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私の見たかった景色

 本日は学園の敷地内にある大きなホールで、新入生を歓迎するためのダンスパーティーが開かれています。私は第一王子であるお兄様とともに特別な席でこの宴を楽しんでおりました。

 この国の第二王女である私、ベルナデッドの最近の流行りは人間観察です。今宵の宴は一度にたくさんの方々を観察できるので、私は大変胸が躍っています。ちなみに以前の趣味は恋愛小説を読むことで、とりわけ悪役令嬢の登場する悪役令嬢ものが大好きでございました。

 私は幼少の頃より、王位継承権を持つために仲良くする方を慎重に慎重に選ばなければと用心しておりました。そのため、ふるいにかけて残ったのは片手で足りるほど。……本当は、学園の全生徒と仲良くなりたいのですがそうもいかないのが王女というもの。

 ホールを見渡せば麗しいご令嬢がたくさん……ああ、なんて尊いのかしら。美しく着飾った姿は男女ともに魅力的で、私はこの空間が大好きです。ここにいる全員私と踊ってくださればいいのに……。

 お兄様が同級生の男子生徒の方々と仲良く談笑しているころ、こちらの席から少しばかり離れたところに人だかりができておりました。オペラグラスでもなかなか中心が見えません。どうしても気になってしまうんだもの……これは仕方のないことです。遠くからニコニコと眺めるだけにとどめておこうと思っていましたが、諦めて気配をできるだけ消して近づいてみます。人だかりの中心には最近よく観察しておりました二人のご令嬢がいらっしゃいました。お兄様の婚約者である侯爵令嬢のアメリーヌさんと新入生の男爵令嬢のカロルさんです。彼女達によって、私の目の前で繰り広げられるのは”悪役令嬢もの”そのままのやり取り。思わず拍手してしまいそうになりました。今まで小説とその挿絵でしかみたことのなかった構図があるのですから。

 私、これまでにないほど興奮しています。手元に構えていた扇子でしっかりと口元を隠していなければ、この感動が皆様にばれてしまっていたことでしょう。

 ああもっとこの二人のことを見ていたい。だって私の一番好きな主題ですから……。しかし私は王女。このままにしておくのは立場が許してくれません。ちらりと元居た場所を見やると、お兄様はこちらの様子にはまだお気づきになっていないようです。いずれ耳には入ってきてしまいそうですが、私が今のうちに場をおさめるのが”彼女”の今後には良いかもしれません。

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