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妖精と王子様のへんてこワルツ  作者: 魚野れん
魔物制圧には王子と妖精が一番

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2

「ははは、レオンは生真面目だなっ」

「まあ、ロスってばそんな事を言ってはだめよぉー!」

 笑いながらレオンハルトから逃げるようにマロリーの方に行くと、呆れたような顔のマロリーとおもしろいものを見たといった風に笑っているバルティルデがいた。

「緊張感がないなぁ」

「すまない。でも、フリーデが可愛いのが悪いんだ」

「すっかり王子様は妖精さんの虜だね」

 バルティルデはそう言って笑った。


「……ちょっと黙って!」

 マロリーの声に緊張感があった。

「何か見つけたの?」

 思わず、身を乗り出すようにして前に出る。そして魔力を広げて索敵した。普通の獣に比べて魔獣の索敵は比較的簡単。魔獣が持つ魔力を感知すれば良いんだ。自分の魔力を隠せるような知能の高い魔獣は別として、普通の魔獣であればこの索敵で十分見つけられる。

 今回追っている魔獣も例に漏れず、その索敵に反応した。おお、数が多い。他の小隊は大丈夫かな……。


「いっぱいいるね」

「その通り。油断していると痛い目見るわよ」


 全部生け捕りは、厳しいかな。エルフリートの獲物は基本的に一匹だ。一体多数という状況は、狼に追われる時くらい。多数対多数は演習でしか経験がないからちょっと不安だけど、やるからには失敗は許されないよね。

 と言って全部生け捕りが難しいとしても、ただ殺すだけなのはなぁ。あれ、魔獣って食べれたんだっけ……? なんてちょっとズレた事を考えていると、ロスヴィータが口を開いた。


「他の騎士もいるが、我々の動き方はこうだ。

 バティと私が切り込み、フリーデは臨機応変にカバー。マリンは援護や補助魔法のサポートに徹してくれ」

「分かった」

「任せて」


 作戦開始はすぐだった。近づかなくても魔獣の方から来てくれたんだ。ある程度近づけば、獲物だと勘違いして勝手に襲いかかってくれる。いつもの狩りとは全然違う。

「バティ、まずは一体!」

 狼とイノシシを組み合わせたような体躯の魔獣が飛び出してきた。えっと、これはなんだっけ。まあいっか。

 バルティルデが騎士団が使っているのと同じ長剣で魔獣へ切りかかった。大剣を使っていた彼女が長剣を使うとおもちゃみたいに感じてしまう。軽やかで鋭い剣裁きは魔獣の動きをものともせずに、まっすぐその足の付け根付近へと吸い込まれていった。


「ギャウッ」

 けたたましい悲鳴を上げながら一体が崩れ落ちる。バルティルデがロスヴィータが相手している一体へ移動するタイミングで彼女が無力化した魔獣に睡眠の魔法をかける。

 魔獣は傷の治りが早いから、うかうかしてると復活しちゃうんだ。でも、眠らせておけば安心。他の騎士達も、何とか順調に倒している。精神魔法が使える騎士がエルフリートと同じように魔中を眠らせているのが見えた。

 数は多いけど、今のところは大丈夫そう。振り返ればロスヴィータが魔獣の足の腱を切ったみたいで、巨体がずどんと転がった。魔獣が暴れるせいで、森林がちょっとした開けた場所になりつつある。剣を振り回しやすくなったから、こちらもやりやすい。


 ちらほらと別の魔獣も見える。あれは少しやっかいそう。ロスヴィータもそれに気がついたみたい。睡眠の魔法をかけながら向こうへ移動し始める彼女たちを追う。

「まずい。羽つきがいる」

「縄を持っている奴はこっちを頼む!」

 アントニオが叫んだ。羽つき、と呼ばれるのは鳥みたいに飛べる魔獣の事。魔法以外に攻撃するとしたら弓矢とかになってしまうから、倒すのが面倒なんだ。だから、縄を投擲して地面へと墜落させてしまうのが普通の方法。


「羽つきは想定外だ! こちらは討伐する!!」


 騎士の足並みが乱れた。縄を持っている騎士がこちらに、抜けた騎士の穴埋めを調整しようとしている隙を見て野獣が暴れ出す。

「マリン、向こうの騎士の補助に回れ! 終わったら戻ってこい」

「はい!」

「フリーデ、マリンの代わりはしなくて良い。さっさと倒すからぶっぱなせ!」

「分かった!」

 羽つきは今、六体。遠距離魔法が使えないと戦いにくい魔獣ばかり。ウサギみたいな体に鷲の羽を持ったのとか、もう色々いる。その中にはエルフリートすら覚えているくらいには有名な魔獣もいた。


「やだ……クエレブレもいる」


 毒のブレスがやっかいなんだよな。頭は悪いのに、上から広範囲にブレスをされたらたまらない。それに騒ぎを聞きつけたらしい羽つきが加わった。

 この数は良くない。

「クエレブレは私がやる!」

 クエレブレへの射程範囲に向けて走り出す。クエレブレはどれに対してかは分からないけど、威嚇の声を上げている。まずいかも。エルフリートは唱えかけていた呪文をやめ、別の呪文に切り替える。

「勇敢なる熊の名を持つ女神よ、我らが小熊を守れ!」

「投擲やめっ!!!」

 エルフリートの呪文に気がついたアントニオが声を張り上げる。縄を投擲している騎士が動きを止めた。瞬間、クエレブレがブレスを吐き出した。


 クエレブレよりも下にいた羽つきがブレスの餌食になる。エルフリートが作り出した保護膜の上にぼとぼとと墜落した羽つきが乗っかった。毒の影響でそれらがぐずぐずと溶けていく。ちょっと見た目が良くない。

 結構な強度で作ったから、まだしばらくは保つと思うけど自分の上にそんなのがあったら士気に関わる。少なくとも私は嫌だ。

「保護膜解除するから、みんなどいて」

「フリーデの方へ一時撤退!」

 エルフリートの言葉に反応したロスヴィータの号令で、一斉にエルフリートの方へ集まった。その途中で乱入してきた地を駆ける魔獣はアントニオによって斬り伏せられる。


 羽つきに対峙していた仲間が集まった所で保護膜を解除した。べちゃべちゃと羽つき魔獣の雨が降る。対峙する数が減って楽にはなったけど、それでもやっかいなクエレブレが残っている。

 今はちょうど気がつけたから良かったものの、いつそれが降りかかってくるか分からない。エルフリートはとっさの判断でロスヴィータとバルティルデを筆頭に周囲の騎士へ保護魔法をかけるのだった。

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