少女の権能と少女の異能
それからDHアカデミーの入学試験に向けて、メラヴァルはパティの家に厄介になることになった。
「それじゃ今日は座学の勉強と行こう!メラちゃんに大陸の歴史を厳しく叩き込みます!」
「よろしくお願いしますわ」
やけにハイテンション気味なパティを眺めながらメラヴァルは彼女の話に耳を傾けた。
―数時間後
勉強する必要がなかったがメラヴァルは分からないふりをして話を聞き続けた。
メラヴァルは魔界の頂点に君臨してからはずっと王城で歴史書などを読み漁っていた為、ほぼ全ての知識が頭の中に入っていたのだ。
「メ、メラちゃん…すごいよ…もうこんなに覚えて、これなら本番は満点取れちゃうかも…」
「わたくし…流石に目立ちたくはないのですけれど」
メラヴァルは自分が魔族ということを隠して入学試験を受けるので注目されることは避けたかったのだ。
続いて二人はパティ宅の広い庭を訪れた。
「よし!次は能力見せ合いの時間っ!メラちゃんは異能を持ってる?」
本当は権能、なのだがここは人間に合わせるとしよう。
「はい持ってますわ、わたくしの異能は(血液操作)ですわね」
メラヴァルは自身の手を爪で軽く傷つけた、すると流れるはずの血液が収束して小さなナイフを形作った。
「メラちゃんすごーい!なに!どうやってるのそれ!貧血とかにならないの!?」
メラヴァルの能力を見たパティはぱあっと目を輝かせ、質問を次々としてきた。
「ちょ、ちょっと一気に質問攻めにされても困りますわ、ええとこれは文字通り自分の血液を操る能力で血がある限りなんでも作れますわ、ですが貧血は覚悟しなくては行けませんがね」
「ほえぇ…すごい使い勝手が良くてかっこいいじゃん!よし、次は私の番だね」
パティがそういうとおもむろにメラヴァルの持つ血のナイフに触れた、すると…パリン、という音と共にナイフが砕け散って、消えた。
「な、なんですのその能力は…」
「私の異能は(消去)、異能や権能関係なしに相手の能力を無効化してしまうんだよ、でもこんなのだから周りからは地味だって言われ続けて来たけど…えへへ」
自分の能力が打ち消されるのを見て、メラヴァルは恐怖を覚えた。
(地味なんてもんじゃない…あの異能は全ての能力に対抗出来る、まさに最強の力……敵じゃなくて本当に良かったですわね…いまは)
「いいえ、凄いですわパティ!こんな能力わたくし見たことありませんもの、どうか自信を持ってくださいまし!」
メラヴァルの励ます言葉を聞いてパティは顔を輝かせた。
「ほんとに?…ありがとうメラちゃん!一緒に合格に向けて頑張ろうね!」
(パティ…ごめんなさい、わたくしはそんな貴方でも騙さなくてはいけないの…どうか許して……)
彼女にもバレてはならない、メラヴァルが魔族ということだけは。