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死なないメイドさん  作者: 夜桜 春希
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0話.平民な十夜

不老不死、というものは別に嫌なものでは無い。


確かに周りの皆が先に衰え、亡くなってしまうことは寂しいが、決して悪いものでは無い。


私が保証しよう。今年で999歳になるんだ。

十夜(とよ)が林野家で働き始めたのは、つい二ヶ月前のことだった。


その日十夜は買い物に出ていた。

貴族は洋服を着て馬車に乗り、平民は和服を着て街を歩いて行く。

十夜はもちろん和服だ。


十夜が買うものは、芋と米の質素なもののみ。

金はあるにはあるが、贅沢はしないタイプだった。


目当てのものは買ったので、来た道を帰る。

...と、思ったが。

近くに魚屋が見えた。


(...やっぱり今日くらいはいいかな?)

長らく食べていない魚が食べたくなった。


十夜はしばらく考えたあと、

(うーむ、よし!やはり魚屋に寄って...)


魚屋の方へ歩き出した。


...と、その時。

「...ん?」

ある道から叫び声のようなものが聞こえた。若い女性の声のような。


(...なんだろう)

何となく気になって、魚屋の方から向きを変え、声のする方へ向かった。





(...あれまあ。)

見ると、大きな木の下に人だかりが出来ていた。

皆が皆、上を見上げて心配そうにしている。

十夜もつられて上を見ると、20メートル以上ある木の上に子供がいた。

登ったはいいものの、降りられなくなっているようだ。


(そもそもどうやって登ったんだか。考えもせず登るだなんて、浅はかだな)

十夜はそう思ったが、口には出さずにいた。


なぜなら、その子どもが着ている洋服は明らか高級で、貴族の子というのが目に見えていたからだ。


そんなバカにするようなことを言えば、十夜の首は一瞬で吹き飛ぶだろう。

何百年生きていようが、平民は平民だ。


「誰かっ...!誰か助けてください、あの子を...っ!」


木の真下に、子どもの母親であろう、いかにも貴族といったような洋服を着ている若い女性がいた。

目に涙をうかべ、必死に周りの人に懇願している。


しかし周りの大人は皆心配そうに見上げるだけ。

(当たり前か。)

いくら大の大人でも20メートルの木に登ることなど不可能だろう。

ガタイのいい人なら尚更だ。


自分が木を揺らしてしまえば子どもは落ちてしまうから、まして貴族の子だ。

それに自分が落ちてしまうかもしれない。


(...でもまあ、子どもの体力がなぁ)

今子どもは必死に木の枝から落ちないようつかまっている。

が、そろそろ降ろさないと、何もしなくても落ちてしまうだろう。


(面倒くさい)

十夜は目立つのが嫌いだ。ここで子を助ければ、きっと目立ってしまう。

しかし、誰も助ける気配がない。

ここはもう行くしかないだろう。


(...この高さなら、()()はいらない...)

高く、高く飛べばいい。


「すみません」

人をかき分け、木の斜め下に入る。

真下よりは飛びやすい。


「あなた...」

「すみません、少し離れていてください」

あの少年の母親らしき婦人が話しかけてくるが、今はそんな場合ではない。

婦人は言われるがままに少し後ろに下がる。


(後で罰があるかもしれないな)

貴族の言葉を遮るなんて。

助けたら罰を割引してくれないかな。


...まぁいい。



スっと(ひざまづ)く。

そして次の瞬間、

(よーい...しょっと)

膝を伸ばし、勢いよく飛び上がる。


高く高く飛び上がる十夜を、下で婦人が目を丸くして見る。

周りの皆も驚いた顔をしている。


子供のいる木の枝へ飛び乗り、泣きべそをかいた少年に手を差し出す。


「大丈夫、怪しいものではありません。」

少年は十夜の手と顔をじっと見たあと、自分の手を十夜の手の上に乗せた。

その瞬間、十夜は少年をぐいっと引き寄せ、抱きしめた。

そして綺麗に抱っこすると、十夜は木から飛び降りた。

...そして、音もなく着地した。


その瞬間、わぁっと歓声が沸く。

少年はびっくりしたような顔で、しばらく固まっていた。

「士郎!」

すると少年の母親が駆け寄ってきた。

士郎と呼ばれたその少年は母親に気づくと、駆け寄って抱きついた。


十夜も謝らねば、と母親の方を見る。


「あの...」

「あなた!」

謝罪をしようとしたら勢いよく遮られてしまった。


「は、はい」

少し気後れしながらも返事をした。


婦人は深々と頭を下げて、

「ありがとうございました。お礼がしたいので、よろしければ家まで来ていただけますか?」

と言った。


昔の時代もの書いたことないので色々おかしいと思います。昔っぽいですが時代について明確な決め事はありません。

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