首席になってしまった件
彼女は困っていた。
「うう…どうしてこんなことに……いいえメラヴァル弱気になっちゃダメ…これはしょうがないこと…うん」
メラヴァルは入学試験で本気を出しすぎた為、首席に選ばれてしまったのだ。
そして入学当日、代表挨拶という窮地を迎えていた。
(しかしここでわたくしの存在を認知させれば…奴らに近づくチャンスが増えますわね……)
メラヴァルは気合いを入れ、大講堂のステージに立った。
講堂内には1000人を優に超える生徒がおり、全員がメラヴァルに注目の眼差しを向けていた。
「初めまして、DHアカデミーの皆さん、わたくしは新入生首席のメラヴァル=ジーヴァと申します…この挨拶で言いたいことは1つしかありません、わたくしがこの学校に入ったからには最強のデビルハンターになりますわ!決闘を希望する方は是非挑んでくださいな!」
メラヴァルが喋ったことは、もはや生徒全員に対する挑戦状だった。
予想外の挨拶に講堂中がざわめき出す。
(い、言っちゃいましたわ…こんなので大丈夫だったかしら)
― 一時間後
式も終わり、新入生は各々の教室に案内された。
メラヴァルはAクラスだった、教室に入るなり全員が彼女を見つめてきた。
無理もないだろう、あんな喧嘩を売るような挨拶をしてしまったのだから。
しかしパティだけは目を輝かせながら駆け寄ってきた。
「メラちゃんっ!あの挨拶すっごいかっこよかったよ!」
「ええ、ありがとうパティ…でもいまはちょっと落ち着いてくださいまし……」
教壇を見ると教師がコチラを見ながら咳払いをした。
「お二人とも?早く席に着くんだ…な?」
そして背筋が凍るような圧をぶつけてきた。
「「ごめんなさい…」」
謝りながらメラヴァル達は席に着いた、すると教師が話し始めた。
「新入生諸君、私はこのAクラスを担当することになったS級デビルハンターのミステリオンだ、どうぞよろしく…と言いたいが私が担当になったからには存分に厳しく行くぞ、それだけは覚悟しておけ。」
Aクラスの担当になった教師はなんとメラヴァル達とはそこまで背丈が変わらない少女だった、しかしその背には似つかわしくない大剣を提げていた。
(な、なんですのこの方…この子供みたいな人が教師……?)
「おいメラヴァル、お前失礼なこと考えただろ?私にはお見通しだぞ。」
なんと考えていた事が見抜かれたのだ。
「いっ、いえ決してそんなことは……」
メラヴァルは必死に否定するが、ミステリオンは突然自分の異能について語り出した。
「…私の異能は(心眼)私のことを周りがどう思っているか分かる能力だ…だから私に対して誤魔化しは………おい貴様ら、しょぼいとはなんだ、失礼だろっ!」
キーキーと喚くミステリオンだったが、傍から見ると小さい少女が癇癪を起こしているだけに見える。
ミステリオンは諦めたかのように今後の予定を説明する。
「はぁ…もういい、とりあえずこのAクラスは知っての通り、入学試験で極めて優秀な成績を納めた者が配属されるクラスだ、それ故に授業内容も実践式が多い…というわけで唐突だが、明日の初授業はアカデミー地下の修練ダンジョンに潜ってもらう!!」
「「「えー!!??」」」
教室中のほぼ全員から驚愕の声が上がった。