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【寮】‐Common Room‐

【水系統魔法】を使う生徒たちが集う寮【リヴァイアサン】へ向かい廊下を進む。

 奥に下へと続く階段が見えている。──窓の外を見るにこの階が地上1階。つまり【リヴァイアサン寮】は学校の地下。


「ん?」──窓の外に女子生徒がひとり庭に出ていくのを目撃。現在早朝5時。動き回るにはまだ早いと思われる。──「恋人との密会か?」


「ジョギングとかだよ。きっと」──馬車の中での眠りが中途半端だったのかあくびするティファ。


 運動するにしては、服装がおかしい。

 [魔法使い(ウィザード)]が愛用しているような長いローブ。寮の制服なのか色は黄色。

 とてもじゃないが走るのは難しそう。


 庭にいる生徒は周りを警戒しながら奥の林へと向かっていく。

 立ち止まった木の後ろに待ち人でもいるのかと注視するが誰の姿もない。

 邪悪な魔法の特訓。それとも林の中に魔法生物でも飼っているのか。

 ローブから何かを取り出す。答えは──……。


「け。なんだつまらん」


「どうかした? 急にふてくされて」


「あの女子生徒、菓子を食べるだけであんな怪しい行動をしていた。この学校は食堂以外の飲食を禁じているのか?」──ローブから取り出されたのは包装されたキャンディ。色はよどんでいて。味は想像しにくい。


「パンフレットには授業中以外の飲食に関しての禁止事項はなかったよ。他の寮生にお菓子食べてるところ見られるのが恥ずかしいんじゃないかな。ダイエット中の気の迷い的なさ」


『身分の低い魔力なしなど怪しすぎる』という理由で俺たちは偽身分をレオルドに用意してもらったが、貴族階級が低い家庭の生徒は1部屋4人で使用するとのこと。

 ティファの推測が正しいのであれば、つまらんことに足止めされてしまった。


 女子生徒はキャンディを口に含ませると、頬を赤らめて昇天するような表情を浮かべた。

 まるで別の世界でも見ているかのように。

 究極の紅茶に出会えたら俺も同じような表情を浮かべるのかもしれない。

 さぞかし過酷なダイエットをしているのだろう。


「あんなに喜べるのなら、周りなど気にせず食べれば良いじゃないか。『食は人生の花』だぞ」


「……まるで自分のセリフみたいに。アルバだって紅茶ばっかのくせして」


「代わりにお前はよく食べるからな。この前なんて1週間分の食料を3日で終わらせたじゃないか」


「そ、それだけアルバの料理がおいしいの。ガサツに見えてすっごく丁寧だし」


「料理なんて算数。経験があれば誰だってある程度のものは作れる」


「何気にスペック高いんだよね」


『何気』は余計だ。


 ローブで体型は確認出来ないが、ダイエットする程とは思えない。

 貴族ばかりの学校ということもあって美意識が高くなければ生き残れないとか?


 なんにせよ[探偵(ディテクティブ)]の俺は思春期の少年少女の悩みに関わるつもりは全くない。

 だからキャンディを堪能している女子生徒鑑賞はやめて、寮へと向かっていく。




 ──魔法学校の地下室。

【リヴァイアサン寮】の入り口。

 頑丈な作りの扉に[|海深巨龍《リヴァイアサン]二頭の彫刻がされている。


「重くて動かん」──押してもびくともしない。


「もしかして学校パンフレット読んでない?」


「ああ」──他に読み物が沢山あったのだよ。


「どの寮も適正系統の魔力を流さないと扉が開かないんだって」


「なんてクソ仕様っ!!」


 魔法学校らしいっちゃ、らしいが。

 魔力なしの俺は論外として、ティファは土属性。ノラは闇系統影属性。詰みにはまっている。

 そもそもノラが静か過ぎる。俺の影の中で爆睡しているのではなかろうか。


「一応レオルド第二王子から水属性魔力に変換する魔法道具を」──「いや待て。他にも方法があるはずだ」──「たぶんないよ?」


「じゃあ光属性の生徒はどうする」──少数属性の為、四寮から選択しなくてはならない。


「……適正属性の友達に同行してもらうとか?」


「酷だろ。それは」──通信交換進化。くらいの絶望感である。


 魔法なんかに負けたくないから扉を念入りに調査する。

 けれどカラクリ的な隠し要素は見つからない。

【龍二頭のうちどちらか一頭を取り外すことで開く】みたいな謎解き要素があっても良いじゃないか。


「ティファ。頼む」──負けたのではない。推理の余地のないクソゲーだったのだ。


「うん」──レオルドから渡されていた魔法道具[水属性(アクア・)変換(チェンジ・)手袋(グローブ)]を右手に装着し扉に触れて魔力を流す。ティファの明るいオレンジ色の魔力が手元で水色に変わった。


 これは魔力属性を変えるだけで水属性魔法を扱えるようになる魔法道具ではない。

 使い場所があるとは驚きである。


 魔力は彫刻をなぞり、美しい絵が出来上がっていく。

 まさに荒れ狂う二頭の龍。波の音まで聞こえてくる。

 瞳が強く光ると扉が開いた。


「わぁ! すっごく綺麗だね」


 水中を通ってきたであろう自然的な青い光。


 扉の先は水族館のような水中の部屋。

 魚や水中の魔法生物[水霊馬(ケルピー)]などが泳いでいる姿を確認することが出来た。

 沢山の本と机が用意されており、生徒たちが談笑したり勉強することが出来る共同スペースのようだ。


 中心には噴水があり、[海深巨龍(リヴァイアサン)]の石像が飾られている。

 まさに水属性の生徒たちの為に用意された寮だった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ティファ、健啖家(*´ω`*) [一言] 更新ありがとうございます! ……【キャンディ】を食べた女子生徒が恍惚の表情を!? アブないお薬的なものなのかそれとも? 別系統の生徒っぽいし発覚…
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