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108.これ楽しい

『秩序の掟:ルールを逸脱する者は即座に追放される。

 第壱条:テイムモンスターの同行を禁ず。

 第弐条:スキルの使用を禁ず』


 秩序の世界の攻略再開。今度もスキルの使用を封印する。


 フユユさんと共に先へ行くと監視者が立っています。相変わらず棒立ちですが、会話しただけでも敵対するならばあらゆる行動に反応する可能性が高い。なら。


 手を構えます。


「先手必勝。いいですか?」


「いいね。そういうの好きだよ」


 具現化魔法『プリズンソード』


 巨大な白銀の剣を顕現し、振り下ろす。衝撃波と共に監視者に大ダメージ。


『Rule Violation(違反)

 秩序への反逆を確認、記録』


 監視者が無機質な音声を残してワープして姿を消しました。おそらくギミック系の敵でしょう。先へ進むとそこには無数の大きな歯車が地面や空中、至る所に設置されています。


 歯車は私が一歩進むとギアが回って相手も動く。フユユさんが歩けばまた動く。動けば動くほどギアは動き、こちらを囲んで来ようとします。しかもオブジェクト扱いなのでおそらく倒せない。ハイランナーやハイジャンプを使えば撒けそうですがスキルは禁止。


「どっちが動いても敵が動くかー」


 フユユさんが試しに大きくジャンプして前に飛びます。するとギアがまた動く。


「歩幅関係なく一歩判定だね。よし、作戦を考えたよ」


「多分、私も同じ考えです」


「よーし。じゃあじゃんけんで勝った方がお姫様役で」


 これは負けられませんね。じゃんけん、ぽーん。勝った……!


「うへー。私の負けか~」


「ではお願いしますね。王子様?」


「仕方ないね。行くよ、お姫様?」


 フユユさんにお姫様抱っこされちゃいます。なんだか新鮮な気分で頭がふわふわしてきました。下から見上げるフユユさんの顔もかわいいな……。


「ミゥ……あんまり見られると集中が……」


「だってフユユさんかわいい……」


「ばか……」


 これだけで今日の攻略はおつりがきます。


 そしてフユユさんは深呼吸して大股で走り出します。両方の歩に反応するなら片方は歩かなければいい。フユユさんならジャンプ移動なんて他愛ないでしょう。


 ぴょんぴょん跳ねて真面目に頑張ってる顔が本当に愛おしい。腕掴んじゃう。


「みっ、ミゥ……ダメ……」


 そんな声出されたらやめられません。私はお姫様だから甘えます。


「私を連れてって。王子様……」


 囁くとフユユさんが真っ赤になって更にペースアップ。歯車ゾーンも無事突破しました。


『秩序の掟:新たなルールを適用する。

 第壱条:会話、メッセージを禁ず。

 第弐条:両者の距離1m以上離れるのを禁ず』


 画面が開いて次のルールへと移行したようです。会話禁止らしいので何も話せません。フユユさんは私を抱っこしたまま歩いていきます。まさかこのまま行くつもり?


 服の袖を引っ張って意思疎通を図ってみます。フユユさんはニコニコ微笑むばかり。

 楽しんでますね、これ。だったらこのまま甘えます。


 先へ行くと、また監視者が立っています。今度は最初から敵意を見せているようで剣を抜きました。さすがにこれはまずそうです。フユユさんも察して私を下ろしました。1m以上離れるの禁止ルールがあるので無茶はできない。


 だったら。


 フユユさんの手を握ります。これなら離れる心配はありません。フユユさんも握り返してくれました。やわらかい感触が伝わってきます。


 監視者の仮面が赤く光る。レーザーによる薙ぎ払いです。今度はスキルが使えるのでハイジャンプ! 同時にフユユさんが『マジックバレット』で空中で追撃します。


 着地と同時に風上級魔法『テンペスト』

 更にフユユさんが炎上級魔法『溶岩の海』


 災害規模の突風はマグマを散らして炎の嵐に変貌する。監視者に大きくダメージ!


『アクションログ:魔法攻撃。秩序逸脱判定:True

 HP低下率60%を超えました。異常な敵と検知』


 またしても無機質な音声と共に姿を消します。


 先へ進んだ先は空中に無数の分厚い本が開いて浮いています。パラパラとページがめくられ続ける中、地面から無機質な鉄のブリキ人形を生み出しています。イマジンブックというモンスターは敵を呼び出し続ける厄介な相手。本体を倒せば呼び出した敵も消滅します。


 フユユさんの手を引いて走ります。彼女も同じ考えみたいで一緒に走りました。

 更に同時に『ハイランナー』を使ってスピードアップ。敵の数が多いなら走り抜けたらいい。


 ブリキ人形が道を塞いでいますが同時に『ハイジャンプ』して跳んでいきます。着地して先へ走ろうと思ったけど、フユユさんの手が重い。振り返ったらブリキに掴まれてます。


 具現化魔法『魔法の剣』


 ブリキ人形の腕を両断。けど私の背後にも敵が来てる……。

 フユユさんがウィンドマジックで吹き飛ばしてくれました。


 今のうちに先へ!


『秩序の掟:新たなルールを適用する。

 第壱条:地面から両足を離すのを禁ず。

 第弐条:視点を残しプレイヤーの操作は別のプレイヤーに変更する』


 新たなルールが来ます。しかもこれは……かなり厄介な組み合わせが来たと思います。

 最初のは実質のジャンプ禁止。問題は2つ目。私の操作はフユユさんが、フユユさんの操作は私のアバターになります。しかも視点だけは元のアバターのまま。非常に操作が難しい。


 既にルールが適用されてるようで、私が歩こうとするとフユユさんが動き、私の足も勝手に動いてます。


 でも、あなたになら私はこの身を預けられる。だから心配はしません。あなたも同じだったらそれでいい。


 頷き合って先へ。


 操作が反転しているのになぜか歩幅も一緒に歩けています。手を繋いでいるからでしょうか。理由は何も分からないけれど。


 進んだ先には泥で出来たゴーレムみたいのが何体かいます。地面を泥で汚して非常に進みにくそう。こちらに気付いて一部は泥団子を投げて来ます。


 私のアバターの手が動いた。そっちへ回避するんですね。なら合わせます。

 同時に動いて泥団子を回避。敵が次々に攻撃してきますが、繋いだ手で合図して回避し続けます。


 共に攻略して、過去を乗り越えた私達に障害なんてありません。

 さぁ、行きましょう。ゴーレムへ向かって走り出します。


 汚れた地面が厄介ですね。ジャンプして飛び越えるのも不可能。


 だったら。


 水魔法『バブルガン』


 バブルが弾けるたび、泥が飛び散って透き通った地面が現れる。その上を、私たちは手を繋いで走った。フユユさんは敵の動きを見ていてくれてるようで攻撃が来たら合図してくれます。


 おかげで難なくゴーレムゾーンを突破。


 そして、抜けた先には秩序の監視者が待ち構えています。既に目は赤く暴走状態になってるようです。開幕からレーザーで薙ぎ払いをしてきます。ジャンプはできない。なら、レーザーの進行方向に合わせて回避。


 フユユさんもぴったり合わせて走ってくれます。走りながらマジックアローで追撃。フユユさんも全く同じ魔法使ってます。ここまで息合いますか。


 すると監視者が手を構えて魔法を唱えました。


 暗黒の渦が発生して虚無空間。闇上級魔法『ブラックホール』!


 飲み込まれたら即死の可能性もある厄介な魔法です。

 走って逃げるには難しい。2人で上級魔法を使っても削れるかどうか。


 いや、方法はあった。


 フユユさんのアバターを動かす。手を光らせて敵の足元に魔法陣を発生させる。

 成功しろ!


 ブラックホールが収束し、仮面の赤い光がふっと消える。


『テイムに成功しました』


 無機質な音声が空虚に響き渡ります。同時に監視者も敵対行動をやめて棒立ち状態になりました。


「その手があったか~」


 そういえばもう喋って大丈夫だったんですね。すっかり忘れてました。


「やっぱりミゥはすごいね」


「フユユさんが呼吸を合わせてくれたからですよ」


「ミゥの考えだけは分かるよ」


「私もフユユさんだったから出来ました」


 まだ操作は反転したまま。なのに抱きしめ合える。私達ってどこまでも……。

 きっと、あなたとならどこまでも行けるのでしょう。

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