1000年封印されてたら魔界滅んでました
この大陸では魔界と人界で分断されており、魔界の住人(魔族)と人界の住人(人間)は互いの領土と資源を巡って、長きに渡り争ってきた。
その中で魔族は権能、人間は異能という特殊な能力を持つ個体が両陣営共に少数存在しており、人間側は異能を持つ人間をデビルハンターと祭り上げ、本格的な魔界侵攻を行っていた、それに対して魔族はトップのメラヴァル=ロードアウトの意向で人界には侵攻していなかった。
魔界歴1350年に人間は多くのデビルハンターを動員して魔界の首都ラーダントルを攻撃、トップのメラヴァル=ロードアウトを封印して全土を掌握、魔界は事実上の滅亡となってしまったのだった。
それから1000年の歳月が経った。
―魔界歴2350年
メラヴァルは棺桶の中で目を覚ました。
「ここは……わたくしはそういえば…人間の手によって封印されて…」
埃っぽい扉に触れると、軋んだ音を立て開いた、外に出るとそこは瓦礫に囲まれた廃墟だった。
「ここってもしかして……王城かしら…一体わたくしが封印されてからどのくらいの時が……ってさむ……」
棺桶の外はまさに極寒だった、何故ならメラヴァルは衣服を着ていなかったからだ。
慌てて近くにあった古い鏡を覗くと、可憐な少女のような肢体、腰まで届きそうな白銀の髪が見目麗しい美少女が映った。
「うう、こんなんじゃ凍え死んでしまいますわ、何か…」
辺りを見回すとメラヴァルは大きめなボロ布を見つけた。
「こんなものでも寒さを凌げるならありがたいですわ」
彼女は瓦礫の廃墟を抜けると、そこは山の上で、そこから町の様子が見えた。
「魔界も随分様子が変わりましたわね……とりあえず町に降りてみようかしら」
町に降りたメラヴァルは予想外の光景に思わず絶句してしまう。
「え、なんで魔界に人間がっ…!?ここは人界では無いはず…」
そう、町には人間しか存在していなかったのだ。
彼女は慌てて近くを歩いていた人間に尋ねる。
「あ、あの…すみません…ここの町ってなんて名前なんですの?」
「ん?ここかい?ここはラーダントルだよ」
ラーダントル、その名前にメラヴァルは聞き覚えがあった、何故ならラーダントルは魔界の首都だった場所だからだ。
「そ、そんなまさか…いや、ありがとうございます…」
人間にお礼だけ言うとメラヴァルは脱兎の如く駆け出した、そして路地裏に逃げ込む。
「はぁ…はぁ……そんなっ…ということは魔界は……滅んでしまったということですの…?」
過呼吸気味になるメラヴァル。
認めたくは無かったがこの光景は、彼女に否応なく現実を突きつけてくる。
ここは周り全てが、敵。
そう悟った時、メラヴァルの身体は精神的にも肉体的にも限界を迎えて、その場に倒れ込んでしまった。
それから数分後、ある少女が路地裏を通りかかった。
「あれ?誰か倒れてる……え!?この子、何も着てない!こんなところに倒れてたら死んじゃうよ……早く家に連れてかなきゃ…!」