ミゥに触れたくてー……わっと」


 ほら言ったそばからバランス崩してます。すぐに手で支えてあげました。


「まるで初心者みたいな動きでしたよ」


「ミゥに合法的に抱き付く算段だったのだ」


 コケなくても抱き付いていたと思います。ログイン広場で目立つのでゆっくりと離します。


「今日はフユユさん、デバッグお休みでしたね」


「うん。勉強する」


「私はクリスタル迷宮へ行きますが……」


「毎回聞くけど、それ意味あるの?」


 確認ですよ確認。社会人になるとこれが大事なんです。



 ※クリスタル迷宮※



 水晶の洞窟へとやって来ました。つい最近来たばかりなので久しぶりという感じはないですね。フユユさんは手ごろなクリスタルの台座を見つけてそこに座ってます。


「ふわ……」


 メニュー画面を開きながら欠伸……。


「もしかして寝てないんですか?」


「もうすぐ試験日だから」


 それでさっきも足取りがフラフラしていたんですね。本当はゆっくり寝て欲しい所でもありますが、勉強も大事なのも事実。中々困ったものです。


「試験はいけそうですか?」


「んー。自信ありとは言えないけど。でもいくつかの科目は免除されたから絞れてる分、覚える量はまだマシなのかなぁ」


「免除されるほどとなるとそれなりに学校には通っていたんですね」


「まるで私はガチの引きこもりと言いたげだね?」


「褒めてるんですよ。ちゃんと単位取得するだけ頑張れていたのなら、きっと試験もうまくいくと思います」


「うー。ミゥは隙を見せたら褒めるから……好き」


 あなたの不意打ちで言うそれも、私は好きです。


「正直な話、学校に友達もいなかったら必然的に授業真面目に受けるのは普通でしょ?」


「フユユさんなら学校にゲーム機持ち込んで隠れてしてそうですが」


「ギクー」


 本当に持ち込んでたんですか。


「大学に進学するなら注意した方がいいですよ。大学は授業料も高いので留年なんてしたらとんでもない負債になります」


「むー。まだ先の話だからいいでしょー。ミゥは仕事してなさーい」


 はいはい。じゃあデバッグしますよ。壁も多いし段差や傾斜もあるのでこのマップは骨が折れそうですね。


 フユユさんはメニュー画面を開いて真面目に勉強しているようです。初めてあった頃はベンチに座ってダラダラしてただけなのに、少し見ない間に変わりましたね。きっと頑張る理由があれば、この子はどこまでも努力できるのでしょう。だから私は何も心配してませんよ。



 ※時間経過※



 ふぅ。上へ上へと目指しつつデバッグするのは大変です。宝石獣やクリスタルバタフライが邪魔して来ますし、高い壁もプテラノドンを駆使してチェックしていかないとダメです。

 正直面倒です。デバッグモードのおかげで攻撃に対しては無傷ですが敵の魔法のエフェクトが一々目障りです。


 プテラノドンに掴まって高所から落ちていったのでまた最初の場所に戻ってきます。もう何度目でしょうか。そういえばフユユさんはどうしてるのでしょうか。声もかけられなかったので仕事に集中していました。


 チラッと目を向けたら台座の上に横になってお休みなっています。眠気に抗えなかったようですね。しかもメニュー画面も開いたままですし寝落ちしたのでしょうか。


 近くに行くと数学の問題を解いている途中でした。本当、頑張りすぎですよ。私なんかよりも余程。


 このまま放置するのは可哀想なので画面を開きます。それで縞々のブランケットを取り出して肩からかけてあげます。風邪は引かないけれど気持ちの問題です。


 ……そういえば昔、同じようなことがあったっけ。あの時はフユユさんが徹夜で張り付いてて寝落ちして。でも今は全然違うけれど。


 フユユさんは全然起きる気配がありません。そっと顔を近づけます。


「勉強、お疲れ様……お休みなさい……」


 耳元でちょこっと囁きます。一瞬ピクッと顔が動いたように思えましたがすぐにウトウトしてます。いつもなら気配だけでも気づきますが本当にお疲れかもしれませんね。


 改めて見ると本当にかわいい。銀髪アバターっていうのもあるけれど、でもどうしてだろう。アバターだからっていうより、この子のアバターだからっていう気持ちの方が強い。


 もちもちして艶のあるほっぺ。なんだか意地悪したくなりました。

 目も瞑ってるし少しくらいなら……?


 そっと頬に顔を近づけて軽く唇を……。


「……ん」


 起きた……?


 でも起きてない。


 すごく背徳感があって気持ちがドキドキします。普段はフユユさんが起きてノリノリだから、こういうのもいいかも……。


 もう一度だけ……。


 ダメダメ。仕事中に何をしてるんですか……でも……。


 1回、あと1回だけ……。


 …………っ。

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