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【探偵】‐Detective‐

※ティファ視点からアルバ視点に変わります。

そして前回より時間軸が(探偵の相棒が出会う)前の話です。お楽しみください。




 (アルバ)の前世は【日本が世界に誇る名探偵】だった。

 ──と言っても金田一耕助先生や明智小五郎先生と並ぶかと聞かれたら「恐れ多い」「片腹痛いわ」と答えることだろう。


 事件を解決する日常、犯人との頭脳戦。

 痕跡が【名探偵】を作る。


 つまり『名探偵は一日にしてならず』。

 1.良き[助手]を持ち。

 2.[事件]に恵まれ。

 3.そして[悪の親玉]との対決。

 これぞ探偵の醍醐味(だいごみ)


 けれど前世の俺には[助手]はいなかった。

 確かに[事件]には恵まれたものの、それだけだ。

 謎を追い求める大冒険もライヘンバッハの滝もなかった。


 探偵として生きたが、最後はトラックに轢かれそうになった子供を助けて逆に自分が──なんて格好のつかない幕引き。




 ──……目が覚めたら赤ん坊に戻ってた。

 金髪青目、英国人っぽい美男美女にあやされて。


 言語は英語でもロシア語でも、もちろん日本語でもない。

 恥ずかしいことにその新しい言語を習得するのに3週間もかかった。


 種類に富んだ人間(今では[半妖精(エルフ)]や[亜人(デミ)]と呼ぶことを知っている)。

 王国の外に行けばモンスターが闊歩する。


 人知を超えた夢物語(ファンタジー)な世界。

 実用書や探偵小説しか読んできていない俺でも聞き覚えのある、【異世界転生】。


 そしてなによりこの世界には──[探偵(ディテクティブ)]──という職業(ジョブ)がない。

 魔法なんていう未知が存在しているのだから仕方ないのかもしれないが。


【密室事件】が起きようものなら『鍵に魔法をかけた形跡はないか』を確認しなければならない『施錠する魔法』または『鍵自体を作り替える魔法』。

 はたまた『誰かが扉を開けるまで隠れるために透明に』『そもそも犯人はその部屋に入ったことすらない』──ほら頭が痛くなってきた。


 けれど[探偵]というシステムにはまだ必要性ある。

 それは【魔法犯罪】の有罪率だ。あまりに低い。


 [魔法使い(ウィザード)]や[召喚師(サモナー)]が扱う上級魔法ならまだしも魔法学校で教えているような魔力があれば誰にでも扱える基礎魔法で犯罪を起きたら誰が犯人でもおかしくない。


 この世界では種族問わず子供から老人、ひとり残らず懐に拳銃を隠し持っているようなものだ。


「ドラゴネス王国冒険者組合(ギルド)『ドラゴンの宿木』へようこそ! はじめてご利用の方ですよね。お名前と[職業(ジョブ)]を聞いても?」


「アルバ。[探偵(ディテクティブ)]だ」


「ディテ? ……少々お待ちを」


 冒険者組合(ギルド)の受付嬢(緑髪をした犬亜人(デミドッグ))が俺の名前と[職業(ジョブ)]を手元に置いてある紙に書くと、ひらひらと命が宿ったかのように飛んでいく。


 行き先は情報を管理している倉庫。

 冒険者ひとりひとりの【個人情報】【冒険者としての功績】【受けられる依頼(クエスト)の難易度】が記載されている書類がある。

 この倉庫は全ての冒険者組合(ギルド)が所有しており完璧な情報共有がなされているそうだ。


 飛んで行ったのは古紙に対して、戻ってきたのは高級紙。見事受付嬢の手元まで。


「こちらでお間違えありませんか?」



 ───────────────────


 名前:アルバ

 性別:男性

 種族:人間種

 国籍:ドラゴネス王国


 職業:探偵

 職業パッシブスキル:なし

 功績:迷子のケット・シー探し。

 地下奴隷オークションの発見協力。

 魔法省への貢献。など


 魔力量:なし

 魔力色:なし

 属性:なし


 受けられる依頼:冒険者ランク1

 依頼遂行:6回

 ランク上げまで:残り4回


 ───────────────────



「間違いない」


「ぷっ」──失笑。担当していた受付嬢だけでなく隣の受付嬢まで。おそらく魔力量のことだろう──「失礼しました。アルバ様はランク1ですので、あちらに掲示されている依頼(クエスト)が対象となります」


「ありがとう」一応礼だけ言ってその場を去ろうとしたがコソコソとこちらを指差して談笑するものだから──……


「ああ、そういえば。その不安は当たっているぞ」──会話に混ぜてもらいたくなってしまった。


「はい?」


「肌が荒れている。ストレスによって体内に発生した活性酸素のせいだ。結婚指輪をことあるごとに触れているのを見ると夫に関しての不安だろう。そして作業机に置いてる写真が見えてしまったのだが写っている男の髪はお前と同じ緑色だ。けれど肩に付いているのは赤い髪。もし夫が最近見た目を変えたなら残念だが愛人の影響と思われる」


 段々に受付嬢の顔色が悪くなっていく。思い当たる節があるのだろう。

 仕方ないからその溜まったストレス発散をさせてやらねばなるまい。


「ところで高級そうなネックレスをしているな。受付嬢の儲けじゃ買うのは難しそうだ。夫からのプレゼントか?」


「え、ええ。結婚記念日が近いからと一昨日くれて」


「とても綺麗だ。大切な人へのプレゼントとしてセンスが良い。記念日はいつだ?」


「10日後です。サプライズにしたかったそうなんですが私が見つけてしまったので」


「ほう。夫の瞳の色は赤か?」──ネックレスについた宝石を見る。


「いえ……私と同じダークグリーンです」


「なるほど。赤と言えば隣の受付嬢は綺麗な赤色の瞳をしている……先ほどから体調が悪そうだが大丈夫か?目が泳いでいるし、汗もかいている」


 あまり話しかけすぎるのも受付の仕事の邪魔になるからこの辺で「では、またな」と軽く手を振る。


「このドロボウ猫ッ!!」──怒りの声が開始の合図に、冒険者組合(ギルド)の中が乱闘騒ぎとなった。




 乱闘騒ぎはしばらく続いたが、受付嬢ふたりが冒険者たちに取り押さえられたことによって終結した。

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