4話.根拠
~前回の簡潔なあらすじ~
清さん「魔法使えんじゃないの?」
十夜「!?」
「お前、魔法使えないか?」
「────。」
(何故知っている?人前で魔法は使わないのに...)
「嘘はつかないでくれ」
「.....っ」
清さんはテーブルに肘をついて両手を組んでいる。
さっきまではしゃいでいたのが嘘のように、眼光が鋭い。
(え、尋問されてんの?私...)
嘘をつく気はないが、ハッタリだったらと思うと十夜は正直に言いづらい。
(...とりあえず、あれだ)
「どうして、そのように考えたのでしょうか?」
(まずは根拠を聞かないと)
「え、どうしてって...」
清さんが少し動揺を見せる。
それを見て十夜は詰め寄るように言葉を発する
「私が魔法を使える、と思った根拠を、お話いただけますか」
...少し言い過ぎだったかもしれない、と十夜は思う。
主人の話を遮るなんて失礼であるから。
「...その、すまない。本当にお前が魔法を使えないなら、変なことを言っていると思うかもしれないが...」
凄い低い姿勢からものを言う清さん。貴族らしさが全然ない。
なんだか申し訳ないなと十夜が思っていると、
「..."気配"がしたんだ。魔法を使ったような」
と清さんは言った。
「.....!」
本物だ。この人は魔法をよく知っている。
そして恐らく...能力者。
魔法についてはまだ公にされていないことが多くある。
特に相手が能力者かどうか見分けるところで、自身が能力者であるという人にだけ分かる"気配"などのことは、権力者でさえ身近に能力者がいなければ知る由もないのである。
今はもう、能力者以外にはほとんど知られていない。
つまり、能力者以外は"気配"のこと知らないのである。
となると、清さんは能力者。
「...清さんがそう感じたのですか?」
「あ、ああ...そんなに強くなかったけど」
十夜は はぁーーっとため息をつく。
一体どこで使ったんだろうか。
家出てからここに来るまでには使ってないし...。文子さんに説明されている時も...。
.....あ。
(洗い物始めた時、使ったかも...。水の勢いが弱すぎて、強めるために使ったっけ)
その後すぐ、清さんが来たんだったな、確か。
(くそ、やらかした。まさかバレるとは)
嘘をつくことは得意だが、貴族相手に嘘なんて、バレたら人生終了だろう。
十夜は心の中で舌打ちをした。
ここで答えぬ訳にはいかないだろう。
「...はい。使えます、魔法」
十夜は正直に白状した。
すると清さんは少し驚いた様子で言った。
「やっぱり、お前だったか。あの時の」
「...はい」
まあ、驚いてはいただろうが、元々確証はあったのだろう。
そうでなければ普通、こんなこと聞かない。
持たぬものに聞くのは自分のことを危険に晒す行為であるし、失礼になる。
ま、平民に貴族が聞くのは失礼には当たらないのだろうが。
「あの、このことはどうか...誰にも言わないでいただきたいのですが」
「分かった、約束する。しかし何故だ?魔法があれば貴族になれるだろう?」
「平民は平民として暮らしたいのです。今更貴族になることなど望んでおりません」
貴族って月一くらいでダンスパーティーとかなんか色々交流会みたいなのをやるらしい。そんな面倒なことを月一で行うなんて面倒だ。
「そうなのか...分かった。ところで、なんの魔法が使えるんだ?」
急にワクワク顔の清さん。
「なんの魔法、と言われましても」
「?水系とか雷とかあるだろう?」
(1000年近く生きているから、実は何種類か持っているんだよな)
本来魔法は1つ、稀に2つ以上持つ子がいて奇跡の子と呼ばれている。
5つ以上は...まだこの国では確認されていない。
「一応それも持ってはいます」
「え、複数持ちなのか?奇跡の子じゃないか。それを隠しているだなんて、驚いたなぁ」
清さんは顎に手を当てて感心している。
(...それよりも)
「清さんは何を持っていらっしゃるのでしょう?」
「!...気づいていたのか、俺が持っていること」
(気配感じる時点で能力者確定だわ)
この人、無知なのか...?と十夜は思いながら軽く説明する。
「はい。気配を感じるのは魔法を持つものくらいですので」
「あ、そうなんだっけ。忘れていた」
(うっかりしてんなこいつ)
忘れることあるか?
私が悪い人なら利用しているぞ、と十夜は思った。
「俺はな、本当にしょぼいと思うかもしれんが...速移動なんだ。」
(...へぇ、珍しいのを引き当てたもんだ)
レア、と言ったところだろうか。属性のあるものと比べて見劣りするが、とりあえず珍しい。
「そうなのですね」
「一応、これでも褒められたんだからな?能力者はこの家で俺一人だけだし...。あ、でも先祖にはいたんだったかな」
別にしょぼいとも言っていないのに急に語り出す清さん。
「いえ、珍しいものだと思いまして。なかなかその魔法持ちは見ませんし」
少しフォローすると、清さんは瞳を輝かせる。
「これ、珍しいのか?確かに他で見た事ないが...」
「はい。私も1度だけですね」
あるんかい。という表情で十夜を見てくる清さん。
(嘘はいけないから、仕方ない)
珍しいのは本当だし。
「んで、お前は?まず一体いくつ持っているんだ?」
少し不満そうな顔で聞いてくる清さん。
(まるで子供みたいだな。...それにしても、いくつ、かぁ)
不老不死であると言ったが、実際は100年単位で自分が更新されているような感じだ。更新から100年目の朝、毎回枕元にメモが置いてある。
『新しい魔法は○○だ。』
という内容で。
100年毎にそれがある。
つまり...
生まれた時に授かった1個+(999歳なので)100年毎にもらった合計9個
...合わせて10個
(よくよく考えてみるとバケモンじゃん。)
まぁ、それでも中にはいらないようなものもある。
『あんこが食べたくなる魔法』には流石に十夜もため息をついた。圧倒的にいらない。使い所もない。
「...どうした?固まっているけど」
「!...あぁ、すみません。考え事をしておりました」
(色々考えていたら固まっていたみたいだ)
「ふぅん、まーいいや。それで、いくつ持っているんだ?」
「あ...」
(あぁ待て、どうしよう。いくら貴族相手でもこの数は正直に言っては駄目な気がする。でも嘘をつくことになってもいいのか?バレたら牢獄だぞ?多分)
ぐるぐるぐるぐる考えて全然まとまらなかったが、とりあえず答えなければ...と、十夜は喋りだした。
「あ、はいえっと、私は...」
するとその時、
ガチャッッ。
突然部屋の扉が開いた。
「「!?」」
清さんと十夜は驚いて、同時に扉の方を見るのだった。
説明してる文章どう足掻いても分かりにくいので無視して大丈夫です。多分そんなに影響ありません。