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第84話 教育係

「名前はパルフェ・ド・リスペット、近衛騎士団所属で、近衛騎士団いちの美少女なの。それでねそれでね、将来の夢はね、カワイイ女の子だけの美少女近衛騎士団を結成して、そこの美少女近衛騎士団長になることなんだよね!」


 パルフェと名乗ったその女の子は、こちらの反応を見る間もなく一気に言い切った。


「え~~っと」


 そこで改めてその女の子、パルフェを見てみる。


 肩くらいの長さでふわふわとしたウェーブのかかったピンク色の髪の、くりくりとした大きな目が特徴の女の子。リリアーヌやエステルさんもきれいな女の子だけど、かわいい、という点では今まで会った中でもトップクラスにかわいらしい女の子だった。

 そして近衛騎士を名乗るだけあって、近衛騎士が身につける白銀の鎧と赤いマントを身につけている。でも鎧は主に術士タイプの近衛が身につける胸当てと手甲・脛当てだけの簡易鎧だから、剣より術メインで戦うタイプの近衛なのかもしれない。現に腰にレイピアを差しているけど、左側には短杖も刺しているからたぶんそうなんだろう。


 それよりなにより、目を引くのはその白い簡易鎧だ。本来の鎧とちがってフリルやリボンが付けられて可愛らしい雰囲気に改造されていて、さらにチェーンなどのアクセサリーも随所に取り付けられていた。ズボンではなくピンクのミニスカートをはいている事もあって、近衛騎士というよりは劇団の踊り子のようにも見える。


 パルフェが目を輝かせて、ずいと身を乗り出してきた。


「で、で、その子がジゼルちゃん? うわっ、けっこうかわいい子じゃん! なんか野暮ったい地味な子だけど、磨けば光るとパルフェは見たね! パルフェが作る予定の美少女近衛騎士団にも入る資格あるね、これは!」

「うざ……。お姉さま、わたしこの人苦手……」


 でも、その勢いに押されてジゼルちゃんはボクの後ろに隠れてしまう。

 確かに、ジゼルちゃんはこういうぐいぐい来るタイプは苦手かもしれない……。


「え~~、なんでよなんでよ! パルフェはかわいい女の子はみんな大好きだよ? だからかわいい女の子はみんなパルフェを好きになるべきなんだよ?!」

「うざ……その自分大好きなところがムリ。キモイ」

「え~~、それってヒドくない? あ、でもでもそれって毒舌系ってやつ? イヤイヤ言うけど本心では大好きってやつね! それもアリだよね!」

「……なにその自分に都合のいい解釈。話聞いてた? バカ?」

「ありあり、これもアリ! かわいい女の子に言われるのなら、それもアリだよね!」


 パルフェがジゼルちゃんを覗き込もうとずいと身を乗り出し、ジゼルちゃんがさっと逃げる。それを繰り返し、ふたりはボクの周りで追いかけっこをする様にぐるぐる回り始めた。


 思わず、はぁとため息をはき肩を落とすけど


「あはははははははははは! 面白いね、この組み合わせ!」


 爆笑している王弟殿下の声で再び顔を上げた。


「王弟殿下……ジゼルちゃんの教育係にはもっと相性のいい相手にして欲しいと申し上げたはずですが?」

「いやぁ、ごめんごめん。ちゃんと覚えてはいたよ? でも適任がいなくてね?」


 じとり、と軽くにらむけど王弟殿下は、あはは、と特に悪びれることもない。


 執務机に座った王弟殿下に視線をやる。


 王弟殿下は現在41歳。いつもずり落ち気味の眼鏡をかけていて、ぼさぼさの髪を直そうともしないような方だ。ひょろりとした体型で鍛錬をしたことのある人の体幹ではない、いつも部屋に籠もりがちの人の体つきだと思う。聞いた話でも、今みたいな非常時以外は基本的には自分の部屋に籠もりっぱなしで、優秀だけど権力や名声に興味のない方らしい。


「本当だよ? いま騎士団は魔族や魔物の相手で手一杯だから、動かせるのは近衛騎士しかいない。しかもその中で女性となると一握り……しかもジゼルに礼儀作法を教えることが出来るくらい所作が美しいのは彼女しかいないんだ」


 王弟殿下が苦笑しながらそう言うと、パルフェはパッとボクの前に回り込むと、右拳を左胸に当て敬礼の姿勢をとる。

 その背筋はぴんと伸ばされ、パルフェのスタイルの良さもあってお手本のような綺麗な敬礼だった。王弟殿下が所作が美しいと言ったのも分かる。


「パルフェがシルリアーヌ姫様の役に立ちたいと立候補したの! かわいくてかっこいい、パルフェの理想のお姫様にお仕えしたいと思ったのね!」


 言ってることはちょっと変だったけど。


「うん、まぁそういう事でね? パルフェがシルリアーヌの筆頭近衛騎士となる。他にシルリアーヌ付きの近衛はいないから、肩書きだけの筆頭だけどね? あ、パルフェの力量に心配はいらないよ。前は王太子殿下付きの近衛だったからね、力量に不足はないと思うよ?」

「王太子殿下もちょっとかわいい感じの方で不満はなかったんだけど、シルリアーヌ姫様を初めて見たときびびっと来たのよね!」


 王弟殿下の言葉にパルフェが続けた。

 うーん、自国の王太子殿下に対してその言い様はちょっとどうなんだろう?


「……お姉さま、わたしこの人と上手くやっていける気がしないの」


 ジゼルちゃんも、すっかりボクの後ろに隠れてしまった。


「う~~ん、最初は戸惑うかもしれないけど、そのうち慣れるんじゃないかなあ?」


 フォローを入れてみるけど、あんまり自信ない。

 でも悪い人だとは思えないから、時間がたてばお互いのことを理解し合えると思うんだけどね。


「まぁ大丈夫でしょ」


 王弟殿下は軽い感じでそんなことを言う。


「パルフェの肩書きはシルリアーヌ付き筆頭近衛騎士、兼ジゼルの教育係だ。そしてジゼルはシルリアーヌの護衛見習いという事になるね。護衛が務まると判断できれば正式に護衛に登用、場合によってはパルフェの部下の近衛騎士に取り立ててもいい」

「……うえっ、あの女の部下? ヤダ」

「あはは、パルフェはジゼルちゃんも美少女近衛騎士団に入ってもらうつもりだからね! でも、それには礼儀作法を覚えてもらわなくっちゃダメ! 礼儀作法は、かわいい女の子がもっとかわいくなる為の女の子の武器なのね!」


 イヤそうな顔をしたジゼルちゃんに、パルフェがびしいっと指を指して言った。


 たしかにジゼルちゃんは、王族の側に仕えることが出来るだけの礼儀作法は身についていない。この先もずっとボクの側にいてもらうためには、作法を身につけることは必須といっていいと思う。


「がんばってね」


 だから、そんな気持ちを込めてジゼルちゃんの頭をなでてあげた。

お読みいただいて、ありがとうございます。 


 少しでも面白い、と思って頂けましたらブックマークや、下の☆を入れて頂ければ嬉しいです。


 つまんねぇな、と思われた方も、ご批判や1つでもいいので☆を入れて頂ければ、今後の参考にさせて頂きます。


 なんの反応も無いのが一番かなしいので……。



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