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157 話

 列車での移動を終えた俺たちは、街で一泊することにした。

 宿に荷物を置き、俺と斎藤は情報屋のもとへ向かった。


 初めて訪れたときは緊張感あふれる場所だったが、2回目ともなるとずいぶん気楽だ。

 初めてのときと同じ手順で、情報屋のいる部屋へ通される。



「お、帰ったか」



 俺たちの姿を見て、情報屋がそっけなく言う。

 俺は「おかげさまで」とお礼を告げ、情報屋に魔法道具のネックレスを返却した。

 興味なさそうに受け取った情報屋は「役に立たなかっただろ?」と言ったが、国境沿いの街で子どもたちの説得に使ったと話したら、目を丸くして大笑いした。



「そんな使い方は想定してなかったな」


「いや、これがなければ説得は難しかったので助かりました」


「そうか。ま、何よりだな」



 そして情報屋は斎藤に視線を向け「怪我しなかったか?」と訊ねた。

 斎藤が「するわけがないだろう」と返すと、ふっと情報屋が笑みをこぼす。



「まぁ、お前のおかげで今回も助かった」


「なんだよ急に。気持ち悪いな。……俺は情報を売っただけだよ」



 そんな軽口をたたきながらも、斎藤と話す情報屋はどこか嬉しそうに見えた。







 宿に戻ってみんなで食事を済ませたころには、妻は大きな欠伸をしていた。

 どうやら長旅の疲れが出たらしい。

 今回は奈央もいるため、部屋は3つ用意してもらった。


 俺とノア。

 妻と奈央とコトラ。

 斎藤と蓮とラウル。


 それぞれ分かれて部屋に戻ろうとしたところで、蓮が「もう少し話がしたいんだけど」と奈央を引き留める。

 奈央はにこりと笑って「もちろん」と誘いに応じた。


 ほかにも誰か同席した方がいいかと問うと、蓮は首を横に振った。

 二人でゆっくり話がしたいらしい。

 斎藤は「遅くならないように」と忠告して、蓮の頭を撫でた。

 そしてラウルを連れて部屋に戻る。

 ラウルはもの言いたげな表情で蓮を見ていたが、結局何も言わずに斎藤の後を追っていった。



「奈央さん、詩織はこっちの部屋で寝かせようか?」


「あ、そっか。鍵があるもんね。……伊月くんたちはまだ寝ないでしょ?」


「ああ。まだ起きてると思うけど」


「じゃあ、私たちの部屋に詩織ちゃん寝かせて、伊月くんたちもいっしょにいたらどう?そっちの部屋で寝かせちゃうと、ベッドが足りなくなっちゃうし」


「わかった。じゃあ、そうさせてもらおうかな」



 奈央はひらひらと手を振って、蓮とともにテラスへ出て行った。

 テラスにはベンチが用意されていて、ゆっくり話をするのにぴったりだろう。


 妻は部屋に戻ると、そのまますぐに眠ってしまった。

 俺はその隣に腰かけ、本でも読もうかとカバンに手を伸ばす。

 するとノアが「ちょっといいかな?」と話しかけてきた。



「どうした?」


「僕も伊月くんと話がしたくなってね。……付き合ってくれるかい?」


「いいけど……」



 俺の返事に、ノアは頷いてカバンの中から小瓶とグラスを取り出した。

 そしてグラスを俺に渡し、小瓶の中身を注いでくれる。



「これは?」


「この世界のお酒だよ。ちょっと度数が強めだから、ゆっくり飲んでね」



 グラスの中の液体はほんのりとした桃色をしている。

 甘い酒なのかと口に含んだら、見た目に反してキレのあるすっきりとした味わいだった。

 思わず「うまっ」と漏らすと、ノアが「伊月くん好みの味でしょ?」と得意げに笑った。

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