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127 ルート

「歩きながら、ルートの確認をしておこうか」


 

 ノアがそう言って、右のほうを指さした。



「あっちがロナリア帝国。そして反対側がオートラック王国だね。ユミュリエール教国に行くには、どちらのかの国を跨ぐ必要があるんだ」


「……ロナリア帝国……」



 蓮とラウルは、かつて召喚された国の名前に顔を青くしている。



「大丈夫。今回はオートラック王国を通っていくから、ロナリア帝国には入らないよ。正晴くんは国を出て20年以上経ってるけど、2人はまだ追われて間もないからね。警備隊なんかに手配が回っていたら危ないし。ただ問題は、国境だね」


「国境か」


「そう。ロナリア帝国、オートラック王国、ユミュリエール教国は今、三つ巴状態なんだ。だから国境間の警備は厳しくなってる。主要な街道には兵士が常駐しているし、まず通れないだろうね」


「じゃあ、警備の薄いところを狙うのか?」


「うん。でも、巡回の警備がいる。巡回の隙を突かないと国境は越えられない」


「それなら探索魔法で……」


「いや、魔法はだめです」



 きっぱりと言い切ったのは、斎藤だった。

 理由を訊ねると「魔法は探知されるから」だという。



「この世界では、魔法の発動を探知する魔法道具が普及しています。世界のおよそ半数くらいの人が魔法を使える世界ですから、犯罪防止などを目的に開発されたそうです」


「なるほど……じゃあ、周囲を警戒しながら何とか……」


「それもリスクが高いでしょう。整備されていない国境沿いの道は、草木が生い茂り、視界の悪い場所が多い。巡回が接近しても気づかない可能性もあります」



 しかし、それでもリスクを承知で挑むしかないだろう。

 少しでも見晴らしの良い場所を探し、あとは運に身を任せるしかない。


 いざとなったら、俺が先陣を切って戦おう。

 そんな覚悟を人知れず決めるが……。



「なので、情報を買いに行きましょう」



 そういう斎藤の言葉に、俺は出鼻をくじかれた。



「じょ、情報を……?」



 戸惑いつつ問いかけると、斎藤は頷いて話を続ける。



「ええ。知り合いに独自の情報網を持つ情報屋がいます。やつなら、国境の巡回ルートも把握できるでしょう」


「そんな人が……」


「情報料はそれなりに吹っ掛けられるでしょうが、先日倉庫にためていた素材をまとめて売り払ったので、資金としては十分でしょう。やつには、魔王討伐時から世話になっているので」


「今でもお付き合いが?」


「ええ、時々」



 そして斎藤は小声で「ロナリア帝国から逃げ出した転移者の消息とか」と呟いた。

 俺は驚いて目を見開く。

 それはつまり、蓮とラウルに関する情報だろう。



「やつも何の情報も得ていませんでした。ということはつまり、帝国側には行方は突き止められてないということです。帝国の情報網がやつのそれに勝るとは思えないので」


「……なるほど」



 斎藤がそこまで言い切るということは、相当腕のいい情報屋なのだろう。

 俺は感心しつつ、話の続きに耳を傾けた。



「やつはこれから向かう街の小さなバーにいます。正確には、バーの奥の隠し部屋に。やつに会うためには、バーで特定の酒を頼む必要があります」


「なんだかそれって……」


「スパイ映画みたいでしょう?」


「ええ。ちょっとテンション上がりますね」


「私もそうでした」



 そういった斎藤は、どこか嬉しそうだった。

 もしかしたら、好みが合うのかもしれない。

 今度、元の世界の好きな映画や漫画なんかの話をしてみようか、などと俺は呑気に考えていた。

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