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地獄の始まり

作者: スミネコ


さぁ、地獄の始まりだ。


ーーー時間は遡ること1時間。

眠い目を擦りながら布団から這い出る。

目覚まし時計に起こされる日は決まって目覚めが悪い。

よろめきながらトイレに辿り着くが、用を足しながらもまぶたはどんどん閉じていく。

「くそっ」

心の底から悪態をつく。どうしてこんなことになっているのか。自分が何をしたというのか。これ以上悩んでも仕方ないので、お気に入りの曲を流し、少しずつ現実を受け入れていく。


地獄まであと50分。


歯ブラシにたっぷりキシリトールの歯磨き粉を垂らし、いつもの通り右上の歯から磨いていく。同時にSNSのチェックも欠かさない。最近はもっぱらBLか百合かくだらん男女論争の話題しか流れてこない。でもBLと百合だけが俺を救ってくれる。まじで。歯磨きが済んだらシャワーを浴びるのが日課だ。過去の様々な過ちがフラッシュバックし発狂しそうになる。今日はすんでのところで堪えることができた。多分堪えられたと思う。堪えられたんじゃないかな。まぁちょっと漏れてたかもね。


なにはともあれ地獄まであと40分。


もさもさの髪を乾かし、ワックスでもさもさする。齢30を前にしてまだ、まだもう少し耐えてくれそうだ。焼け野原になった友人を知っているがそいつには心の底から増毛薬を勧めたい。過去散々俺を薄毛だのなんだのバカにしたことはもう気にしていない。排水溝に流してやろう。お前の髪と共に。


地獄まであと30分。


ここで少しのインターバルができる。迫り来る現実に耐えきれず幼児化してしまうのだ。うあーわあーうあー

なんと情けないことか。

はぁ

しんどい

着替えを済ませイヤホンと傘を装備し家を出る。


地獄まであと20分。


うだるような暑さ、何度結んでもほどける靴紐、嫌な距離で後ろをついてくる謎の男、流れなくなった汗(ほぼ加齢が原因)、昨日荷物運びをして痛めた腰。全てが相乗効果となって俺を肉体的に、精神的に痛めつけてくる。これから更なる地獄が待ち受けているというのに。


地獄まであと10分


道中、子を幼稚園バスに送り届ける母親と出くわす。おそらく自分より年下だろう。普通の人として、真っ当に生きている。俺は死のうかな。


地獄まであと5分


命を繋ぐため自動販売機でポカリスエットを購入する。これを飲んでいると少しずつではあるが延命されている気がしてくるのだ。病は気からって言うでしょ。飲め。

最後の角を曲がった。見知った顔がぞろぞろとそこに向かっている。すでに何年も、この先何十年も通い続けるであろう場所に向かっている。今日はどんな理不尽が俺を待ち受けているだろうか。


さぁ、地獄の始まりだ。

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― 新着の感想 ―
[一言] 死なないで! 面白かったから! また見に来ますから! 共感できたから! 共感しすぎて。 あ、やっぱ俺も死のうかな……。
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