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異世界行きたいおじさん  作者: 長谷川ひぐま
修業その3――「TRPG」
5/8

第5話 お手軽異世界転生=TRPG

「どうしたら、勇者サマのような勇気ある行動がとれマスカ?」


 ある日の昼休み。

 いつものようにアナスタシアさんとお弁当を食べていると、そう聞かれた。


「ゆ、勇気ある行動ですか?」

「はい。私もこの前の勇者サマみたク、誰かを守れる強さを見に付けたいデス」

「いやいや、あの時はただ必死だっただけで……」


 以前一緒に出掛けたキャンプ修業での一幕、ヒグマ相手に対峙した時のことを彼女は言っているのだろう。

 俺は、「うーん……あの時は必死だったからなぁ」としか言いようがなかった。

 そして――


「アナスタシアさんを守りたい。ただそれだけの想いだっただけです」


 と、ありのままを伝えてみた。

 すると――


「そ、そうデスカ……」


 と言って、アナスタシアさんは耳まで真っ赤にして俯いてしまった。

 しまった。どういう反応なのかはわからないが、もしかして気持ち悪いと思われてしまったのだろうか?

 だとしたら、まずい。

せっかく異世界転生仲間が出来たというのに、嫌われてしまうのはどうしても避けたい。

 俺はなんと答えれば正解だったのかを慌てて考えてみた。

 その結果――


「てぃ、TRPGです!」

「エ?」

「テーブルトークRPGっていうゲームでどんな状況下になってもいいように鍛えてたんで、きっとあの時動けたんだと思います!」


 俺は思い当たる節があったのでそう述べてみた。

 TRPGとはあるシナリオに従いつつ、プレイヤーが登場自分物になり切ってそのシナリオの世界を冒険する遊びだ。行動はすべて複数のダイスを振ることによって決められるので、運要素がこれまた面白さに拍車をかける。

 そして実は先月のTRPG会で、俺は熊に襲われるシチュエーションに遭遇していたのだ。

 キャンプ場での行動は、その時の経験が活きたに違いなかった。

 俺がそう言うと、アナスタシアさんは……


「TRPG……」


 と何やら考え込み始めた。


 そして――

「勇者サマ! 私もそのTRPGに参加させてくだサイ!」


 と熱望してきた。



 それが五日前のこと。

 この時は「新しいTRPG仲間が増えるぞ♪」なんてのんきに考えていた。

 しかし――


「勇者サマに告白しマス……ダイスロール」

「だったら、私だって告白させてもらうよ。ダイスロール」

「じゃあ、自分もついでに勇者殿に告白しちゃうっす。ダイスロール!」


 どうしてこうなったのだろう。

 今回のTRPGは、何故か修羅場と化してしまった。

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