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74 ギルドマスター

「それで、何があったんだ」



 ギルドマスターに問いかけられたものの、俺たちに絡んでいた男はだんまりを決め込んでいる。

 それに構わず、ノアが「この人に一方的に絡まれただけです」と返した。



「子どもの来るところじゃないとか言って、危害を加えようとしてきました。冒険者ギルドは、彼みたいなおじさんにならないと入れないところなのかな?」



 ギルドマスターはギロリと男に冷たいまなざしを向ける。

 男に代わって、先ほど男を止めようとしていた仲間の女性が「すみませんでした!」と謝罪した。


 ギルドマスターはため息をついて「次はないぞ」と警告する。

 そして俺たちに向き直った。



「ここ冒険者ギルドは、すべての冒険者のためにある場所だ。年齢を問わず利用することができる。……彼のようなおじさんにならずともな」


「それはよかった」


「だがお前たち、見ない顔だな。新入りか?」


「この街に来たばかりでね。モンスターの買取を頼みたくて」


「なるほどな。ちょうどいい、私が見てやろう」



 ついてこい、と言われ、ギルドマスターのあとを追う。

 先程絡んできた男は、ギルドマスターが背を向けると、恨みがましい目つきでこちらを睨みつけていた。


 ……余計なちょっかいをかけられないといいが。

 この街に滞在する間は、少し警戒を強めようと決めた。

 


 ギルドマスターに案内されたのは、奥のカウンターだった。

 横にはそれなりのスペースがあり、大きめの魔物なら置けそうだ。


 ギルドマスターはその空いたスペースを指し、買い取ってもらいたい魔物を出すように言った。

 ノアはいたずらっぽく笑って「入らないかな」と答える。


 ピクリと眉を動かし、ギルドマスターは「どのくらいの大きさなんだ?」と訊ねた。



「そうだね、この建物より大きいくらいかな?」



 ノアの言葉に、ギルド内にどよめきが広がる。

 先程の騒動から、こちらを窺っていた者が多かったようだ。


 ギルドマスターは疑いの眼差しを向けながら、ギルドの裏に俺たちを連れて行った。

 そこにはギルドの建物4つ分ほどの広さが確保されている。



「ここはギルドの訓練場だ。昇格試験なんかもここで行う。……これならば、広さも十分だろう。出してみろ」



 いつのまにか、やじ馬が集まっている。

 しかし誰も信じてはいないのか、大ぼら吹きがギルドマスターに叱られるところを見物に来ているようだ。


 にやにやと嘲るような表情は、ノアが鞄からドラゴンの遺体を取り出すと固まった。

 静まり返った空気の中、ノアが自慢気に笑う。



「どう?立派でしょ?」



 ギルドマスターは、口をあんぐり開けて放心していた。

 目の前の光景が信じられないのだろう。


 しかしすぐにハッとして、ドラゴンに恐る恐る近づく。

 死んでいることを確認すると、全身をくまなくチェックし始めた。

 先程までのクールな様子とは異なり、目を輝かせて興奮しているらしい。

 何度も「すごい、すごい!」と呟いている。



 そして観察し終えて、俺たちのもとに戻ってきた。



「あれはどこで倒したんだ!?誰が、どうやって?焦げた跡があるから炎か?いやそれにしては損傷が少ない……電気か?ずいぶん強力な魔法だ……」



 質問しているのか、考察しているのか。

 矢継ぎ早に話すので、返事をするタイミングがつかめない。



「あんなに大きなドラゴン、初めて見たぞ!この国の軍隊を総動員しても倒せるかわからないレベルのドラゴンだ。それをたった3人の子どもと1匹の従魔で?」


「うちのメンバーは優秀だからね。僕が手を出すまでもなかったよ」



 俺たちを褒められたのがうれしかったのか、ノアがえっへんと胸を張る。

 妻も嬉しそうにニコニコ笑っている。



「すぐに国王陛下に報告せねば!私は城に行ってくるから、ギルド内で待っているんだぞ!あ、ドラゴンはいったんしまっておいてくれ。傷がついたら困る!」



 ギルドマスターはそういうと、すごいスピードで走って行ってしまった。

 怒涛の勢いに、頭がついていかない。


 ……ん?国王?

 今、ギルドマスターは国王陛下って言っていたような……。



 恐る恐るノアが見ると、満面の笑みで「並みの貴族じゃ太刀打ちできない権力者だよ」と笑った。

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