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30 反省会

「お嬢様!」


 いかにも苦労人と言った風貌の中年の男が、食堂に勢いよく飛び込んできた。

 そのあとに、2人の若い男が続く。

 どうやら彼らが、リオナの護衛らしい。


 中年の男はリオナに怪我の有無を確認したあと、くどくどとお説教を始めた。

 説教癖があるのだろう、リオナは慣れた調子で聞き流し、切りが良くなったタイミングで話を切り替える。



「もう護衛を撒いたりしませんわ!……それより、彼らにお礼をしたいのだけれど、我が家に招待できるよう手配をお願いできる?」


「彼らは……?」


「私を守ってくださった方々よ。そこで眠っている男たちを拘束してくださったのも、船員ではなく彼らなの。」


「なるほど……それはありがとうございました。心よりお礼申し上げます。」


 そう胸に手を当て感謝を告げる姿は、男の目から見ても格好いい。

 騎士の彼らも上品な振る舞いが身についているということは、リオナは想像以上に身分の高い娘なのかもしれない。



「お嬢様、私は屋敷に伝言を送ってまいります。くれぐれも、お一人で行動することのないように。」


「わ、わかってるわよ。」



 釘を刺されて、リオナがバツの悪そうな顔をしている。

 中年騎士とは付き合いが長いのか、彼と話すときは少し子どもっぽい表情をしていた。







 リオナたちを別れ、客室に戻る。

 今回の騒動で食堂は一時閉鎖されることになったため、食事もしばらくお預けだ。

 お腹が減ったな、とぼんやり考えていると、ノアが隣に腰かけた。


「じゃあ、反省会だね。」


 何の、というと、おそらく先程の対人戦だろう。

 スマートとは程遠い戦闘だったと自覚している分、笑顔のノアが余計に恐ろしく感じられた。


 案の定、ノアからは厳しい言葉の嵐だった。

 やれ「判断が遅い」「焦りすぎ」「特訓の成果が一切活かされていない」だの、ぐうの音もでない正論だ。

 しかし最後には「初めてだった分を加味して、おまけで合格。」と褒めてくれた。

 また「人を傷つけたくないと思うのは恥ずべき点ではなく、君の美点だよ。」と言ってくれたのもうれしかった。



「詩織ちゃんも、よく彼女を庇ってあげられたね。でも抱き着くだけでは相手の攻撃から守り切ることは難しいから、今度からは防御壁を張った方が安全だと思うよ。」


「うん、わかった!」


 妻にはずいぶん優しい評価だ。

 その差を少しだけ不満に感じたが、今の妻は子どものようなものだから仕方ないだろう。



「今回の一番の優等生は、コトラだね。魔法のタイミングも、攻撃の威力も申し分なかったよ。……でも、詩織ちゃんだけじゃなくて、伊月くんも助けてあげようね。」


 ノアがコトラを抱き上げて言う。

 コトラは俺を一瞥して、すぐに顔をそらした。

 まるで小馬鹿にするような仕草にムッとする。


 そもそも、コトラがあんなに強くなってたなんて聞いてない。


「伊月くんと詩織ちゃんが頑張って特訓したように、コトラもちゃんと課題をこなしていたんだよ。」


 俺とコトラの様子に苦笑しながら、ノアが言った。

 自分の練習に精一杯だったとはいえ、コトラが鍛錬していたことには一切気が付かなかった。


「コトラはもともと野良だったんでしょ?その記憶が残っているおかげで、訓練も一番スムーズだった。多分本気でやったら、伊月くんと詩織ちゃんが力を合わせても勝てないんじゃないかな。」


「えー!コトラすごーい!」


 妻に褒められ、コトラが嬉しそうに鳴いた。


「ま、日々精進だね。」


 そう言って俺を励ますノアは、どこか面白がっているようだった。

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