表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

106/127

106.毎日見てたから分かって当然

 喉を傷めてしまった……。声を出すだけで痛む。薬は飲んだし、ひどくはないと思います。多分、水分不足で乾燥したのでしょうか。ずっとVRにログインしてるとどうしても休憩を疎かにしがちです。


 ゲーム内で飲み物はありますがあくまで仮想のアイテム。実際に飲んだわけではありません。だから定期的にログアウトして水分補給はしてたつもりですが偶然が重なってしまったのでしょうか。実際、VRゲームをする時はこまめに休憩しましょうという注意書きは頻繁に表示されます。それだけ長時間のログインは危ないんです。


 ともかく喉を傷めただけなので仕事にはそこまで支障はないはず。広場に来てフユユさんと合流します。


「ミゥ、おはよう」


 挨拶を返せないので手をあげて返事をします。


「今日も仕事だね」


 頷いて返事をするとフユユさんがこっちを見ました。


「ミゥ。もしかして調子悪い?」


 気付くのが早い……。でもちょっとだけ嬉しいかも。喋れないのでメッセージを送信して今の状況を伝えます。


「そっか。喉痛めたんだ。無理しなくていいよ」


 なんてお優しい。それにしてもフユユさんは私よりもログインしてそうなのに全然元気そうなのが不思議です。これも若さですか。


「これ……から、モノクロ……けほ」


 ダメだ。やっぱり声出せない。やはり指示するにはメッセージを使うしかありませんね。時間の無駄ですが致し方ありません。画面を開こうとするとフユユさんに手を掴まれます。


「ミゥ、無理して喋らなくていいよ。それに言いたいのは分かる。昨日の続きでモノクロのデバッグだよね。ダンジョンへ行くんだよね?」


 頷いて返事をします。


「安心して。ミゥに無駄な手間は煩わせない。メッセージ送らなくても私ならミゥの考え分かるから」


 それはさすがに無理なのでは……って思ったんですけど、この発言がすでに私の思考を読まれてます。気遣ってくれてるようですし、とりあえずは従っておきましょう。必要な時はメッセージ送ればいいですし。



 ※モノクロダンジョン・白の霧と黒の庭※



 白い霧に覆われたダンジョン。ブックを使用して黒の庭のダンジョン奥地へと進む必要のある少し面倒なエリア。霧はミスト・マイコニドというモンスターの影響でそいつを倒さないと黒の庭にも影響があります。


 デバッグすべきは白と黒の2つとして、まずは霧を晴らすべきか。いえ、霧がある状態でバグがないとは言い切れません。となれば、霧の有無も含めて白黒の合計4つのエリアをデバッグすべきでしょうか。少し面倒ですがやるしかないでしょう。


 フユユさんに伝えないといけないのでメッセージを……。

 腕を掴まれます。


「ミゥの言いたいの分かるよ。霧の有り無しで全部デバッグするんだよね?」


 正解、なんですけどどうして分かったんですか? 思考を読まれた? いや、私が思いつくくらいならこの子も思いつきますか。そうしておこう……。

 黙って頷きます。


 というわけでデバッグ開始。フユユさんはいつものように壁にスライムを投げていきます。私も近くで魔法を唱えていましょう。霧状態だと離れていると困りますからね。


 色々魔法を使っていくと風魔法の時に霧が一瞬消えました。なるほど、風で晴らすという小技もありましたか。なら。


 天候魔法『嵐の祈祷』


 暴風発生。全体に効果があるのでこれならどうなる? 霧は晴れ……てない。正確には霧が消えて戻ってを繰り返す変な挙動になってます。点滅していて気持ち悪い。ただ問題はそれではなく、嵐の祈祷はSPが激しく消耗するのですがその分広範囲の敵にダメージを与えられる魔法です。なんか変な場所でダメージエフェクトが発生しています。もしかして黒世界の敵にもダメージが入ってる?


 実際バグが起きたみたいで、なぜか今何かに攻撃されてます。おそらく黒世界の敵に気付かれて攻撃されてます。


「霧が晴れた一瞬も関係してそうだよね。或いは抜けてる座標があるのかも。前は問題なかったし、敵のUIも関係してるかもしれないね」


 私が言わなくても全部察して口にしてくれます。いや本当助かりますし、そこまで理解してるのが末恐ろしいと言いますか。なんにせよ、今日のフユユさんは頼もしいです。



 ※デバッグは順調に進んだ※



 色々バグを確認しつつ、ボスの挙動チェックも終了。時間を見たらいい時間だったので本日の業務は終了ですね。


「今日は終わり?」


 時間を見ていたのがバレます。本当に心読まれてるみたい。でもおかげで今日は本当に助かりました。感謝の気持ちを込めて頭を撫でてあげます。


「ずっとミゥと一緒だから言葉にしなくても分かるよ……」


 逆の立場だったら私はこの子の気持ちが分かるのでしょうか。少し、自信はなかったけれど、きっと大事なのはそういうのじゃないのかもしれない。


「……あり、がとう」


 擦れて声を振り絞る。まだ喉が痛む。けれどそれだけでも伝えたかった。


「……言わなくても知ってるのに。でも、ミゥのそういう所も好きだよ……」


 私も好きって言いたかったけど、声に出なかった。だから口パクで伝えよう。うん、顔赤くしてるし多分伝わってる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ