メラヴァルVSパティ
なんとメラヴァルの対戦相手に選ばれてしまったのはパティだったのだ。
二人は闘技場の舞台に降り立った。
「ではルールを説明します、実技試験は模擬戦、制限時間は無制限で相手に参ったと言わせた方が勝ちです、では二人とも構えっ!」
審判が簡単なルールを説明する。
どうやらこの舞台全体が異能によってダメージを受けにくくなっているらしい。
「パティ…対戦相手に選ばれてしまったからには手加減は出来ませんわよ」
メラヴァルは小ぶりのナイフで自身の指に傷を付け、能力で細身の剣を形作った。
(はぁ…はぁ…貧血でちょっと体が重いですけれど…何とかなりそうですわね)
それに対してパティが懐から取り出したのは鎖の先端に鉄の塊が付いてる奇妙な武器だった。
「鎖分銅…ですわね」
メラヴァルは昔に読んだ本でその武器の事を知っていた、大陸東から伝わった武器、鎖分銅だ。
「私も本気を出すよ、いくらメラちゃんが相手でも手を抜くのは失礼だと思うしねっ!」
「では…よーい……始めっ!!」
戦闘開始の合図と共にメラヴァルはパティに向けて素早く踏み込む。
しかしパティは余裕そうな表情を浮かべた。
「メラちゃん、流石に速いね…でも簡単に近づかせる程私は甘くないよっ!!」
そう言って彼女は鎖分銅を振るう、鎖はまるでムチのようにしなり、メラヴァルに襲いかかる。
「くっ…厄介ですわね……でも!これくらいなら簡単に弾けますわっ!」
メラヴァルは血の細剣を振るい鎖を弾いた、はずだった。
「…!?なっ剣が!」
細剣が鎖に触れた瞬間、なんと剣が消滅してしまったのだ。
そして先端の鉄塊がメラヴァルの右腕にクリーンヒットしてしまう。
(ぐぁ……異能でダメージが半減されてるとはいえ、これはかなり痛いですわね…)
「これが私の異能を最大限に活かした特技だよ、遠距離でも相手の能力を無効化出来るんだっ!」
パティは得意げに言い放つ。
異能の強さに加えて鎖分銅のコントロールも中々のものだ、彼女は相当な実力者であった。
「やりますわね、パティ…でもわたくしは諦めが悪いですわよ!」
再びナイフで血を出そうとするメラヴァルだったが、なんとナイフを持つ右手に鎖が蛇のように巻き付いたのだ。
締め付ける力は凄まじく手はビクとも動かない。
「ふふ、それは読めてるよメラちゃん!降参するなら今のうちだよっ」
パティが勝利を確信してメラヴァルに降参を迫った。
「それはどうかしら!」
メラヴァルは左手の爪で右手を傷つけたのだ、そして流れ落ちる血で小さめな杭を生成、パティに向かって投擲した。
「うわっ!危ないなメラちゃん、あっ…しまった……!」
パティは紙一重でそれを躱したのだが。
そう、彼女は突如投げつけられた血の杭に気を取られ、ほんの少しだけ鎖の締め付けを緩めてしまった。
「油断しましたわね、パティ!」
鎖が緩んだ途端に腕をするりと抜いて、パティに向かった。
鎖分銅は伸び切っていたため、パティにその踏み込みを対応する術はなかった。
「なっ、やばっ……」
「勝負あり、ですわね」
メラヴァルは細剣を再び生成して、パティの喉元に突き付けた。
「あちゃーやっぱり強いね、メラちゃんは………参った、私の負けだよ」
「戦闘終了!勝者、メラヴァル=ジーヴァ!!」
パティの降参宣言と共に、審判の甲高い声が闘技場に木霊する、その瞬間歓声が会場中から上がった。
これにて彼女達のDHアカデミー入学試験は終わった。