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妖精と王子様のへんてこワルツ  作者: 魚野れん
迎えにきた王子様

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3

 ロスヴィータがカルケレニクス領の領主屋敷で返事をしたいという申し入れに対し、彼らは緊急時にしか使わないらしい特殊な鳥を使って快諾の返事と共にエルフリートが愛読していた絵本に描かれている王子の衣装が分かる絵を送ってきてくれた。

 何も言っていなかったのにそれを寄越してきた彼の両親は、相当な理解者であるのだろう。ロスヴィータはこの手紙を見て、義理の両親と仲良くやっていけそうだと確信した。


 ロスヴィータが王子の絵を自分の両親に見せると、こちらも何をしたいのか察したらしく、すぐにデザイナーを呼んでくれた。自分をこの絵そのものにしてほしいと依頼すれば、散々王子様風の衣装を手がけてきた彼女らは大喜びしてくれた。

 エルフリートが帰宅するまでにカルケレニクスへと到着しなければならないロスヴィータは厳しい納期をデザイナーに課したが、彼女らはウエディングドレスとスーツのデザイン両方をさせてくれれば十分だとはりきってくれた為、何とか間に合った。

 エルフリートと夜に別れの挨拶を済ませたロスヴィータはその足で衣装を持ち、最低限の荷物で駿馬に乗ったのだった。国王への事前の根回しは両親がしてくれ、そのおかげで長期休暇をもぎとる事ができた。

 ……立ち会いたいと熱望していたレオンハルトの方は、ロスヴィータの穴埋め要因として残留させられてしまったが。


 この一ヶ月弱、駆け抜けるような忙しさだった。エルフリートの実家に到着した日はぼろぼろのくたくたで、申し訳ないながらにゆっくりと丸一日休ませてもらったくらいである。

 駿馬を町で乗り換えて走らせた甲斐あって、数日の余裕ができたのは幸運だった。カルケレニクス領の森には見張りがいてエルフリートが現れたらすぐに連絡を寄越すようになっていたおかげで、慌てて身支度を整える事もなく、本当に周囲の協力がありがたかった。

 後で協力者全員に頭を下げて回らなければならないだろう。


「ロスお姉さま、フェーデを王都へ連れ戻すの?」

「実はまだ考えていなくて。これから相談できればと思っていたんです」

 滞在できるのはあと数日だが、その間に話をまとめる事はできるだろう。ロスヴィータはエルフリートが近くにいてくれたら嬉しいとは思えど、これ以上迷惑をかけるのは嫌だった。

 エルフリート本人の気持ちとカルケレニクス領の方針を優先させたい。ロスヴィータがそんな事を考えながらエルフリートの頬を撫でていると、彼の瞼が揺れるのが見えた。


「やあ、私の妖精さん」

「ロス。……ごめん、嬉しすぎてまた気を取ばしちゃった」

 苦笑しつつエルフリートが上半身を起こす。そして愛しそうに薬指にはまった指輪に口づける。

「本当にありがとう」

 瞼を伏せ、まつげの陰が頬に落ちる。中性的なその姿は、未だに残る幻影の花々が背景となっていて幻想的だ。砂埃を被った普通の旅装束に身を包んでいるはずなのに、不思議と泥臭さを感じさせない。

「お返し、ではないのだけど」

 荷物を探り始めた彼が取り出したのは、小箱。既視感を覚えていると、やはりその中身は指輪――ではなく、片耳用の耳飾りであった。


「意志疎通もできるように、魔法具のグレードを上げたんだ。

 今度は何があっても離れないよ」

「……反対側の耳にしてくれ。グレードが低かろうが、私の宝物には違いない」

 以前にプレゼントされた魔法具をしていない左側の耳を見せる。現在穴を塞いでいるピアスをはずして新しい物をつけてもらった。宝石がより良質なものへ、そして頑丈な作りへと変わったせいかずっしりと重く感じられる。

 先ほどまでつけていたのが軽いものだったというのも大きいだろうが、それ以上に想いの詰まった贈り物だ。この重さを忘れないようにしたい。


「うん、似合ってる」

「……ありがとう」

「――そろそろ、部屋へ戻って着替えたらどうだい」

 頭上からの声かけに我に返る。まだここは玄関ホールだった。エルフリートとロスヴィータは顔を見合わせた。

 彼が着替えている間に最後のサプライズの用意が始まった。既に部屋に入った時点で驚いているだろうが、もっと驚かせるつもりである。

 着替えが済んだエルフリートは、柔らかなドレスに身を包んでいた。以前舞踏会に参加した時に使用したドレスを加工してもらったものである。

 さすがにドレスは新調するに時間が足りなかったのだが、アレンジされたそのドレスはどこからどうみても妖精らしさが出ている。


「……これも、サプライズ?」


 そう首を傾げる彼は、どこからどう見ても妖精である。化粧を施した顔は真珠の粉でキラキラと輝いているし、銀糸で追加の刺繍を施したドレスは角度で色味が変わるように調整され、ふわりふわりとフリルが舞うごとに表情が違って見える。

「そうだよ。さあ、こちらへ」

 ロスヴィータはエルフリートをエスコートしてダンスホールの中央へと向かい、振り返った。

「妖精さん。私と一生踊ってくださいますか?」

 ロスヴィータの意図を理解したエルフリートは満面の笑みを浮かべて答えるのだった。

2021.10.30 誤字修正

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